ゼルキン ~ ベートーヴェン/幻想曲 Op.77 

2012, 10. 03 (Wed) 18:00

ベートーヴェンは、ピアノ・ソナタや変奏曲以外にバガテルなどのピアノ小品を数多く書いている。
ブッフビンダーが若い頃に録音したベートーヴェンのピアノ小品集のCDを試聴していたら、冒頭の《幻想曲ロ長調 Op.77》がとっても面白い。
1809年の作品。この年は、《テレーゼ》や《告別》など第24-26番のソナタを書いている。
録音も演奏も聴いた覚えがない曲だったのでYoutubeを探してみると、私が知っているピアニストで見つけた音源はフィッシャー、ゼルキン、チアーニ。他に、ブレンデルやヤンドーなども録音しているらしい。

ゼルキンが録音していた? 調べてみると、《ディアベリ変奏曲》のスタジオ録音の輸入盤にカップリングされていた。このCDは持っているけれど、《幻想曲》も入っていたのは全然覚えていなかった。

Rudolf Serkin plays Beethoven Fantasy Op. 77


”幻想曲”にしては、旋律自体はあまり幻想的ではないけれど、冒頭のallegro右手から左手へと引き継がれる下降スケールは奇想天外な感じ。 
(これと似て、それまでの雰囲気を一掃するようなスケールが突如登場する曲があったはず...。記憶をたどって録音を聴いてみたら、プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番第4楽章のコーダに入るところだった。)
このスケールに続いて現われるadagioの旋律は、同じくベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番第2楽章の主題の断片のよう。
他の旋律も、どこかで聴いたことがあるようなベートーヴェンらしい旋律がたくさん。

冒頭の下降スケールの使い方が面白い。冒頭では意表をつくように劇的に現われ、別の旋律が演奏されている途中に、その流れを断ち切るように突如挿入されていることもあれば、変形されて伴奏に組み込まれ主題旋律と絡み合っていることもある。

他にも、練習曲のように片手やユニゾンのアルベジオが続いたり、prestoadagioが突然交代したり、疾風怒濤の如く激情的な曲想になったり、緩急・明暗の変化が急激。
旋律は断片的なものが多く、歌謡性があまり強くない指の練習みたいな旋律から、叙情性が強い旋律までいろいろ。
adagioで提示される単純な音型が、急速部分で様々に変形されていき、タッチとソノリティ、スピード感の変化も目まぐるしい。ソノリティ自体は時々かなりファンタスティック。
音楽的な実験でもしているのかな?と思えてくる。

中盤のAllegrettoになると、変奏曲風に展開される輝きのある堂々とした曲想がベートーヴェンらしい。
ここには冒頭の下降スケールの音型がリズムや旋律の長さを変え、上行下行しつつ伴奏部分に組み込まれているけれど、これが意外と違和感がない。

個々の旋律はかっちりとした構成感があっても、違ったタイプの音型と曲想の旋律がコラージュのように現われては消えていくので、曲全体としては統一感があるようで、無いような...。”幻想的”といえばそうかも。


《幻想曲》を収録しているゼルキンのCD。今は廃盤になっているらしい。
Diabelli Variations Bagatelles Op.119Diabelli Variations Bagatelles Op.119
(2003/09/01)
Rudolf Serkin

試聴する(仏amazon)



ブッフギンダーのベートーヴェン/ピアノ小品集(TELDEC)には、超有名な《エリーゼのために》、元々はワルトシュタインソナタの緩徐楽章として作曲された《アンダンテ・フィヴォリ》から、キーシンやソコロフが録音していた《カプリッチョ「失われた小銭への怒り」》やあまり知られていない《2つのロンド》《ポロネーズ》《アレグレット》なども収録。
原盤のCDは廃盤になっているが、最近、再リリースされた旧盤の『ピアノ・ソナタ&変奏曲&バガテル全集』にも収録されている。
小品集の曲は、英国amazonでMP3ダウンロードの試聴ファイルあり。

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2 Comments

ミッチ  

幻想曲

こんにちは。

ベートーヴェンの幻想曲初めて聴きました。ご紹介ありがとうございます。モーツァルト、ベートーヴェン、ショパンは各々面白い幻想曲を書いてますね。幻想曲というと曲想が割と自由になるのでしょうか。

前々からいつか買おうと思っていたCDでジャンルカ・カシオーリのデビューアルバムがあるのですが、そのCDにもこの曲が入っているみたいです。

ブッフビンダーといえば、いつも探しているCDでベートーヴェンじゃない方のディアベッリ変奏曲があるのですが、なかなか再版されません・・・。中古だとプレミア価格になってしまっていて、なかなか手が出ないんです。

2012/10/04 (Thu) 17:06 | REPLY |   

yoshimi  

ディアベリ変奏曲集といえば

ミッチ様、こんばんは。

ベートーヴェンの幻想曲は面白い曲でした。(何度も聴きたい...とまでは思いませんでしたが)
聴いていると、どことなくベートーヴェンにからかわれているような気がしないでもありません。
時代によっても違うでしょうが、「幻想曲」となると形式の自由度は高くなるのだと思います。

そういえば、シューマンの幻想曲も有名ですね。
シューマンのCDは買わないのですが、他の作曲家の作品とカップリングされることが多いので、幻想曲だけは10種類くらい持ってます。

カシオーリは何かのCDを試聴したことがありますが、個性的な感じはしました。そういう意味では、選曲の方も人とは違うところがあるかもしれませんね。

ブッヒビンダーのディアベリ変奏曲集なら、ご存知だと思いますが、日本のitunestore、それにNAXOS系のClassicsOnlineでダウンロードできますので、音質に拘らなければ、どんな曲かぐらいはわかります。
CDの方はUltima盤で一度再版されているようなので、さらに再版盤がでるのは、マイナーなCDなので難しそうです。

ちょうど今、Yahooオークションに1,850円(即決)で出てますが、廃盤なので、このくらいの値付けにはなるのでしょうね。
http://page9.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/k141862011

2012/10/04 (Thu) 23:05 | EDIT | REPLY |   

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