グールド ~ リヒャルト・シュトラウス/ブルレスケ(Burleske)

グールドといえば、バッハとベートーヴェン、ブラームスの後期ピアノ作品集は広く聴かれているけれど、彼のディスコグラフィはかなりユニーク。
中世のギボンズから現代音楽のシェーンベルクまで、時代的に極めて幅広い。
グールドの現代ものは、ベルク、シェーンベルク、プロコフィエフにヒンデミットなど、どれも面白い。
グールドを「たとえ作曲家の意図に反しても意外なことをしたいという演奏家」だと彼のピアニズムに否定的だったブレンデルでさえ、グールドが弾いたベルクの《ピアノ・ソナタ》は、この曲の"最高の演奏のひとつ"だと賞賛していた。

意外なのは、現代音楽初期と時代的に重なる後期ロマン派末期のリヒャルト・シュトラウスの作品も録音していること。
シュトラウスはピアノ作品自体が少なく、ピアノ独奏曲《ピアノ・ソナタOp.5》と《5つのピアノ曲Op.3》のCDは、珍しいので昔から持っている。
調べてみると、グールドのシュトラウス録音は他にもいろいろあって、グールドはバッハ、シェーンベルク、ベートーヴェンに並んで、シュトラウスが大好きだったらしい。
グールドの最後の録音は、シュトラウスのピアノ・ソナタだった。
SONY盤シュトラウス作品集の紹介文(HMV)に、グールドが演奏したシュトラウス作品がいかに多いか、詳しく説明されている。

珍しいカラーのライブ映像は、シュトラウスの有名な《ピアノと管弦楽のためのブルレスケ(Burleske) ニ短調》。
これは、1967年9月1日~4日に録音し、1967年11月15日にCBCの『カナダ建国百年記念コンサート』という番組で放映されたもの。

この《ブルレスケ》はアラウもEMIに録音していたはず...と探してみると、ウェーバーの《Konzertstück/コンツェルトシュテュックヘ短調(小協奏曲)》の方だった。
曲想は全く違って、《ブルレスケ》はタイトルどおり諧謔でおどけた雰囲気の曲。
一方、《コンツェルトシュテュック》は、ロマン派ピアノ協奏曲らしい華麗でロマンティシズム濃厚な小協奏曲。
曲想がかなり違うのに記憶違いをしていたのは、簡潔な曲名と単一楽章形式のピアノ&管弦作品だから?

Glenn Gould - Richard Strauss, Burleske For Piano And Orchestra In D Minor [ 1967 ]
Vladimir Golschmann,Toronto Symphony Orchestra,1966


《ブルレスケ》の冒頭は、サーカスの危ない綱渡りか、空中ブランコみたいなフラフラと浮遊感のある旋律。
高音部から両手が交互にユニゾンで駆け下りてくるところは、軽い眩暈でくらくらするような感覚。
グールドの弾き方だと、脱力しそうになるようなちょっとおどけた雰囲気がよく出ていてとっても面白い。
その後は一転して優雅でロマンティックな旋律に。こういう部分は《コンツェルトシュテュック》と似ているので、混同したのかも。

《ブルレスケ》はあまり聴かないので、グールドの演奏が"まとも"なのかどうか、よくわからない。
他のピアニストの演奏はどうなんだろうと、アラウ、アルゲリッチ、リヒテルのライブ録音にゼルキンのスタジオ録音を聴くと、テンポがかなり速く、タッチもシャープで力強く華やか。
ということは、グールドの弾き方が随分変わっているということになる。テンポが遅くて、タッチもふわふわと軽やか。力感もゆるく、圧迫感もほとんどなく、洒落たユーモアを感じさせるところがユニーク。
グールドの解釈では、そんなにシャカリキに力を込めて弾く曲ではないらしい。
展開部(7分少し前)に入ると、一人呟くように哀感漂うピアノソロがとても綺麗。
実際、聴いていて面白いのはグールドの《ブルレスケ》。肩の力を抜いた軽妙な面白さと、煌びやかな華麗さというよりは、軽やかで愛らしさのある少し慎ましやかなロマンティシズムが現代的で都会的(?)な趣きというのかも。

このライブ録音の時も、グールドはかなり低い椅子に座っているらしく、鍵盤よりもひじがかなり下がって、手の形がフラット。
いつものように、体を回転させながらとっても気持ち良さそうに弾いている。このグールドのピアノを弾く姿自体が、《ブルレスケ》の諧謔な雰囲気そのもの。

タグ:シュトラウス グールド

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コメント

シュトラウスのピアノ

私はシュトラウスのピアノ曲を聴いたのは、初めてです!
シュトラウスはわりと好きなんですけど、この曲始めて聴きました。やはりピアノ曲は少ないんですね。

いかにもシュトラウスらしい曲ですけど、ちょっと変わっていて面白いです。好きだなあ。グールドが弾いているから、余計にユニークに感じるのかしら?

私はグールドをよく知らなくて、一人で弾いているイメージしかなかったんですが、オケと協奏もしていたんですね。これはまだ若いころかしら?

アルゲリッチ姐様とか、他の方の演奏も聴いてみたいなあ。

グールドのコンチェルト

Tea316様、こんばんは。

シュトラウスのピアノ作品は、作品番号がついているものは数曲しかありませんが、《ブルレスケ》だけは比較的録音が多いです。
でも、かなりベテランのピアニスト(ゼルキン、カーゾン、アラウ、リヒテル、など.)が若い頃に弾いていることが多いので、今時の若い人はあまり弾いていないようです。

この曲が面白いのは、グールドの独特な解釈と弾き方のせいでしょうね~。
本来はもっと華やかにダイナミックに弾く曲なのではないかと思います。
アルゲリッチなんか、いつもどおりパワフルです。(Youtubeにライブ映像があります)

グールドはコンチェルトや室内楽は、若い頃に録音したものが多いですね。
演奏会で弾くのを止めてスタジオ録音に限定してからも、バッハのヴァイオリンソナタ全集は録音してますし、ソロばかり弾いていたというわけではないようです。
コンチェルトは、バッハ、ベートーヴェン、ブラームスなどを録音していますが、物議を醸した有名なものがいくつかあります。
特に、バーンスタインが指揮したブラームスのピアノ協奏曲第1番のエピソードは有名です。
演奏会で演奏する直前に、このテンポで演奏するのは完全に同意できるものではない云々...と、バーンスタイン自ら聴衆にスピーチした後、グールドに合わせた超スローテンポで演奏してました。(テンポが遅いことで有名なアラウよりもさらに遅いです)
そのときのスピーチがYoutubeで音声だけ公開されていますが、これは結構笑えます。
グールドのベートーヴェンのコンチェルトも一風変わってます。
まあ面白くはあるんですが、ベートーヴェンとブラームスに関しては、好きとは言えないものがほとんどですね。
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yoshimi

Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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