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グールド ~ ベートーヴェン=リスト編曲/交響曲第5番《運命》
リストの編曲もので有名な曲は多数あれど、規模の大きさと難易度の高さでは、ベートーヴェン交響曲全9曲のピアノ独奏版が筆頭にくるのでは。
昔から全集盤で知られているものは、カツァリスとシチェルバコフの録音。
かなりの難曲なので、5番や9番だけとか、抜粋し録音している人が多い。
なぜかグールドが、このリスト編曲版の第5番&第6番の2曲を録音している。

Glenn Gould Plays Beethoven & WagnerGlenn Gould Plays Beethoven & Wagner
(2012/08/28)
Glenn Gould

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収録されている《田園》は第1楽章のみ。全楽章版は別盤が出ているが、音源は別物。
セールス上の理由だと思うけれど、《運命》と《田園》全楽章を一緒に収録したCDがなぜか見当たらない。
今年はグールドのメモリアルイヤー(没後30年と生誕80年)なのに、SONYは”ベートーヴェン録音全曲BOX”は出してくれないのかな?


交響曲は《田園》よりも《運命》の方がはるかに好きなので、編曲版でも聴くのはもっぱら《運命》。
グールドには”ヴィルトオーゾ”のイメージはなかったけれど、編曲版ではテクニカルに怪しいところもなく、きっちり弾いている。
ピアノ・ソナタ録音は、グールド編曲版を弾いているのだろうかと思うような奇妙キテレツな演奏も少なくないけれど、このリスト編曲版にはそういうところは全くない。
リストらしい技巧華やかなところをアピールするわけでもなくて、原曲(と編曲)の良さを音楽的に聴かせてくれるので、グールドのベートーヴェンにしては自然に入っていける。
ヴィルトオーゾのシチェルバコフとは方向性が全然違うけれど、《運命》の演奏はグールドの方が魅力的に思えてくる。

テンポはシチェルバコフがどの楽章も速め。グールドは第2楽章が特にスロー。
 グールド (5:56/14:28/6:59/11:33) ※第1楽章はりピート省略。
 カツァリス (7:36/11:17/6:34/11:55)
 シチェルバコフ (7:16/10:15/5:35/11:07)


第1楽章 Allegro con brio
グールドにしては至極まともな演奏。(これだけ技巧的に難しいとあれこれ細工する余地も少ないだろうし)
色彩感のある音色も綺麗で、和音の連続するフレーズでも音の切れがよく、響きもクリアで濁らない。
フォルテで和音を連打するところでも、肩に余計な力が入らず打鍵に無理がないように聴こえる。
シチェルバコフは、シンフォニックな音響にするために、かなり肩に力が入っているような弾き方に時々聴こえるので、ちょっと聴き疲れするところはある。

不思議と威圧感がなく、歌心が感じられる旋律の歌いまわしがグールドらしい。
特に緩徐部の歌わせ方がメロディアスで叙情的。
それぞれの旋律をくっきりと浮かびあがらせて、しなやかに歌わせるところは、バッハの奏法と似ているのかも。

Glenn Gould - Beethoven Symphony No.5 in C minor, Op.67 1st movment



第2楽章 Andante con moto
緩徐楽章なので、グールドらしさが全開といったところ。
テンポがかなり遅く、呟くような旋律の歌いまわしや、弱音部の静けさが独特。
メロウな雰囲気が漂っているけれど、こんなに詩的で美しい第2楽章を弾ける人はそうそういない。

Glenn Gould - Beethoven Symphony No.5 in C minor, Op.67 2nd Movment ( part 1 )



第4楽章 Allegro. Presto
テンポがかなり速いシチェルバコフは、シャープなタッチでヴィルトオーソらしい技巧が冴えている。疾走感と躍動感があり、交響曲のようにシンフォニックで輝かしい。
それと比べると、グールドはテンポが遅く、マルカート的に一音一音しっかりと打鍵し、地面を踏みしめて着実に前進していくようなタッチ。威風堂々としていながら、歌うようにしなやかで美しい。

Glenn Gould - Beethoven Symphony No.5 in C minor, Op.67 4th Movment ( part 1 )




シチェルバコフの弾く第4楽章は、勇壮で輝かしいフィナーレ。原曲のようにカタルシスを感じさせてくれる。
Franz Liszt - Beethoven - Symphony No.5 in C minor, S464/R128 - IV. Allegro (transcription)



参考情報
「カツァリス10番勝負 交響曲第5番「運命」VS グールド By U-YAN」(Katsaris VS Famous Pianists)[VIVA PIANIZM <KATSARIS MANIAX>]
カツァリスとグールドの《運命》の演奏比較。実況放送的演奏解説。
楽譜に沿って、細かいところまで突っ込んでいる。これは結構面白い。

tag : ベートーヴェン フランツ・リスト グールド

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フィオレンティーノを聴きながら
たびたびおじゃまします。
グールドの第五は昔から有名なものですが、聴いたのは初めてです。ちょっと大仰なところはあるものの、ピアノソナタと近いテイストですね。
彼がどうしてこういうものを録音したか、作曲をやっていたことに関連すると思うんですよ。ピアノ作品だけではなく、交響楽にも造詣が深いわけで、いてもたってもいられなかったのでは・・・なんんて空想をします。
作曲家の視点
ポンコツスクーター様、こんばんは。

グールドは、楽譜に書かれている指示(特にディナーミク部分)を無視しているところが時々あり、ノンレガートのタッチも入れたりしてますから、ピアノ・ソナタの演奏と相通じるところはありますね。
リスト編曲版をグールドが編曲した演奏...とでも思いながら聴いた方が良いのかもしれません。

グールドの第6番も評判が良いようです。
これもYoutubeにあります。どちらかというと、《運命》よりも《田園》の方が、グールドのスタイルには合っているような気がしますが...。
http://www.youtube.com/watch?v=2kwQz0KyrQg

ベートーヴェンとは違って、現代音楽を弾くグールドの方は好きですよ。
スタンダードになるような演奏ですし、難解な作品であっても、グールドならではの楽譜解釈の的確さ・センスの良さを感じます。
こういうところにも、作曲家の視点が入っているのでしょう。
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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