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耳鳴りとパーソナリティに関する論文
"Tinnitus-related distress: A review of recent findings."
Curr Psychiatry Rep. 2011 Feb;13(1):31-6.
Malouff JM, Schutte NS, Zucker LA./Department of Psychology, University of New England,Australia.

- 耳鳴りに伴う苦痛(tinnitus-related distress:TRD)に関する文献レビュー。
- 最近の研究結果では、
1)慢性耳鳴りは他の慢性的健康問題と同様のストレス誘引効果がある。
2)ある特定の性格的特徴(type D personality、anxiety sensitivity(不安感受性))をもつ人は、耳鳴りの影響による苦痛が増大する。
3)TRDにおける神経活動は、痛みやうつ状態の場合と似ている。
4)耳鳴りという状態を受け入れている人は、耳鳴りの苦痛は低くなる。
5)認知行動療法(リラクゼーション訓練、注意コントロール訓練、acceptance activities(受容行動)など)はTRDを軽減する傾向がある。
- メンタルヘルス専門家は、患者(特に高齢者)に対しては耳鳴りについて話を聞き、TRDに対して心理療法を提案することが良い治療法となるだろう。


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"The impact of Type D personality on health-related quality of life in tinnitus patients is mainly mediated by anxiety and depression."
Otol Neurotol. 2010 Jan;31(1):11-8.
Bartels H, Pedersen SS, van der Laan BF, Staal MJ, Albers FW, Middel B./Department of Otorhinolaryngology, University Medical Center, University of Groningen,The Netherlands.

目的:"Type D personality"の影響の評価
1)慢性耳鳴り患者における「健康関連した生活の質(quality of life (HRQoL)」と自己申告による(Self-reprted)耳鳴り苦痛度への影響を評価する。
2)この関連性が心理的苦痛(例えば、活力疲弊(vital exhaustion)、不安、抑うつ)の指標によってmediateされるかどうか。
被験者数:耳鳴り患者265人。
使用指標:Hospital Anxiety and Depression Scale, the Maastricht Questionnaire, the Type D Scale (DS14), the Short-Form Health Survey 36, and the Tinnitus Reaction Questionnaire.
試験結果:
- 耳鳴り患者のうち"Type D"は35.5%。
- 非"Type D"患者に比べて、"Type D"患者は不安感・苦痛・活力疲弊がより強く、HRQoLも一層低下し、耳鳴りによる苦痛が増大する。
- 構造方程式モデリングによれば、"Type D personality"は直接的に抑うつ状態や不安症状を増大させているが、活力疲弊に関しては異なる。
- 不安、抑鬱、活力疲弊は、HRQoLと主観的耳鳴り苦痛度に直接影響している。身体的HRQoL (R2 = 0.33)に比べて、精神的HRQoL (R2 = 0.74)の方に強く影響する。
- 活力疲弊はHRQoLと主観的耳鳴り苦痛度の予測変数となるが、不安と抑鬱のレベルが強まっているために、活力疲弊による影響は穏やか。
- Type D パーソナリティを持つ耳鳴り患者は不安感や抑うつ状態になりやすい。主に不安や抑うつ症状によって媒介される"Type D"の影響によりHRQoLが低くなり、主観的耳鳴り苦痛度を強めている。(Type Dはまたこれらの結果に対しても直接的な影響を与えているが)
- この結果が示しているのは、HRQoLと主観的耳鳴り苦痛度に対する耳鳴りの影響を低減するには、特にType Dパーソナリティを持つ患者においては、不安と抑うつ状態を緩和する方向の治療がなされるべきだということ。


<参考:Type D' Personalityについて>
Type D personality (英文Wilipedia)
'Type D' Personality: How Distress Affects Your Health - Research suggests this set of traits, characterized by negativity, comes with health risks(U.S.News & World Report LP,September 14, 2010)
- ”Type D personality”が最初に定義されたのは1990年代。
- ”D”は 「distressed(苦痛な、苦悩している)」を意味する。
- ネガティブ・抑鬱・不安・ストレス・怒り・孤独感というフィーリングが特徴的。
- 些細なことに不安になり、最悪なことを予期することもしばしば。
- 友達づくりが上手くいかない、自尊心が低いことも多い。
- 緊張して、慢性的に怒りっぽく、ストレス状況に過剰反応する。
- 拒絶されることを恐れて、自分の感情を他人には隠しがち。
- 健康なアメリカ人の20%がType D。心臓の問題で治療を受けている人の半数がType D。(Johan Denollet, a psychologist at Tilburg University in the Netherlands.)



