*All archives*



The 10 Greatest Pianists of All Time ~ 現役ピアニストが選んだ「10人の偉大なピアニスト」
「ウェブラジオでクラシック音楽ライブ」(今は更新停止してますが)の管理人okakaさんのTwitterで紹介されていた面白い記事が、"The 10 Greatest Pianists of All Time"(Limelight Magazine, Jul 5,2012)。

原文の英文記事のサブタイトルは、"The most influential legendary pianists, as voted by modern day masters of the instrument."(現役ピアニストの投票によって選ばれた、最も影響力のある伝説的なピアニストたち)

この投票は、Limelight magazineが実施。
若手からベテランまで、100人以上の現役コンサートピアニストに対して、最も"inspire"されたピアニストは誰かと質問したもの。
回答者には、ベテランでは、Grigory Sokolov, András Schiff, Alfred Brendel,Stephen Hough, Pascal Rogé, Leslie Howard など、著名なピアニストが名を連ねている。
中堅というか、かなりキャリアのあるピアニストでは、Olli Mustonen, Konstantin Scherbakov など。
若手はPaul Lewis, Piotr Anderszewski, David Fray をはじめ、なぜかAlice Sara Ottまで入っている。

現役ピアニストたちが名前をあげたピアニストのうち上位10人について、簡潔なプロフィールとピアニズムの特徴、現役ピアニストによる紹介文、代表的音源(Yooutube)がオンライン記事に掲載されている。

回答結果とそのピアニストを選んだ現役ピアニストは以下の通り。

1. Sergei Rachmaninov
Leslie Howard, Stephen Kovacevich, Denis Matsuev, Alexey Yemtsov...

2. Vladimir Horowitz
Ingold Wunder, Freddy Kempf, Gerard Willems, Konstantin Scherbakov...

3. Sviatoslav Richter
Barry Douglas, Howard Shelley, Anna Goldsworthy, Piotr Anderszewski...

4. Arthur Rubinstein
Roger Woodward, Simon Trpceski, Jayson Gillham, Margaret Fingerhut...

5. Emil Gilels
Cédric Tiberghien, Alice Sara Ott, Olli Mustonen, Lars Vogt...

6. Alfred Cortot
Stephen Hough, Alfred Brendel, Benjamin Grosvenor, Stanislav Ioudenitch...

7. Glenn Gould
Pascal Rogé, Vladimir Ashkenazy, Fazil Say, Jean-Efflam Bavouzet...

8. Alfred Brendel
Paul Lewis, Steven Osborne, Imogen Cooper, Till Fellner...

9. Wilhelm Kempff
Cyprien Katsaris, Michael Endres, David Fray, Eldar Nebolsin...

10. Artur Schnabel
Jonathan Biss, András Schiff, Ronald Brautigam, Garrick Ohlsson....


この現役ピアニストによる投票結果では、第1位がかなりの差("significant margin")でラフマニノフ。
投票結果の解説記事は、"Sergei Rachmaninov voted greatest pianist of all time"

よく評論家や読者が選んだピアニストベスト○○とかいうランキングが音楽雑誌に載っているけれど、たしかホロヴィッツが第1位になっていることが多かったはず。ラフマニノフの名前はあまり見かけなかった。人気投票みたいなものだし..。
この同業者であるプロのピアニストによるランキング結果とは、全然違うのが面白い。
ラフマニノフの録音は1920-40年代初めの古いものが多く、音質はあまり良くない。有名なのは自作自演のピアノ協奏曲全4曲など。
特に第2番のピアノ協奏曲は、ゆっくりしたテンポでロマンティシズムたっぷりに弾く昨今の演奏とは違うことで有名。
ラフマニノフ自身が弾くと、速いテンポで切れ味よく、情感過多にならずにさらりとした叙情感のある演奏になる。(このタイプの演奏をあげるとすれば、コチシュ、スティーブン・ハフあたり?)
ラフマニノフは、自作だけではなく、他の作曲家の演奏にも優れていたとよく言われているし、米国へ渡ってからはコンサートピアニストとして活動していた。

解説記事では、残っている録音が少ないラフマニノフが、最も"inspire"されたピアニストとして選ばれたことは(原文は"the number one piano hero")、彼の演奏のインパクトが極めて大きかったことを証明している、と書かれていた。
ラフマニノフのピアニズムの特徴は、13度も届く大きな手でどんな困難なパッセージでも明晰さを失わない人間離れした鮮やかな技巧と、ヴァイオリニストのクライスラーのように美しく歌うようなトーン。それに、技巧・感情面だけでなく、知性的にも優れた演奏だと評されている。
個人的な好みで言えば、ピアニストとしての演奏は、ホロヴィッツよりもラフマニノフの方がずっと好き。

