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伸井太一 『ニセドイツ2≒東ドイツ製生活用品』
<ニセドイツ>シリーズの第2弾は『ニセドイツ2≒東ドイツ製生活用品』。
『工業品』ならトラバント、カール・ツァイスなど名前だけでも知っていたものはいくつかあったけれど、『生活用品』の方は聞いたこともないグッズがほとんど。

 『共産趣味インターナショナル(Cominterest) ニセドイツ2≒東ドイツ製生活用品』(社会評論社ウェブサイトの書籍紹介)

ニセドイツ〈2〉≒東ドイツ製生活用品 (共産趣味インターナショナル VOL 3)ニセドイツ〈2〉≒東ドイツ製生活用品 (共産趣味インターナショナル VOL 3)
(2009/10)
伸井 太一

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■国営スーパー「ハーオー」:世紀末覇王伝説
東ドイツ時代の国営ショップは、普通のスーパー「ハーオー」(HO)、大型デパート「ツェントルム」(15の中心都市にしかない)、商店チェーン「コンズーム」。
東独経済が発展すると"富裕層"が出現したので、高級品店「エクス・クヴィジット」と高級食材店「エクス・デリカート」も登場。
1966年設立の「デリカート」には品質の良いものが並び、「ハーオー」には安いが品質の悪いものが供給されていた。

西側製品を販売する「インターショップ」。
東ドイツの親戚を訪れる西ドイツ人や外国の訪問者用のお店。東ドイツの親戚へのお土産には持ち込み制限があるので、「インターショップ」で買わないといけない。
西ドイツマルクやドルで支払うので、外貨獲得手段の一つ。
東ドイツ人も利用できるため、西ドイツの親戚から西ドイツマルクを密かに受け取って、食料品やジーンズなどを買っていた。行列せずに買えるというのは、「ハーオー」とは大違い。
ただし、西ドイツマルクが大っぴらに流通しては大変マズイので、「フォーラム・チェック」という小切手に交替する必要があった。

■パンとケーキ:パン共産主義運動
小麦粉製品の「カティ」は、1951年設立にハレ市で設立された家族企業のブランド。
1972年にハレ国営パン小麦工場に統合されたが「カティ」のマークはそのまま利用されていた。
東西ドイツ統一後も「カティ」を製造していた企業は生き残り、現在でも「カティ」製品がハレ市で売られている。
「バウムクーヘン」は東ドイツの地方都市の名産菓子。ザルツヴェーデルが本家と考えられているが、ドレスデンの人はドレスデンが本家本元だと思っている。

■チョコレート:共産主義は甘くない
カカオ不足が慢性化していた東ドイツでは、オートミール、麦芽、大豆を使った代用チョコが代表的チョコ。
ハレ市の名物は「ハローレン」というチョコレート。1804年の老舗チョコレート会社ハローレンの製品。東独時代に国営製菓コンビナートで製造され、統一後も生き残ったチョコレート。
チューリンゲン州の名物は「ロートシュテルン」(赤い星)。東独時代に創業したので共産主義的なネーミングのチョコ。2000年以降のオスタルギーブームに乗って、東独時代の板チョコやボール型チョコが復活し、「チェ・ゲバラ」チョコまで販売している。

ドイツの朝の食卓で、ジャム・バター以外の定番はチョコ風味のへーゼルナッツペースト「ヌテッラ」。
イタリア製で、ドイツでは年間1億ビンが売れる人気商品。
東ドイツでは入手困難な「ヌテッラ」の代りに、国営企業が製造したのが「ヌドッシィ」。
「ヌドッシィ」のへーゼルナッツ含有量は、「ヌテッラ」の3倍の36%。(チョコレートが不足していたせい?)
統一後、「ヌドッシィ」は製造中止となったが、1998年に製造再開。
今でも店頭に「ヌテッラ」と共に並び、「ヌテッラ」よりも「ヌドッシィ」が好きという人も根強く残っている。

■料理:ドイツ民主共和コックのクルト・ドルマー
東ドイツの人気番組の一つが、25年間も続いた長寿番組「テレビ料理人のお薦め」。
材料不足の東ドイツで、限られた食材からバラエティ豊かで(ただしブルジョワの贅沢料理はご法度)、「共産主義的」な料理を当局から期待されていたので、料理人クルト・ドルマーが紹介する料理は東欧や北欧の料理が多かった。
ドルマーが68年に出版した『テレビスタジオからの料理術』という本もロングセラー。改訂を重ねて900種類の料理レシピが載っている。

