アルフレッド・パール ~ シマノフスキ/交響曲第4番 ”協奏交響曲”

アルフレッド・パールのディスコグラフィのなかで、一番珍しいカップリングのアルバムがグリーグとシマノフスキのピアノ協奏曲。
グリーグとくれば、カップリングはたいていシューマンのピアノ協奏曲。
なぜかあまり有名ではないシマノフスキのコンチェルトを選曲したところが、月並みでなくて良い。

パールのCDは、1996年1~2月にかけて録音したArteNova盤。
グリーグのピアノ協奏曲は似たような旋律が延々と繰り返されるので、好きなのは速いテンポで、緩急のメリハリがあって、力感・量感・スピード感のあるカッチェンの演奏。
パールのグリーグはゆったりしたテンポ(これが普通なのかも)。音響的に美しく、素直でクセがなく、明朗で潤いのある瑞々しさのあるところが、パールらしい演奏。
第1楽章はカッチェンよりも2分近く演奏時間が長くて(14分弱)、こうテンポが遅いと集中力が続かない。
緩徐的な曲を聴くのはあまり得意ではないので、速いテンポの第3楽章が一番聴きやすい。(それでもカッチェンより1分以上も演奏時間が長い)

シマノフスキのピアノ協奏曲は、実際の曲名は『交響曲第4番Op.60』。ピアノソロが協奏曲並みに組み込まれていて『協奏交響曲』という副題がついている。
この曲は録音があまりないかも...と思って探してみると意外に多い。
なぜかアンスネスが1996年に、ハワード・シェリーが1995年に録音している。その頃、イギリスでは、この交響曲を録音するのが流行っていたんだろうか?
他には、ポーランド出身でシマノフスキがこの曲を献呈したルービンシュタイン、ポーランド人の指揮者・ピアニスト・オケによるNAXOS盤など、録音がいくつか。

元々はグリーグを聴くのが目的だったけれど、CDを買った甲斐があったと思えたのは、シマノフスキ。
フォーマットが交響曲のせいか、ピアノ独奏曲の《メトープ》や《仮面劇》とは違って、古典的な構成感があり、曲の展開はずっとわかりやすい。
試聴した時は、あまりピンとこなかったけれど(独奏曲と違って協奏曲は試聴では判断しにくいので)、CDで全楽章聴いてみると、思いがけない面白さ。
色彩感豊かな音響と、現代的な叙情感・ファンタジー・舞曲という異なる曲想が盛り込まれ、難解なところは全くなくて、とっても魅力的。
シマノフスキのピアノ独奏曲よりも好きなくらいに、私の好みにぴったり。今まで聴いた現代のピアノ協奏曲のなかでも、好きな順番から言えばかなり上の方になる。


Music of Grieg & SzymanowskiMusic of Grieg & Szymanowski
(2007/04/10)
Perl (Piano), Leaper(Condutor),Gran Canaria Philharmonic Orchestra

試聴する(allmusic.com)
録音データでは、ピアノはSteinway。使用楽譜はグリーグ"Edition Eulenburg"、シマノフスキ"Editions Max Eschig。

交響曲第4番「協奏交響曲」Op.60(1932年) [作品解説(Wikipedia)]

ピティナの解説によると、シマノフスキの作風は3期に分けられていて
 -第一期(~1908年頃。ベルリン時代)は、ショパン、ショパン、ブラームス、レーガー、リヒャルト・シュトラウス等の中後期ロマン派風の作風
 -第二期は、地中海地方やパリ、ロンドンへ旅行した経験から、オリエンタリズムとストラヴィンスキーやドビュッシー等の影響が混在した個性的な作風。交響曲第3番「夜の歌」が代表作。
 -第三期(1918年ポーランド独立後帰郷)は、民俗音楽の研究に傾倒した影響が顕著

この交響曲第4番は第3期の作品。


Szymanowski - Symphony No. 4 "Symphonie concertante", Op. 60 (1932)
Karol Stryja(Condutor),Polish State Philharmonic Orchestra,Katowic / Tadeusz Żmudziński(Piano).


第1楽章 Moderato - tempo commodo
聴き始めてすぐに、この曲はどこかで聴いたようなデジャヴを感じる。
作品解説を調べてみると、バルトークのピアノ協奏曲第3番との関連性が書かれていた。
本当にその通り。旋律、和声、フレージングや雰囲気がバルトークの最後のコンチェルトの第1楽章によく似ている。
バルトークよりも、音響的に厚みがあり色彩感もカラフルで、少し不協和的な調性感があるけれど、それにしてもバルトークのコンチェルトと時々錯覚しそうになる。
両方とも、主題の旋律や和声が、”好奇心に満ちた眼差し”で、目の前に広がった新しい世界を見ているような感覚。
バルトークのピアノ協奏曲のなかで第3番が一番好きなので、当然ながら、シマノフスキのこのコンチェルトも好きにならないわけがない。

シマノフスキの独奏曲(中期~晩年)に比べて、旋律が明瞭で叙情的。難解さは全くなく、全体に軽妙な躍動感と清々しさに溢れた叙情美しい曲。
ピアノパートがくっきりと浮き上がってかなり目立っているし、華やかなカデンツァも入っているので、”協奏交響曲”というよりは、現代的なピアノ協奏曲。


第2楽章 Andante molto sostenuto
バルトーク風の世界から離れて、ファンタスティックな雰囲気に。
神秘的・印象主義的な《メトープ》や《仮面劇》のような神秘性・幻想性ではなく、夢想的。
人間の感情や内面の世界ではなく、人間のいない自然の世界の情景を描いたように描写的。
ひとの気配のない森や湖で、蝶や昆虫が飛び交い植物がざわめき生長していく様子を映像でクローズアップして見ているような感じがする。

