セルジオ・フィオレンティーノ 『The Berlin Recordings』 ~ ピアノ名曲集

フィオレンティーノのBOXセット『The Berlin Recordings 1994-97』に収録されている10枚目の最後のCDは、ピアノ名曲&小品集。

私がフィオレンティーノのことを知ったのは、たまたまYoutubeでフォーレの歌曲《夢のあとに》のピアノ編曲版を見つけたことがきっかけ。
フィオレンティーノ自身が編曲したこの《夢のあとに》を聴いた時、なんて叙情濃厚で”雰囲気”に満ちた編曲なんだろうと思ったけれど、これがとっても魅力的。

フィオレンティーノについて俄然興味が沸いてきたので、ディスコグラフィを探していて見つけた新譜が、『The Berlin Recordings 1994-97』。
試聴したバッハのパルティータ第1番がとても良い感触だったので、BOXセットを手に入れてCDで聴いてみると、期待に違わず素晴らしいバッハ。珍しい無伴奏バイオリンソナタ第1番のピアノ編曲版も同じくらいに素敵。
その他の曲も時代・様式の異なる選曲が多彩。ヴィルトオーソらしい切れ味の良い技巧と叙情豊かで品の良い演奏が楽しめる。

『Sergio Fiorentino Edition Vol.1 :The Berlin Recordings 1994-97』
Berlin Recordings-Fiorentino Edition Vol. 1Berlin Recordings-Fiorentino Edition Vol. 1
(2012/01/10)
Fiorentino



BOXセットはCD10組。
バッハ、シューベルト、シューマン、ショパン、フランク、リスト、ドビュッシー、プロコフィエフ、スクリャービン、ラフマニノフなど、レパートリは多彩。特に得意なのはラフマニノフ。若い頃はラフマニノフが自身が弾いているようだと評されていた。

最後の「CD10」の収録曲は、モシュコフスキー以外はポピュラーな曲ばかり。

 ドビュッシー:ベルガマスク組曲、アラベスク第1番&第2番
 スカルラッティ:ソナタホ長調、ソナタニ短調
 モシュコフスキー:15の練習曲Op.72 第6番
 フォーレ:夢のあとに(編曲:フィオレンティーノ)
 シューマン:謝肉祭
 リスト:即興ワルツ,小人の踊り(2つの演奏会用エチュードS.145より)、忘れられたワルツ第1番


とても好きなフォーレの歌曲《夢のあとに》のピアノソロは、濃密な音と響きがびっしりと敷き詰められたタペストリーのよう。
クラシックのピアニストの編曲にしては、ムード音楽風な"雰囲気"に満ちて、とてもロマンティック。
古き良き時代へのノスタルジーが漂い、何度聴いてもうっとり。こんな曲を書く人はロマンティストに違いない。

Fiorentino plays Fauré Après Un Rêve




ドビュッシーの『ベルガマスク組曲』も素晴らしく良くて、印象派の描写的な音楽というよりも、ヒューマニスティックな暖かさと希望や約束に満ちた音楽。
明るい煌きと温もりのある甘い音色に柔らかく滑らかなフレージングは、優美で品良く親密感を感じさせる。
《プレリュード》は明るい未来を予感させるし、《メヌエット》と《パスピエ》は屈託なくて優雅で楽しそう。
ゆったりとしたテンポの《月の光》は、暖かい眼差しと優しい雰囲気が曲の隅ずみにまで浸透している。

Debussy - Sergio Fiorentino (1997) Suite bergamasque




スカルラッティのソナタはメカニカルなタッチではなく、レガートな歌いまわしとペダルを使った重なる和声の響きが美しい。
小鳥がさえずるようなトリルも可愛らしく、気品のある優美な叙情感が素敵。

Scarlatti - Sergio Fiorentino (1996) sonata kk 380 en ré majeur



タグ:フィオレンティーノ フォーレ ドビュッシー スカルラッティ

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コメント

ベートーヴェン、不滅の恋人

フィオレンティーノさんの演奏は、一人でも多くの人に聴いてほしいです。
心地よくて、途中で居眠りしたことも幾度か。むろん奏者には何の責任もなくて、私の寝不足が原因ですけど。

青木やよひ『ベートーヴェン <不滅の恋人> の探究』を読みました。伝記のたぐいはまず読まないんですがこれは偶然の成り行きから、興味本位で。

 追憶がさらに生なましく彼の魂をゆさぶっている。第三楽章のアダージョの導入部に、彼自身が書きこんだ「嘆きの歌」という指示が象徴するように、それは生涯で「ただ一人の人」を失った芸術家の魂からしたたり落ちる悲しみと悔悟の涙のようだ。
                              276頁より

こういう事実を知って Op.110 を聴くと、よけい感銘を受けます。何種類か持っていますが、私の心にいちばんしみるのは、ハンス・ライグラフさんの演奏です。
彼の追悼盤として、スウェーデンで発売されたらしいこの一枚のCDは、まだ髭面でなかった頃の精悍な風貌がつかわれていて、まず外見に惹きつけられ(笑)、演奏を聴いて音楽にも魅せられました。
ベートーヴェン最後のソナタ2曲のこれは隠れた名盤だと信じます。入手はむずかしいと思いますが、多くの人に聴いていただきたい演奏です。