投票結果の上位5人のピアニストのうち、4人はロシア人。
また、上位10人の中でカナダ人のグールド以外は、全てヨーロッパ(大陸)諸国のピアニスト。
投票結果に対する感想としては、リヒテル、ルービンシュタインはやっぱり納得。
現役ピアニストで選ばれたのは、最近演奏活動から引退したブレンデルのみ。(弟子のルイスやフェルナーも票を入れていたとはいえ、ポリーニやアルゲリッチが上位入らずに、ブレンデルが入っているのは、至極当然に思える)
ギレリスが上位に入っているのがどうにも不思議。(私が好きではないからそう思うだけだろうけど)
それとは逆に、ケンプの評価はそれほど高くはない。(技巧的な問題が影響しているから?)
グールドはやっぱりこの順位くらいだろうか。
コルトーとシュナーベルは、ほとんど聴いたことがないので、何とも言えず。
ベートーヴェン弾きのバックハウスやアラウ、ゼルキンも10位には入らず。(それはそうだろうという気がする)
ピアニストを1人だけ上げる単独回答か複数回答かがよくわからない(たぶん単独回答だと思う)。
4位以下は票が分散しているのかもしれないし、回答方法が違うと結果が多少(かなり?)違ってくるに違いない。
面白いのは、ロジェとアシュケナージが回答したのがグールドで、バッハ弾きのアンデルジェフスキの方はグールドではなくリヒテルだったりする。それに、ソコロフが回答したピアニストがわからないので、一体誰なのか知りたいなあ。


<参考データ>
レコード芸術/名演奏家ランキング:ピアノスト編(2012年6月号)
1.ホロヴィッツ 2.リヒテル 3.ポリーニ 4.アルゲリッチ・ルービンシュタイン(同点) 6.グールド・ミケランジェリ(同点) 8.グルダ 9.フランソワ 10.ゼルキン
11.バックハウス 12.アラウ・ギレリス(同点) 14.コルトー 15.リパッティ 16.エマール 17.ハスキル 18.ブレンデル 19.ギーゼキング・ケンプ・ラフマニノフ(同点)
評者:音楽評論家や音楽ジャーナリストなど30名

※10位台の後半以降は、数人とか1人の選者しか点数をつけていないので、順位はあまり当てにならない。
※ツィメルマン(26位)とブレンデルの順位が低いのは意外。
※ソコロフは64位(選んだのは2人のみ。点数も低い)、ハフは選外。海外でのピアニストの評価とは随分違っているような気がしないでもない。特にソコロフをほとんどの選者は選んでいないというのは不思議。正規録音が少なくいためか(それに若い頃のものが多い)、聴いたことがないのか、聴いても評価しない人が多いのか、理由は何だろう?

モーストリー・クラシック12月号「最新格付け! 世界の名ピアニスト」[産経ニュース,2011.10.24]
総合:1.ホロヴィッツ 2.ミケランジェリ 3.リヒテル 4.ルービンシュタイン 5.グールド
現役:1.アルゲリッチ 2.ポリーニ 3.ツィメルマン 4.シフ 5.内田光子

Secret
(非公開コメント受付中)

ゼルキンを入れたい
こんにちは。この企画面白いですね、
ラフマニノフを始め、グールド、コルトー、シュナーベルあたりは、レコード録音だけを聴いてなお、高い評価になっているのじゃないかと推察します。
ピアニストからみた評価の対象は、必ずしも「生演奏」ではないようですね。
そのあたり、なにか親近感が湧きました。いいのか悪いのかはちょっとわかりませんけれど^^
面白いランキングでした
ポンコツスクーター様、こんばんは。

ピアニスト自身が影響を受けたピアニスト...ということですから、雑誌の人気投票的なランキングなどとは、意味が違うでしょうね。
同業者から見てということなら、ラフマニノフ、ホロヴィッツ、リヒテルが上位に来るのはなるほどと思えます。
ゼルキンやバックハウスのようなベートーヴェン弾きは、その影響が限られているのでしょうね。
ホロヴィッツは、「あなたがホロヴィッツでないとしたら、どのようなピアニストになりたいですか?」という質問に、「ルドルフ・ゼルキン」と答えたそうです。(その真意はよくわかりませんが)

回答したピアニストの年齢にもよりますが、大半は録音で判断しているのでないでしょうか。
実演だと出来不出来もありますし、聴くことができる機会も限られていたでしょうから。
ケンプは、実演ではかなりムラがあったそうです。
そういえば、アラウは欧州と米国時代両方のシュナーベルの実演を聴いていますが、欧州時代の演奏の方がはるかに良く、米国時代はテンポが安定していなかったと言ってました。

ピアニストは、実演と録音ははっきり別物だと考えるようです。(アラウもブレンデルもそう言ってました)
編集していたとしても、完成度の高いのは録音ですから、そちらで判断する人が多いのかも。でも、そこらはよくわかりません。
弟子筋とか親交のあった人なら音楽観なども評価のポイントになっているでしょうね。
私はCDリスナーですから、録音(ライブ録音も入れて)でしかピアニストの演奏のことはわかりませんので、録音だけで判断していたとしても、特に違和感はないですね。

No title
こんにちは!

