耳鳴り治療のための音響・音楽療法(13) SOMTUS™ Tinnitus Reduction Therapy

2012.09.14 12:00| ・ 聴覚/耳鳴
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SOMTUS™ Tinnitus Reduction Therapyの概要
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”SOMTUS™ Tinnitus Reduction Therapy”は、急性音響外傷による耳鳴り治療法。
インターネット上で1分間のオンライン治療により、耳鳴りを大幅に緩和または消滅させる効果がある。

”SOMTUS™ Therapy”の開発者は、当時Ursuline College Sligoの学生だったRhona Togher、Eimear O'Carroll、Niamh Chapmanの3人。
この治療法の研究・開発・市場化のため、教官Anthony CarolanとともにRestored Hearing社を2009年に設立。

原理
”SOMTUS™ Therapy”は、音波に関する理論(sound and wave theory)に基づいている。
騒音環境では、蝸牛細胞内にある sound receptor細胞が損傷する。
この細胞は、音波振動を電気的信号に変換する働きをするため、騒音暴露により曲がったり損傷すると、脳へ送られていた電気的信号が止まる。この結果、実際には存在しないノイズが聴こえ続けることになる。
大音量の騒音により損傷して折れ曲がった蝸牛有毛細胞に対して、低音のハム音(low hum)による物理的刺激を与え、本来の直立位置に復帰させる(=re-straightened)。(喩えて言えば、有毛細胞を”音の櫛”で梳いて、元通り真っ直ぐにするようなもの)

特徴
患者ごとにテーラーメイドされた治療パッケージ。(他人が使っても効果があるとは限らない)
治療音は低周波数の音を利用。
インターネットを利用した1分間のオンライン治療。(24時間いつでも治療可能)
パソコンを使わずとも屋内外で治療できるiPhone用アプリケーションを開発中。

使用機器
ヘッドフォン(outer ear headphone)が必要。
設定音量は”中レベル”を推奨。
補聴器使用者は、補聴器を外すこと。治療音が聴こえなくとも、治療は行われている。

利用者
慢性的耳鳴または永続的な難聴を患っている人が多い。

治療回数
急性耳鳴の場合は、発症後に1回1分間の治療を行うだけで効果がある。
慢性耳鳴に対しては、毎日、または1時間治療などよって、効果が現われることがあるのかもしれない。(慢性耳鳴の利用者は、毎日この治療を行っている)
症状のレベルが様々な聴力障害に対する効果については、予測不可能。

治療効果
急性音響外傷による耳鳴治療では成功率99%。
治療セッション後、急性の耳鳴が大幅に低減または消滅した。
慢性的耳鳴に対しては、治療効果は保証できない。

治療費用
SMS payment:1回あたり2.5ユーロ
クレジットカード支払:15ユーロで10バッチ分。
定期購入・支払システム:1ヶ月間の無制限利用で30ユーロ。4ヶ月間、1年間のコースもある。


Restored Hearing社ホームページ
- SOMTUS™ Tinnitus Reduction Therapy:騒音が有毛細胞を損傷する過程、SOMTUS Therapyの作用原理などを記載。
- FAQ:使用法などについて説明あり。
- 紹介記事リスト:記事の一部のみ閲覧可能
- Instant Free Trial:無料トライアル。(入力する個人情報などのセキュリティに関しては不明)


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開発・起業の経緯
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”Tinnitus therapy is music to the ears of student entrepreneurs” [The Irish Times - September 6, 2012]
”Restored Hearing Provides Online Therapy for World Cup Fans Suffering from the Effects of the Vuvuzela” [NovaUCD:University College Dublin's Innovation and Technology Transfer Centre,15 June 2010]
”Therapy for temporary tinnitus forms sound basis for company”[同上、14 January 2010]
”Innovation in challenging times:commercialisation goes from strength to strength”[University of Edinburgh Annual Review 2009/2010]


耳鳴りは、ナイトクラブやコンサート、MP3プレーヤー、稼動中の機械などの大音量の音に曝されることでよく起こる現象。
TogherとO’Carrollは、Ursuline College Sligoの同級生Niamh Chapmanと共に、2009年の”BT Young Scientist & Technology Exhibition”のコンペティション参加プロジェクトとして、耳鳴りを消滅させるための1分間オンライン治療法(one-minute web-based therapy)を開発した。
プロジェクトのタイトルは、“The Sound of Silence – An Investigation into Low Frequency Therapy for Tinnitus Sufferers”(沈黙の音-耳鳴患者のための低周波治療法に関する研究)。

もともと、O’Carrollたちは公立中等学校(secondary school)の学生だった時、どうやって人間は異なる場所と周波数の音の位置を特定する(locate)ことができるのかというプロジェクトに携わった。
これは音の物理の基礎的研究だったが、プロジェクト完了後、得た知識を現実の問題に応用したいと思い、それが耳鳴りと耳の解剖学・生物学への興味に繋がった。

コンペティションでは優勝を逃して2位となったが、それは起業へとつながる'blessing in disguise(つらいが後でためになる物事)','godsend(思いがけない幸運)'だった。
TogherとO’Carrollはこの治療法をさらに発展させたが、治療法を求めてコンタクトしてきた人が非常に多かったため、市民に対して無料提供を開始。
2009年5月、Sligo County Enterprise Boardが、会社を設立して治療法を有料で提供しないかと、提案してきた。
学生の2人はビジネス経験が乏しく起業ノウハウがなかったため、教官のAnthony Carolanと共同でRestored Hearing社を設立。

起業のコンセプトは”Restored Hearing”(聴力回復)。
2009年8月、公式に”SOMTUS™ Tinnitus Reduction Therapy”を提供するウェブサイトを開設。
初日だけで700人が購入し、それ以来、購入者は国内外で合計6500人。
宣伝予算はゼロ。クチコミに頼っているが、米国の放送局で紹介されるなど海外での関心も高く、今までの購入者は英国・アイルランド、欧州、北米、オーストラリアや中国など。
最近、オランダのTV放送番組で”SOMTUS™ Therapy”の実況テスト(live-test)をしたところ、オランダでの売上げが急増した。

”SOMTUS™ Therapy”は特許取得済み。(※アイルランドの特許公報で確認できたのは特許出願のみ)


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臨床試験
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医療機器としてFDAの承認を得るには臨床試験が必要なため、現在ウェブサイトで臨床試験を実施中。
米国内でFDA承認済みの耳鳴り治療機器は今のところ1件しかなく、慢性的耳鳴が治療対象。
急性耳鳴を対象とする”SOMTUS™ Therapy”と同等のものは存在していない。

英国耳鳴協会が臨床試験の被験者集めに協力している。
12月中に最初の結果をまとめる予定。


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備考
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この記事は、英文記事・ホームページの情報を要約したものです。
正確な内容は、英文原文にてご確認ください。

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好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
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