■ファーストフード:スーパー・差異ズ・ミー
■コーラ:共産党員料
1958年に発売された東ドイツ初のコーラは「ヴィタ・コーラ」。
”甘くなく、少し酸っぱく、炭酸強すぎ” という味のコーラは、西側社会のコカ・コーラとは全然違った味で、かなり不味かったらしいが、東独ではとてもよく売れた。
1967年には第2のコーラ「クルップ・コーラ」も発売。
今でもこの2つのコーラは販売されているが、東独時代に作られていたコーラとは全く別物の味になっている。

■ビール:あまりの不味さにビビール
美味しい麦やホップの原産地は西ドイツ地域に偏り、東ドイツではそれ以外の原料も不足がち。
そのため、「ビール純粋令」どおりのビールではない、”ニセ・ビール”が出回っていた。
ただし、一部の醸造所では昔ながらの純粋なビールが製造され続け、今でも人気のあるビールになっている。

■コーヒー:東ドイツ珈琲の可否
東ドイツを代表するコーヒー会社の一つが、1908年にマグデブルク市に設立されたレーストファイン社(Rostfine)。
当時から代用コーヒーを製造しており、現在では欧州中に輸出している。
代用コーヒーとは、コーヒー豆以外の原料から作られたコーヒー風の飲み物。オオムギ、玄米、コーン、チコリやタンポポの根などが使われている。
1953年に本物のコーヒー豆の販売を開始し、60年代始めに売り出した「ロンド」が大ヒット。
コーヒーは高価な商品ではあったが、東ドイツではよく売れたらしい。
1977年、ブラジルのコーヒー豆凶作により「コーヒー危機」が発生。
外貨不足の東ドイツではコーヒー豆が輸入できなくなり、焙煎コーヒーが禁止され、その代わりに代用コーヒーを飲まざるをえなくなった。
ノンカフェインの代用コーヒーは味も香りも格段に劣り、コーヒーの49%分を代用品に置き換えたコーヒーが出回っていた。
これには、コーヒー好きの東独国民の不満が高まり、政府はベトナムを新たなコーヒー産地として開拓。今では、ベトナムは世界第3位(最新データでは2位)のコーヒー輸出国となっている。

<参考データ>
世界の国別コーヒー生産量・消費量 [AGF/世界と日本のコーヒー豆事情]

麦芽の代用コーヒーというと、日本で売っている「ミロ」みたいなものなんだろうか。チョコレート味もする「ミロ」は美味しいけれど、コーヒーを飲んだ気には全然ならない。


■ワイン:赤ずきんに乾杯!
今でもドイツのホームパーティ(東独地域)でよく飲まれているのが、スパークリングワイン「ロート・ケプヒェン(赤ずきんちゃん)」。
ワイン産地の北限となるフライベルクで生産されていた、東ドイツでは人気ワイン。
統一後、旧東ドイツの会社として初めて、この醸造会社が旧西ドイツの酒造会社を買い取ったことで一躍有名になった。

■カクテル:社工場ではなく社交場へ
■洗剤・石鹸:共産主義の洗剤能力
■歯みがき粉:思想・農・労を防止
■トイレットペーパー:拷問道具

■ファッション:資本主義ファッショニズムに対抗

東ドイツでも数種類のファッション雑誌が販売されていた。
「ジビレ(Sibylle)」は共産主義ファッションの最先端をいく雑誌として、東欧諸国でも人気があったらしい。
ファッションモデルが映っている写真の背景には、無粋な共産主義的建築物や採掘施設が映っていたり(結構シュールな光景)、レニングラードやソ連科学館でロケ撮影していた。

■旅行:社会(主義)見学!
■スポーツ :官吏スポーツ
■音楽:調律された共和音
■宝くじ:「共産体制」でも一攫千金?!
■タバコ:労働の後はタバコで一服、休まっち


■東独ジョーク:心に届くジョーク?
シュタージ(秘密警察)の任務を描いた映画『善き人のためのソナタ』では、エリートコースのシュタージ養成大学の新入生が隣にいる教官に気づかず、ホーネッカー書記長にまつわるジョークを飛ばしたため、大学から姿を消し、収容所のような単純労働作業場に送られていた...というシーンが出てくる。

東独では、ホーネッカーネタのジョークも多かったらしい。
その中には日本人にも理解できるジョークがいくつかあり、これはその一つ。

ホーネッカーがベルリン・アレクサンダー広場にできている長蛇の列をみて、何のために列を作っているのかと訊ねた。
「実はわれわれは出国許可の申請書類のために並んでいるのです。けれども、あなたが1枚だけ許可証にサインすれば、われわれはこんなことをしなくても済むのですが...」


このジョークを最初読んだときは一瞬??だったけれど、すぐにオチがわかって笑えた。
ホーネッカーが自分自身の出国許可証に1枚だけサインして出国してしまえば、他の国民は東ドイツから出て行く必要はないのに...ということ。