現役ピアニストが選んだ!っていうところが面白いですね。
1位がラフマニノフですか~。みなさん生で実演を聴いた!という方はきっと少ないでしょうから(ほとんどいない??)、録音や映像を見てですよね?

私はブレンデルを多分聴いたことが無いんですが(汗)、ルイスやティルナーが好き!ということは、ブレンデルの演奏が好きってことかしら?是非とも聴いてみなくてはいけませんね。
ブレンデルはとてもお勧めです
Tea316さま、こんにちは。

そうなんです、現役ピアニストが選んだ...というところが、このランキングの面白さです。同業者の評価ってシビアですからね。
ラフマニノフは1943年に亡くなっていますから、実演を聴いたことがあるとしたら80歳以上の人でしょう。
ブレンデル以外にそれほど高齢のピアニストが回答しているとは思えないので、ほぼ全員が録音で判断しているはずです。

ブレンデルは、ルイスやティル・フェルナーとは少しピアニズムが違っていますね。
音は多彩感が豊かで繊細な美しさがありますし、フレージングは流麗で、アーティキュレーションもよく練られています。
でも、ルイスのような親密感や自然な趣きは薄いかも。
フェルナーは強いクセのないウィーン風(?)の優美な演奏をする人のように思いますが、ブレンデルとはちょっと違うかなあという気がします。
ブレンデルの演奏はとても魅力的ですが、個人的には分析的で理知的(やや理屈っぽい)な印象を受けます。といっても、ブレンデルとは相性はかなり良く、好きな演奏も多いです。

ブレンデルは何度も再録音をする人なので、録音年代によって演奏のスタイルが少し違います。
若い頃のVOX時代の録音はあまりお勧めしません。
Philips(今はDECCAですが)に録音したものは、晩年の円熟した演奏の方が人気があるようです。曲にもよりますけど。
スタジオ録音以外にライブ録音もかなりリリースされていますし、Youtubeにも音源が多数あります。
なかでも一番人気のあるYoutubeの音源は、シューベルトの即興曲D.899-3だと思います。
私もこれは大好きな演奏です。この曲のベストと言っていいかも。
http://www.youtube.com/watch?v=GkX4MyDeIqI

ブレンデルのレパートリーでは、シューベルト、リスト、ベートーヴェン、ハイドンに定評があります。
お好みに合うかどうか、お好きな曲を聴いてみてくださいね。
10人の偉大なピアニスト
これは面白いランキングですね。

アンダ、エトヴィン・フィッシャー、アラウも入ってもよさそうですが、何位だったのか気になります。ブゾーニは録音自体が少ないので、さすがにブゾーニに票を入れる人はいないですよね(笑)

カツァリスがケンプに票を入れているというのがすごく意外でした。
全ての投票結果を知りたくなります
ミッチ様、こんばんは。

この投票(アンケート)は面白いですね!
評論家・ジャーナリスト・リスナー投票とは違う結果が出ているところで、プロの視点を感じます。
雑誌本体の記事を見ればもっと詳しい結果が載っているかもしれません。

たぶん1人だけ選ぶ方式ではないかと思うので、下位に行くほど票が分散して、大差はないんじゃないでしょうか。
複数回答だと(たとえば3人を順位づけして回答する方式とか)、アラウとフィッシャーは20位以内には入ってくるのではないかと思うのですが、アンダはどうでしょうね。
アンダは好きなピアニストですが、同世代や後世のピアニストに大きな影響力を与えたという印象があまりないので。

ブゾーニの録音は少ないですし、あっても音質が非常に悪そうです。
あまり聴かれていないでしょうから、ピアニストとして正当に評価するのは難しいですね。
実演を聴いたことがあるとすれば、アラウやそれ以前の世代でしょう。

カツァリスのインタビューがありますが、ここでもケンプ、シフラ、最後にホロヴィッツを尊敬するピアニストに上げています。
http://jp.yamaha.com/sp/products/musical-instruments/keyboards/pianist-lounge/now/010/question.html
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。