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アラウ ~ ショパン/幻想即興曲
たまたまYoutubeで見つけたアラウの《幻想即興曲》。
《幻想即興曲》を聴いたのは数年ぶり。子供の頃にこの曲を弾きたくて、一生懸命ピアノの練習をしたのに、今ではあまりにポピュラーすぎて俗っぽい感じがするせいか、今ではほとんど聴かなくなってしまった。

そういえば、ほとんど聴いていなかったアラウのCDがあったなあ...とラックから探し出して聴いてみると、これがとっても新鮮。
こんなに良い曲だったっけ?と思い直してしまったのは、長い間聴かなかったから...というよりも、アラウが弾く《幻想即興曲》だからに違いない。

即興曲集は1980年、アラウが77歳の時の録音。指回りもそれほど俊敏ではないし、スラスラと流麗なパッセージワークとは言い難い。でも、(あまり好きではない)普通のショパン演奏とは違っているところが私にはとっても魅力的。
アラウは、通常使われているフォンタナ版の楽譜ではなく、録音時にはほとんど知られていなかった”ルービンシュタイン版”(1962年にルービンシュタインが発見・出版したショパン自筆資料)で弾いている。
(「80歳近くなって新しい楽譜に取り組もうとする精神は賞賛に値すると思います。」と<音楽図鑑CLASSIC>に書かれていた。本当に同感)

アラウの演奏は、音が綺麗に並んだ華やかなショパンではなくて、ドイツ音楽風(とでも言えば良いのか)。
華奢な繊細さは全くなく、やや遅めのテンポでゴツゴツとした(ときにマルカート気味の)タッチが骨太で重みがあり、独特のコクがある。
主題部の終わりにはたっぷりリタルダンドして強いアクセントをつけたり、旋律を歌わせるときは、はっきりと声に出して語りかけてくるように大きな抑揚で雄弁だったり。太筆書きのような力強さ。
中間部は訥々とした語り口が大らかで包み込むような温もりがあるし、冒頭主題も最後の再現部も意外なくらいにパッショネイト。
アラウの《幻想即興曲》を聴いていると、内面の感情が自然に湧き出ているような”人間的”な息遣いを感じてくる。
そういえば、好きとは言えないショパンの曲でも、アラウが弾く《バラード》《スケルツォ》《ピアノ協奏曲》は、昔からずっと好きだった。やっぱりアラウのショパンとは相性が良いらしい。

Claudio Arrau - Chopin Fantasie Impromptu opus 66

アラウが弾いているルービンシュタイン版は、耳で聴いているだけでも、昔練習で弾いていた曲の記憶とところどころ音が違っている。
普通使われているフォンタナ版を見ながら聴くと、明らかにすぐわかる違いは、
- 第25小節:右手第1音は16分休符ではなく、G#が聴こえる。
- 第35小節:左手の和音は3拍目ではなくて、2拍目に入る。
- 第36小節:4拍目に左手の和音が追加されている。
- 第40小節:4拍目に左手オクターブが入っている。
他にも細かいところで、音価やリズムが違っていたり、和音が重音になっているのでは?と思うようなところなど、違う点はいろいろ。
ルービンシュタイン版の楽譜を見れば違いがはっきりわかるのだけど...。(ウイーン原典版(音楽之友社刊)の付録に、”「幻想即興曲」(遺作)初校”として、ルービンシュタインが発見した自筆資料がついている)

ルービンシュタインの弾く《幻想即興曲》。真珠の粒のように鍵盤上を転がる柔らかいタッチのレガートが軽やかで儚くて瀟洒な雰囲気。ホロヴィッツとユンディ・リも聴いてみたけれど、やっぱりアラウとは随分違う。
Chopin - Fantaisie Impromptu, Op. 66 (Rubinstein)

画面上に表示されている楽譜は、ルービンシュタイン版ではなくて、フォンタナ版。楽譜を見ながら聴けば、ルービンシュタインがフォンタナ版で弾いていないのが明らかにわかる。


アラウのショパンBOX。Philipsに録音したピアノソロとピアノ協奏曲を収録。
Claudio Arrau plays ChopinClaudio Arrau plays Chopin
(2012/09/25)
Claudio Arrau

試聴する(別盤にリンク)

このほかに、アラウのEMI録音BOX 『Icon: Claudio Arrau』にもショパン録音がいくつか。50歳代に録音したピアノ・ソナタ第3番(1960年)、練習曲全曲(1956年)など。
クレンペラー指揮で弾いたピアノ協奏曲第1番のライブ録音(1957年)は、ベートーヴェンかブラームスのコンチェルトのような骨太で力強いタッチの演奏が面白い。


【参考サイト】ショパン/即興曲集のCDレビュー
<ショピニストへの道~ショパンを極めよう~> ショパン・即興曲 CD聴き比べ
<音楽図鑑CLASSIC> ショパン即興曲 CD聴きくらべ

tag : ショパン アラウ

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好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

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