2012_10
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(Sat)09:00

ミハイル・ルディ ~ シマノフスキ/仮面劇(マスク) 

シマノフスキの作風は、時代によって変遷し、大きく3期に分けられている。
初期の第1期はショパン・スクリャービンなど(後期)ロマン派の影響が強く、第2期は印象主義・神秘主義的色彩が濃く、第3期はさらに民謡の素材を取り入れた民族色が加わる。

シマノフスキのピアノ曲《メトープ》は第2期の作品で、《Maski/仮面劇(マスク)Op.34》も同じ。
《仮面劇(マスク)》3曲の組曲形式で、それぞれ「シェエラザード」「道化のタントリス」「ドン・ファンのセレナード」という標題がついている。

この曲はアンデルジェフスキとルディが録音している。
ルディのシマノフスキは、クリスタルのような輝きと艶やかさで煌くような音色がとても綺麗。
アンデルジェフスキよりも、音の線がやや太く濃密な叙情感が篭もっていて、色彩感もより強い。
メリハリのあるディナーミクと、シャープなリズムで、緩急・静動のコントラストも明瞭で、その間を移行するときの音楽の流れが自然。

アンデルジェフスキが透明感がある水彩画だとすれば、ルディの方はカラフルで濃厚な色合いの油絵。
ルディの《メトーブ》は和声の響きがゴージャスすぎて、アンデルジェフスキの方が神秘的な雰囲気が強い。
逆に、《仮面劇》は絵画のような描写力で叙情感も濃厚なので、《メトープ》よりも曲想に合っている気がする。
アンデルジェフスキは、音自体で完結した世界。物語性が少なく、複数の旋律線のクリアな動き、音の色彩感、ソノリティの多彩さで構築されたような抽象的なものを感じる。こういう《仮面劇》は今まで聴いたことがない。



EMI盤のシマノフスキ作品集。ルディのピアノソロ録音と、ヘルシャー&ベロフによるヴァイオリンとピアノのための曲集を収録。
ルディのソロアルバムは廃盤だし、この2枚組廉価盤には、有名な《神話》が収録されている。
Piano Works / Works for Violin & PianoPiano Works / Works for Violin & Piano
(2005/08/30)
Szymanowski、Hoelscher 他

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ルディのピアノソロアルバム。(廃盤)
Szymanowski;Piano WorksSzymanowski;Piano Works
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Mikhail Rudy

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Maski/仮面劇(マスク)Op.34

シマノフスキのピアノ・ソナタは、”オカルティズムのないスクリャービン風”な気がするけれど、《メトーブ》や《仮面劇》は”神秘的なドビュッシー風”。
《仮面劇》は、《メトープ》よりも神秘的な幻想性はやや薄くなり、劇半音楽のように演劇のシーンが浮かんできそうな描写的なタッチ。
<ハインの好きなクラシック>の作品解説がとても詳しい。楽譜を見ながら聴けば、もっと面白く聴けそう。

第1曲:Shéhérazade/シェエラザーデ(シェエラザード)
『シェエラザード(シェヘラザード)』といえば、”シェエラザード”は、アラビアの代表的な説話文学「アラビアンナイト(千夜一夜物語)」に登場する女性。
女性不信に陥ったアラビア国王シャリアール王は、若い女性に夜伽をさせては一夜限りで処刑していた。大臣の娘で才色兼備の聡明な女性シェエラザードは、自ら進んで”1001夜”に渡って面白い話を語り続けて、王もとうとう改心し、シェエラザードは王妃となった。
シェエラザードが語った有名なお話というと、「アラジンと魔法のランプ」、「アリババと40人の盗賊」、「シンドバッドの冒険」。子供の頃に読んだけれど、すっかり忘れてしまっていた。
アラビアンナイトにまつわるクラシック曲では、リムスキー・コルサコフの交響組曲《シェエラザード》が有名。

冒頭は、アラビアンナイトの始まりを告げるようなプロローグ風。
《メトーブ》の「セイレーンの島」のように、シマノフスキらしい神秘的で幻想的な和声と旋律。
続いて、シェエラザードが物語りを語り始めたかのように曲想が変わり、劇伴音楽のような描写的で動的なパッセージが次から次へと登場。