第1楽章や第3楽章のように明瞭な主題旋律ではなく、方向性がなく流れにまかせて緩々とたゆたうように、叙情的で美しい旋律が現れては、消えていく。
ピアノパートは、高音のアルペジオやトレモロを弾いて、オケを伴奏している部分が多く、煌きのある澄んだ響きがとても綺麗でファンタスティック。厚みのあるオケの響きに埋没することはないけれど、第1楽章よりは協奏的。

終盤へむかってオケとピアノが掛け合いながら、徐々にクレッシェンドして、壮大な雰囲気に盛り上がってから、再び静寂に。
最後には、第1楽章の主題が弱音で静かに回想されて、カデンツァでピアノのトレモロが音程を変えて何度も現れて、最後はアルペジオで一気に低音部まで下行してエンディング。
それをそのまま受け継ぐように、アタッカで繋がれた第3楽章冒頭で、オケが低音部で演奏し始める。

第3楽章 Allegro non troppo, ma agitato ed ansioso
冒頭は序奏的に、ラヴェルのボレロのような舞曲風の旋律が現れて、クレッシェンドしながら壮大に盛り上がっていく。
この楽章は諧謔でリズミカル。シンプルな音型とリズムが次々と変化して表れ、和音の連打も歯切れ良く、色彩感豊かで音響的にも華やか。
スタッカートの和音のオスティナートが入っている旋律も多いので、スピード感はそれほど強くないけれど、リズムが鋭く、躍動的。
ピアノパートや管楽パートに、滑るように短いグリッサンドやスケールが出てきたり、ピアノがスケール・アルペジオで鍵盤上を波がうねるように何度も上下行したり、音が詰まったパッセージで目まぐるしく動き回るので、遅さや重たさは全く感じさせない。
ラヴェルのピアノ協奏曲(第1楽章)やプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番(第3楽章)とかにちょっと似たところがある。

中間部は緩徐部となり、ピアノが主旋律を弾くところで民謡風の旋律が出てくる。(これがマズルカらしい)
再現部はクライマックスへ向けて、冒頭と同じく、主題の舞曲的なリズムの旋律をベースに、音の密度と色彩感と音量が増し、雪だるまのように膨らんでいき、最後は堂々たるエンディング。
(サーカスの曲芸のような)ちょっとクラクラと回転するような感覚が面白く、ひたひたと前進していく高揚感とスケール感が爽快。

タグ:シマノフスキ パール

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コメント

シマノフスキ

私、シマノフスキすなわち斬新かつ難解イメージであります(苦笑)。
自ら進んで聴こうと思いませんが、ツイメルマンのリサイタルでブラームスが急にシマノフスキに変更になりまして、眉間にしわ寄せて聴かせていただきました。多分ピアノソナタだったと思いますが、失念。

11月にもツイメルマンのオールドビュッシープログラムを聴く予定ですが、またしても恒例の(?)曲目変更がありまして、前半ドビュッシーで後半がシマノフスキとブラームスになりました。

どうもシマノフスキが、ツイメルマンはかなりお好きなようですね。

この交響曲第4番 ”協奏交響曲”を聴いて、これなら聴きやすい!と思いました。ピアノソナタよりもずっと親しみやすいです。斬新で爽快感が残ります。でも長く聴くと、かなり疲れますね(苦笑)。

ちなみにリサイタルでは3 つの前奏曲(「9つの前奏曲 作品1」 より)を弾くそうです。You Tubeで少し探して聴いてみましたが、これは聴きやすくて良さそうですね。第1期のロマン派の頃のものなのかな?

http://www.youtube.com/watch?v=PWHA2NmuRw4&feature=related

シマノフスキのピアノ作品

Tea316さん、こんにちは。

シマノフスキは作曲年代によって、作風がかなり違います。
前奏曲Op.1など初期の作品は、ショパン&初期スクリャービン風なので、とてもロマンティックですね。
初期で一番有名なのは、「4つのエチュードOp.4」の第3番です。
前奏曲よりも凝った叙情豊かな名曲ですし、このエチュード集はどの曲も聴きやすいです。(もうすぐ記事にする予定です)
http://www.youtube.com/watch?v=iU36bgao-P0
第3番は5:20~。第1番も綺麗な曲です。

ピアノ・ソナタは、初期の第1番Op.8なら叙情美しくて、聴きやすいですよ。
ブレハッチが新譜に録音してますが、とても評判が良いですし、実際、良い演奏だと思います。
ピアノ・ソナタ第2番と(特に)第3番も私は好きですが、聴き慣れないとちょっと難しく感じるかもしれませんね。

「協奏交響曲」は、バルトーク、ラヴェル、プロコフィエフとかを聴いたことがあれば馴染みやすいと思います。
3人の作風をミックスしたようなとこはとっても贅沢。一度聴いただけで、お腹いっぱいになります。

ポーランド出身のピアニストでシマノフスキを弾いている人は、ツィメルマンに限らず多いですね。シマノフスキはポーランドではとても有名なのでしょう。
アンデルジェフスキとブレハッチ、ルービンシュタインなどが録音してますが、特にアンデルジェフスキは素晴らしいと思います。(ツィメルマンは、若い頃に録音した《神話》のCDしか聴いたことがありませんが)
ツィメルマンのシマノフスキ、リサイタルの感想をまた教えてくださいね。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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