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"Psychological Characteristics of Individuals High and Low in Their Ability to Cope with Tinnitus"
Psychosom Med. 1989 Mar-Apr;51(2):209-17.
Kirsch CA, Blanchard EB, Parnes SM./Center for Stress and Anxiety Disorders, State University of New York

- 77人の耳鳴り患者について、複数の標準化された心理テストや尺度を使って、主観的な耳鳴りの大きさ・煩わしさと耳鳴りへの対応能力を評価した。
- 耳鳴り対応能力と心理テストのスコアに強い相関があった。
- 対応能力の尺度で分類すると、"high copers" (対応能力が高い患者45人)または "low copers" (対応能力が低い患者32人)に分かれる。
- また、この2つの耳鳴患者グループを、慢性頭痛患者(34人) と頭痛・耳鳴症のない対照群(65人)ともあわせて比較した。
- 低対応能力の耳鳴患者は、高対応能力患者群よりも心理的にもかなり抑うつ的。
- 興味深い点は、低対応能力群は慢性頭痛患者と、高対応能力群は対照群と、その心理的プロファイルがそれぞれ非常に似ているという点。


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"Minnesota Multiphasic Personality Inventory (MMPI) を用いた耳鳴患者の心理的特性の検討"
AUDIOLOGY JAPAN Vol. 49 (2006) No. 4
日比野 愛, 高橋 真理子, 牧野 多恵子, 村上 信五, 松田 太志, 大脇 真奈, 渡邊 啓介, 関谷 芳正, 小國 有加, 本田 麻

被験者:TRTを受けている耳鳴患者23例(男性9例,女性14例)。全体の平均年齢は58.96歳。初回THI(Tinnitus
Handicap Inventory)の平均スコアは60.52。
分析方法:MPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory)使用。耳鳴患者23例とMMPI日本版標準化集団についてMMPIの尺度ごとに比較検討
結果:
- 耳鳴患者では男女ともに心気症,抑うつ尺度が高い値。
- さらに、男性では軽躁病と社会的内向性尺度、女性ではヒステリー、パラノイア、統合失調症尺度において有意差を認めた。
- 耳鳴患者の中でいずれかの尺度においてT得点が70(不適応水準)を超えた事例は23例中8例。うち7例は初回THⅠが58以上(Severe handicap)。
- 一方では、MMPIが正常範囲内の適応的なプロフィールを示す耳鳴患者も多い。


"MMPIを用いた耳鳴患者の心理的特性の検討 第2報"
AUDIOLOGY JAPAN Vol. 50 (2007) No. 5
加藤 有加, 関谷 芳正, 本田 麻, 高橋 真理子, 牧野 多恵子, 松田 太志, 大脇 真奈, 渡邉 啓介, 井口 愛, 村上 信五

被験者:TRTを施行した初診耳鳴患者のうち、導入カウンセリングを受けた97例(女性53例、男性44例。平均年齢54.5歳)。平均聴力は右26.3dB、左29.OdB。罹病期間の平均は5.1年。
各尺度問の相対的位置関係を考慮に入れた布置(Configural)解釈法に基づき、MMPIのプロフィールを最も高い臨床尺度2点による2数字高点コード出現率を標準化集団と耳鳴患者集団で比較。

<出現率の多いコード(高い順)>
(13コード)ヒステリー・心気症:ストレスと出会ったときに身体症状が増強。
(27コード)抑うつ・精神衰弱:神経質で心労が多く、抑うつ・不安・強迫神経症との診断多し。メンタルヘルス関係の外来患者で最も一般的なコード。
(23コード)抑うつ・ヒステリー:抑うつ神経症との診断多し。自己疑惑に苦しみ、感情を明確に表現することが困難で極度に統制過剰。
(12コード)心気症・抑うつ:身体上の不快感を訴えるも臨床的に器質的基礎が認められず、ストレスに対し身体症状で反応する。不安と緊張が強く、神経過敏。
(28コード)抑うつ・統合失調:動揺、思考の散乱等を訴え、独創性に欠けた思考で紋切り型。自分の能力について現実離れをした理解をする傾向があり、他人と情緒的に距離を置こうとする。
(26コード)抑うつ・パラノイア:怒りっぽく批判に過敏。根底に強い怒りをもっており、パラノイド傾向が明らか。憤慨、興奮、疲労、攻撃性が顕著。

このうち、伝統的心理療法に適しているとされるのは、27コード。
13,12,23のコードは、身体症状は防衛機制として働いているため心理療法への動機付けが難しい。
26,28コードは、対人関係の困難さから治療関係を結ぶことが困難。


<MMPIについて>
MMPIとはミネソタ大学の心理学者Hathaway, S.Rと精神医学者McKinley, J.C.によって開発されてきた多面的人格目録(性格テスト)。
MMPIではその人の元来もっているパーソナリティ特性がより反映されやすく、抑うつだけでなく心気症、ヒステリー、精神衰弱、社会的内向性など多面的な尺度によって構成されている。
550個の質問項目からなり、4つの妥当性尺度と10の臨床尺度にわけ、プロフィールを分析する。

ミネソタ多面人格目録(Wikipedia)
MMPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory)とは[日本臨床MMPI研究会]


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備考
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日本語訳文は厳密な精度を期したものではありません。また、日本語論文は適宜要約したものです。
論文の正確な内容は、原文(英語、日本語)をお読みください。

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好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

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