ユージナ ~ ベルク/ピアノ・ソナタ 

2012, 10. 06 (Sat) 09:00

ベルクの《ピアノ・ソナタ Op.1》は、現代音楽の名曲とされるもののなかでも、特に好きな曲の一つ。
初めてグールドの録音でこの曲を聴いて以来、グールドの演奏がマイベストだった。
硬質で透明感のある音色とシャープなタッチで、ベルク特有のネットリした濃厚な叙情感とは違って、研ぎ澄まされたクールな叙情感が美しい。

ユージナは現代音楽(20世紀の音楽)の録音がかなり多いので、ベルクのピアノ・ソナタも録音していた。
共産主義体制下のソ連では、前衛的な現代音楽は”不健全で退廃的”な音楽とみなされていたので、この種の音楽を作曲・演奏すると当局の著しい不興を買うことになる。
ユージナは国外(西側だけでなく東側諸国でも)の演奏活動はほとんど許可されず、ソヴィエト国内での演奏・録音活動、それに教育活動も禁止されたことも度々。
それでも、”スターリンのお気に入り”のピアニストだったことが幸いしたのかどうかはわからないけれど、窮乏した生活を送りつつもピアニストとして生き延びた。
スタジオ録音やライブ録音が音質が悪いものが多いとはいえ、かなりの数が残っている。

1964年に録音したベルクの《ピアノ・ソナタ》は、ユージナらしいベルク。
激しいディナーミクの変化で大小さまざまな起伏のあるダイナミックな演奏。
音質は悪いけれど、声部もそれぞれくっきりと明瞭。弱音部のやや篭もった音色で色彩感や和声の響きが美しい。
フォルテのタッチは針のように鋭く尖っている。時折挟まれる柔らかく厚みのある弱音のパッセージでも、緊張感が緩むことがない。
ベルクらしい叙情感が、音の間から激しく湧き立ってくるけれど、ネットリとまとわりつくような粘着性は薄く、突き刺すような激しさがある。
グールド以外のベルクは、どちらかというと繊細な弱音で内省的・瞑想的な雰囲気の強い演奏が多い。
ユージナはそれとは逆方向。鋭角的なタッチで激情的でありながらも、透徹した美しさと厳しさがあり、明晰。
思考して組み立てた音楽というよりは、直感的なインスピレーションに満ちている。


Maria Yudina plays Alban Berg Piano Sonata Op. 1


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