<参考サイト>
共産圏関連ジョーク [世界史系ジョーク集のまとめサイト]


■共産主義エロス:『ザ・雑誌』
■子供同志のアカるい遊び
■おもちゃ:東独とーいえば、玩具
■ボードゲーム:東独が舞台の暴・・動ゲーム
■テレビゲームは国家の誇り?
■ザンドマン:砂男は眠らない
■メッキーマウスはハリネズミ
■児童文学:社会に供さんと志す若者を育成
■家具、食器:共産党員テリア


■信号機アンペルマン:アカ信号は止まらない!
東ドイツでとても親しまれていた歩行者用信号機アンペルマン。
心理学者のペグラウ氏が考案したデザインで、小さな男の子のシルエットが可愛い。
工業製品には機能・合理性優先で無粋なデザインの多い東ドイツ製品だが、このアンペルマンはなぜか”プチブル的”。
統一後、旧東ドイツ地域では老朽化した信号機が徐々に撤去され、アンペルマンも路上から消滅。
しかし、アンペルマン信号機の保存活動が始まり、旧東ドイツ地域のドレスデンではアンペルマン信号機がまだ残っている。旧西ドイツ地域にあるカッセル市にも設置されている。
アンペルマン信号機が再び注目されると、アンペルマン・グッズも次々に誕生し、アンペルマンショップもベルリンに数店舗ある。日本でもアンペルマン・グッズが購入可能。

AMPELMANN JAPAN 日本語公式ホームページ
アンペルマン・ショップ 日本語パンフレット(PDF)

■オスタルギー:オスト、たぎる!
東西ドイツ統一によって東ドイツではあらゆる環境が激変し、東ドイツ人の精神的空白から生まれた言葉であり現象がオスタルギー。
オスト(Ost:東)とノスタルジー(Nostargie:郷愁)を融合した言葉で、旧東ドイツで製造された製品や生活文化を懐かしがるとともに、茶化した言葉。
ドイツ統一といっても、実質的には西ドイツが東ドイツを吸収したようなもの。東ドイツの国営企業の解体により膨大な失業者が生まれ、今でも埋まらない旧東西ドイツ地域間の経済格差とそれに伴う精神的なギャップは深刻。
2008年の意識調査では、統一後の生活に満足している東ドイツ人は13%。東ドイツ時代に戻りたいという人も11%いる。
実際、東ドイツにも良いところはあった...と言う東ドイツ人は少なくないらしい。

ドイツ統一後に製作された東ドイツをテーマにした映画で有名なものは『グッバイ・レーニン』と『善き人のためのソナタ』。
『グッバイ・レーニン』はオスタルギーをかきたてるコミカルなストーリーで、当時の生活スタイルの描写や日常生活で普通に見かける東ドイツ製品が登場する。

それに対して、国民生活を監視する盗聴活動を行うシュタージ(秘密警察)が主人公の『善き人のためのソナタ』は、そういう郷愁が全く入りこむ余地がない。

<参考ブログ>
『日本で見られるオススメドイツ映画』その2 --- 戦後のドイツ~東西問題~東西ドイツ統一 [ほにゃく犬とほにゃくハリの字幕ほにゃく日記]

DDR(ドイツ民主共和国~東ドイツ)その2 ~ 恐るべし、シュタージ[それでもドイツ語が好きなんだワン♪]
統一後、シュタージに保管されていた監視調書の開示請求をして、自分の情報を確認する東ドイツ人は多かったという。
ある監視調書では、東独の友人宅へ訪問に行った若い日本人女性の個人情報が事細かに記載されており、当局へ事前に提出した情報以外にも、誰かが当局に通報したと思われる情報が載っていたという。東ドイツの相互監視社会の一面がよくわかる。

■博物館:東ドイツの歴史ここにあり
■魅惑の東ベルリン・ツアー(一泊二日コース)
■東独カフェ:マルクス経済におけるカフェー価値論?
■東ドイツ土産:共産主義の余剰価値


■ddr雑貨(大阪):「西」にある東ドイツ雑貨店 「ddr雑貨」ホームページ
東ドイツ(DDR)時代のアンティーク食器・雑貨店「ddr雑貨」というお店が大阪にあるという。
地図を見ると靭公園東方の阪神高速下にある。あの界隈には昼休みにたびたび外食しに行っていたけれど、全然気がつかなかった。
ビンテージものの食器やファブリックは共産主義政権時代のものとは思えないような可愛らしいデザイン。
でも、商品説明をいくつか見てみると、西ドイツで製造された製品もちらほら混じっている。

■マルクト(東京):サッカーから雑貨ぁへ

<関連記事>
伸井太一 『ニセドイツ1≒東ドイツ製工業品』

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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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