秋の夜長に聴きたい曲 (1) 

2012, 10. 27 (Sat) 18:00

すっかり夜も冷え込んできたので、寒く静かな夜には、暖かい紅茶やココアを飲みながら音楽を聴きたくなる。
こういう時に聴く音楽はだいたい決まっている。今回は短調の曲をいくつか。

秋と言えばブラームス。ブラームスといえば、最初に選ぶのも、最後に戻っていくのもカッチェン。
ルバートが多く起伏も大小とりまぜて表情豊かなのに、感傷的・情緒的になることなく、自然に湧き出てくるような叙情感と寄り添うような親密感がカッチェンらしいところ。

ブラームス晩年のピアノ作品集《3つの間奏曲Op.117 第2番》
Op.117は、ブラームスの小品集の中でも最も陰翳が濃く、この第2番は第3番とあわせてとりわけ寂寥感が強い。
主題部は、右手が下降するアルペジオを繰り返し、そのなかからくっきりと浮かび上がってくる”ため息音型”(2音からなる下降音型)の旋律がもの哀しいし、中間部も陰鬱な気分。時に一瞬明るさや激情のほとばしりを見せつつも、浮揚することなく最後は深く沈みこんで行く。

Julius Katchen''Brahms three intermezzos op.117''. intermezzo 2



同じくブラームスの《4つの小品Op.119 第1番》
この曲も主題の最初の部分は”ため息音型”の入った下降型のアルペジオ。
Adagioなので、かなり遅いテンポで一音一音を長めに、鬱々と淋しげに弾く人が多い。
カッチェンのテンポは、Adagioにしてはちょっと速い。悲愴感と陰鬱な雰囲気に耽溺することなく、それでいて、しっとりとした情感が音の間から溺れ落ちてくるような叙情感が何とも言えません。
※演奏時間は、3分半ば~4分台前半が多い。カッチェン2:50,ルプー3:17,レーゼル3:27,アックス4:16,ゼルキン4:48。グールドはかなり速く2:26。

続く第2番も短調の曲。第1番で抑えていた感情がほとばしり出るようなパッションと、中間部(ブラームスらしい子守歌風の旋律)の束の間の安らかさに、切々とした情感が篭もっている。特に好きなのは4:57~5:07で弾かれる旋律。

Brahms - Julius Katchen - Klavierstücke op 119 (全4曲)




ビル・エヴァンスの最後のスタジオ録音となったアルバム『We Will Meet Again』から、標題曲”We Will Meet Again”
自ら命を絶った兄へ捧げたレクイエム。トリオバージョンもあるけれど、この曲はピアノソロで聴きたい。

Bill Evans - We Will Meet Again




リッチー・バイラークがECM時代に録音したピアノソロ・アルバムの一曲”Leaving”。。
鋭く研ぎ澄まされた叙情感は冷たい清流のように美しく、全編を凛として張り詰めた緊張感が流れている。
短調の旋律の哀感のなかに、透き通るような明るさがさしこみ、旅立ちのように爽やか。

Leaving Richie Bairach



<関連記事>
カッチェン《ブラームス:ピアノ作品全集》より (7)3つの間奏曲 Op.117
カッチェン《ブラームス:ピアノ作品全集》より (9)4つの小品 Op.119
ビル・エヴァンス 『You Must Believe in Spring』,『I Will Say Goodbye』


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2 Comments

ポンコツスクーター  

秋の夜にふさわしい

こんにちは。
ブラームスの後期のピアノ曲はあまりよく知らないのですが、この間奏曲はとてもいいですね。117の2番は独特の寂寥感があってなんだか懐かしい。119はロマンが濃厚に漂います。これは一家に一枚持っておかんと。

2012/10/28 (Sun) 08:13 | EDIT | REPLY |   

yoshimi  

ブラームス、とてもおすすめです

ポンコツスクーター様、こんにちは。

ブラームスの後期小品集は味わい深くてとても素敵な曲集です。ぜひCDでじっくりお聴きくださいね!

今回は短調ばかりですが、特に人気があるのは長調のOp.118-2、Op.117-1です。私はOp.118-5も好きです。(これも近々記事にする予定です)

Op.118-2(レーゼル)
http://www.youtube.com/watch?v=tj4_tVL9yz0

Op.117-1(グールド)
http://www.youtube.com/watch?NR=1&feature=fvwp&v=YD8i0jUmbF8


グールドがお好きなら、ブラームス作品集が出ています。
バッハやベートーヴェン録音と比べると、グールド特有のクセが少なくて聴きやすく、とても人気のある録音です。
抜粋録音なので、Op.119は第1番だけですが、初期の「4つのバラード」や「2つのラプソディ」も入ってます。
いくつか盤がありますが、下記が最新版で収録曲数が一番多いです。
普通はCD1枚なのですが、これは2枚組。最後の(ALTERNATE VERSION) はボーナストラックらしく、この音源は初めて見ました。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0085MK2GW/fc2blog06-22/ref=nosim/

レーゼルの全集は、昔から海外・日本の両方で人気があります。
晩年のケンプの録音も、若手ピアニストにはない味わいがあって良いですね。
グリモーは”母性的なブラームス”という印象があり、重層感のある独特のソノリティが面白いです。

2012/10/28 (Sun) 10:06 | EDIT | REPLY |   

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