アンデルジェフスキやルディの音源がなかったので、これはアラウ晩年の弟子だったギャリック・オールソンの演奏。
(シマノフスキを聴くなら、やっぱりアンデルジェフスキかルディの録音の方が良いと思う)
Karol Szymanowski - Masques, Op. 34 [Garrick Ohlsson] (1/2)
Movement I: Shéhérazade



第2曲:Tantris le bouffon/道化のタントリス
冒頭から、”道化”らしく軽妙な行進曲風のリズム。サーカスの曲芸を見ているような旋律も出てくるけれど、シマノフスキの和声のもつ諧謔さは独特。途中で優雅なワルツが出てきたりする。
ドビュッシーの《風変わりなラヴィーヌ将軍》も滑稽な雰囲気の曲だったけれど、和声的にはなじみやすくて軽妙さがぴったり。
シマノフスキの独特の和声には、諧謔さはあっても、(ドビュッシーにはない)アラビアンナイト的な異国情緒がある。

第3曲:Sérénade de Don Juan
”ドンファン”の冒頭は、派手な和音のトレモロ。色男で軽佻浮薄?な素材のせいか、リズムのバリエーションが豊富。
《仮面劇》の3曲は、それぞれ似たような断片的な旋律や和声が出てくるので、部分的に聴くとどの曲なのかはっきりとはわからなくなってくる。
たまにドビュッシーの前奏曲で出てくるようなリズムや旋律が現れてくる。
シマノフスキに比べて、ドビュッシーは陽性というか、和声に透明感があり、神秘性・粘着性が薄くて、曲自体に開放感(”健康さ”)がある。
それに、断片的な旋律がコラージュのように現れて場面が次々に転換していくようなシマノフスキをずっと聴いていると、ときにつかみどころがない気がするドビュッシーの曲が、はるかにわかりやすく思えてくる。

Karol Szymanowski - Masques, Op. 34 [Garrick Ohlsson] (2/2)
Tantris le bouffon、(5:43~)Sérénade de Don Juan

タグ:シマノフスキ ルディ

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2 Comments

ミッチ  

アンデルジェフスキ

昔のことなのでうろ覚えですが、確かアンデルジェフスキはシマノフスキのピアノ曲全集を録音したいとインタビューで言っていたと思います。今後このプロジェクトが続いて完成するのかどうか、それともこの抜粋で終わりなのか気になるところです。

どういう状況なのかわかりませんが、もしレコード会社が許可を出してないということなら、レコード会社はなるべくアーティストの希望を聞いて欲しいです。売上という観点から言うと、マイナーな作曲家の作品をCDでリリースするのは勇気がいるのでしょうけど。

2012/10/31 (Wed) 17:54 | REPLY |   

yoshimi  

シマノフスキ全集

ミッチ様、こんにちは。

アンデルジェフスキのシマノフスキ全集が実現すれば、素晴らしいものになることは間違いないですね!

最初のシマノフスキ録音は、2004年にVirginから出した録音です。
未録音の曲は、さらに有名ではない曲が多いので、続編を録音する可能性は低いのではないかと思います。
でも、ブレハッチのように、ドビュッシーなど名曲とのカップリングで、一部の曲を録音することはありえそうです。
アンデルジェフスキは、最近、新譜自体をリリースしていないので、全集録音はかなり難しいでしょうね。

メジャーレーベルは、人気のある演奏家の新録優先で、中堅演奏家の録音機会は少なくなっているようですね。
マイナーレーベルなら、レアな曲でも録音しているピアニストは多いですし、最近はそちらへ移籍する人も時々見かけます。(ムストネンが、DECCAからONDINEへ移ったのは正解でした)
どこのレーベルと契約するかというのは、以前よりも重要で選択も難しくなっているようにも思います。
それに、マイナーな作曲家のCDの売れ行きが悪いのは聴く人が少ないということでもありますから、レコード会社だけの問題ではないですね。

2012/10/31 (Wed) 18:29 | EDIT | REPLY |   

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