Op.110について

ひでくんママさま、こんにちは。

『ベートーヴェン <不滅の恋人> の探究』は大変な力作ですね!
以前に読んだ時に面白かったので記事を書いてます。
岩波書店から出ているメイナード・ソロモンによる伝記と比べると、<不滅の恋人>の部分に限っては、ソロモンよりも掘り下げ方が深いです。
青木さんはベートーヴェンの伝記も書いていますが、ソロモンよりもずっとコンパクトなのでとても読みやすい本です。

青木さんの「嘆きの歌」の解釈は、一つの解釈ではありますが、それを念頭にして聴くと、Op.110の音楽の流れがベートーヴェンの人生そのもののようにも思えてきますね。

ライグラフの演奏は聴いたことがありませんが、NAXOS(NML)にはモーツァルトなどの録音がいくつかありました。ベートーヴェン録音のCDは今は簡単に入手できますよ。
試聴ファイルを聴いてみると、私にはかなり重たいタイプの演奏ですが、深い感情が込められたベートーヴェンのように感じました。

4年前の読書感想、拝読しました

> 感情的にシンクロしやすい

そうなんですよ! やっぱり知って聴くのと知らずに聴くのでは、大きな違いがありますね。
いろいろ聴き比べて Op.110 は演奏家の個性がでるな~と思いました。
私の場合、ほとんど貰い物(強奪をふくむ)なんですが、ライグラフさんの他にも、アナトリー・ヴェデルニコフさんの演奏も気に入っています。
ペーター・レーゼルさんの全集も欲しいのですが、このごろ伯父も用心して隠すから、入手が難しい。・・・笑

昔と違って

ひでくんママ様、こんばんは。

今は、自由に演奏を聴きたいと思うようになったので、青木さんの解釈のことは気にしなくなりました。
あまり特定のストーリーに拘わると、曲を聴くときに余計な先入観が入ってしまいますね。

ヴェデルニコフのベートーヴェン録音は、音質(というかピアノ自体の音)が悪すぎて聴きづらいところがありますね。
レーゼルは、そのうち(数年後?)全集盤が出るでしょう。ただし、ライグラフとはピアニズムが正反対ですよ。
他にも良い全集はたくさんありますし、最近は廉価盤も多いので、いろいろ聴いてみられると良いと思います。

私はベートーヴェンの全集は20種類くらいは持ってますし、アラウ、レーゼル、パールの3つの全集があれば充分ですから、よほど素晴らしいものが出てこない限り、もう買わないと思います。

フィオレンティーノ

この10枚組購入したのですが、少しずつ聴き進めていますので、まだこの10枚目まで到達してませんでした。ご紹介いただいた動画で試聴してみましたが、素晴らしいですね!夢のあとには本当にうっとりします。

話は変わりますが、ルンペさんが今年の6月ごろに「7月にはPiano Classicsのフィオレンティーノ・エディションの第2弾が出る」と言っていたのですが、その後何の音沙汰もありません。販売に対して何か問題があったのではないかと心配してます。

BOXセットは大当たりです

ミッチさま、おはようございます。

私もまだ10枚全部は聴き終わっていなくて、ロシア物が残ってます。
どれも今まで聴いていた演奏とは一味違う新鮮さがあって、このBOXセットにはハズれのCDがありませんね。
苦手のシューマンの《謝肉祭》も、フィオレンティーノの演奏なら聴けそうな気がしてきます。

《夢のあとに》の編曲も演奏も本当に素敵ですね!
この動画を聴いたがために、フィオレンティーノのBOXセットを買うことになったくらいです。
他のフィオレンティーノの編曲ものなら、ラフマニノフの《ヴォカリーズ》も素敵です。

Vol.2が出るとしたら、apr盤の若い頃の録音や他レーベルの録音のライセンス盤か、CD化されていない1990年代のライブ音源になるのでしょうか。(後者の方ならマスタリングが大変そうですが)
予定よりリリースが遅れることはよくありますし、小さなマイナーレーベルですからメジャーと違っていろいろ難しいことも多いでしょうから、気長に待つしかなさそうです。

フィオレンティーノ

こんばんは。
フィオレンティーノというピアニスト、yoshimiさんのブログで知りました。
ベルガマスク、いいですね。残響が多めで、雰囲気がたっぷりです。昔はベロフの旧盤を聴いていましたが、ここのところご無沙汰で、久しぶりに聴いて心が洗われた感じです。

品の良いロマンティシズム

ポンコツスクーター様、こんばんは。

フィオレンティーノは、知っている人の方が絶対に少ないでしょう。
彼の演奏には人間的な暖かみのようなものがあって、聴いているだけで幸せな気分にしてくれます。
古き良き”19世紀のロマンティシズム”の世界に戻ったようなロマンティックな雰囲気のわりに、主情的・感傷的な演奏にならず、節度と端正な品の良さがあるように思います。

ベロフの旧盤は、音がクリアで演奏はとても明晰ですね。
喩えて言えば、ファンタジーのある印象派の絵画というよりは、克明な風景写真や映像を見ているような感じがします。
陰翳が薄くて、明るすぎる気がしないでもないですが..。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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