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(Sun)13:00

志賀 勝栄『ホームベーカリーでつくるシニフィアン シニフィエの高加水パン&ドイツパン』 

ホームベーカリーのレシピブックは、少なくとも20冊以上は見てきたけれど、最もパンづくりのプロらしいレシピが載っているのは、「シニフィアン シニフィエ」の志賀勝栄氏による”高加水パン&ドイツパン”のレシピブック。

ホームベーカリーでつくるシニフィアン シニフィエの高加水パン&ドイツパンホームベーカリーでつくるシニフィアン シニフィエの高加水パン&ドイツパン
(2010/11/23)
志賀 勝栄

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毎日コミュニケーションズのニュースリリース

”シニフィアンとシニフィエ”(意味するもの・意味されるもの)という言葉で連想するのは、大学時代にかじったフランスの現代思想。言語学者ソシュールが使った言語学の用語で、当時流行っていた現代フランスの哲学書などでよく見かけた。
パンの世界で”シニフィアン シニフィエ”というと、東京の世田谷区三軒茶屋にあるとても有名なブーランジェリーのこと。

「シニフィアン シニフィエ」:公式ホームページブログパン・メニュー

シニフィアン・シニフィエに関するブログ「パンラボ」の記事
シニフィアン・シニフィエ(2010.12.29)
職人インタビュー003. シニフィアン・シニフィエの志賀勝栄さん(2011.02.07)
シニフィアン・シニフィエ(三軒茶屋)(2011.02.24)


『ホームベーカリーでつくるシニフィアン シニフィエの高加水パン&ドイツパン』のレシピは、書店の本棚に並んでいる(大半の)ホームベーカリーレシピ集とは全く違う。

小麦粉の種類が多く、全てのレシピで使われている小麦粉の銘柄は20種類。
1つのパンに複数の銘柄の小麦粉を使う。だいたい3種類以上、それも最強力粉、強力粉、準強力粉、ライ麦粉、全粒粉のどれかをブレンドしている。国産小麦粉が指定されていることも多い。
チャバタは「キタノカオリ」のみ使用。


”エピ”という中力粉が指定されているレシピがあり、これは輸入小麦だと思い込んでいたら国産小麦だった。
中力粉というと、うどんを捏ねるときに「たけ」(日本製粉)というのを使ったことがある。
パンに中力粉を使うレシピは珍しいので、これは一度使ってみたい。

水分には、普通の冷水(や牛乳)に加えて、硬水(コントレックス)を混ぜているレシピがほとんど。
欧州でパン作りに使われている水は硬水。日本の水は軟水。水質が変わるとパンの出来栄えが随分変わるらしい。

モルト(エキス、または、パウダー)は、フランスパン用のレシピで時々見かける。
このレシピ集では、フランスパン以外のパン(ハード系、ハード系以外の両方)にも、モルトエキスを使用。(モルトを使わないレシピも数件ある)

ドイツパンの場合は、本格的にサワー種使用。

本に載っているどのレシピも計量が細かく、粉は1グラム単位、水分やモルトエキスは0.1g単位。
コンマ以下の重さを計量できるデジタルキッチンスケールは、普通の料理を作るのには必要ないし、特殊仕様で高い。持っている人は少ないはず。

レシピで作るときの環境条件は、室温28℃、湿度60%。
一般家庭で温度・湿度をコントロールすることは難しい。それに、粉、ドライイーストの状態によっても、出来上がりは左右される。

ホームベーカリーを使えば、出来上がりはともかくとして、簡単に作れるとはいえ、材料を揃える時点で敷居が高いレシピ。
それほど細かい性格ではない私としては、この精密なレシピをそのまま使ってパンを作る気はしないけれど、配合を見るだけでも面白い。
材料さえ揃えれば、配合どおりには作れるので、シンプルな「パンドミ」とかなら、いつか作れそう。


成形レシピで面白いのは、”シニフィアン シニフィエ”でも販売されている「チャバタ」
”シニフィアン・シニフィエ”のショップでは、北海道産強力粉「キタノカオリ」を100%使用したパンが販売されている。このレシピ集でも同様。
「キタノカオリ」はちょうど買ったばかり。加水率100%と限界に近いくらい高いので、この種のパン作りに慣れていないと扱うのが難しそう。
他にも、イタリアパンの「ロゼッタ」とか、焼いてみたいパンがいろいろ。

いつもホームベーカリーにおまかせで作っている”ロデブ”用のフランスパン用準強力粉(リスドオルまたはオーベルジュ)を使い果たしてしまったので、ためしにキタノカオリを使ってみた。
キタノカオリで100%加水の”チャパタ”が作れるなら、”ロデブ”だって大丈夫そう。
ロデブを焼くときの加水率はいつもは80%。キタノカオリは吸水が良くて生地が硬めだったので、90%の加水に変更。
バター等油脂類はいつもどおりゼロ、蜂蜜を少し。ドライイーストも少量にしているので、天然酵母モードで長時間発酵させてから、焼成。
焼き上がりはちょっと白っぽい。加水率が高いので、油脂ゼロなのにふっくら膨らむ。クラムはふわふわしすぎ。しっとり感はある。
準強力粉の場合は、大きな気泡が入ってモチモチ。キタノカオリは気泡があまりなく、もちもち感も強くない。粉の味も薄い感じがする。
水分が多すぎたようなので、加水率を80%に減らして焼いてみると、好みのしっかりした食感になって、正解。
高さはあまり出ない。高加水ならではのしっとり感があって、常温保存でもパサつきにくい。
気泡はやっぱり少ない。もっちり感がフランスパン専用粉よりも少なく、キタノカオリ独特の黄色がかったパンになる。
ロデブはフランスパン専用粉で焼くものと思っていたけれど、キタノカオリでも加水率80%だと充分美味しい。


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モルトエキスと蜂蜜
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ベーカリーショップや市販のフランスパンの成分表示を見るとモルト(それにビタミンC)が添加されている。
ホームベーカリー用のレシピ本だと、砂糖を使っているレシピが多い。
たまに、はちみつを使っているレシピもある。
手捏ね用の本格的なレシピなら、モルトを使っている。

粉末モルトは数十グラムで150円くらいと安い。近所にあるカルディで簡単に手に入る。
問題は0.1g単位で計量しなければならないこと。
モルトエキスの方が計量には多少便利だけれど、ハード系のパンは月に数回焼くだけなので、100gもある市販品は使い切れない。

ハード系のパンにモルトエキスを使う理由を調べてみると、なるほど~と納得。

「モルトエキスmalt extract・粉末モルトmalt flour」(大好き!e-パン工房)
- モルトエキスはマルトース(麦芽糖)と酵素を含有。
- マルトースは発酵の後期(約3時間後)に酵母の重要な栄養素となり発酵を促進させると共に焼き色を付ける重要な働きがある。
- モルトエキスを砂糖1~2%で代用すると、肝心なホイロ段階では生地中には糖がない。(約1時間で1%の糖を酵母が消費するため)

砂糖と麦芽と蜂蜜(さまざまな酵母のパン,2005.3.15/ねこねこ通り)
穀物の甘みとでんぷん分解酵素(さまざまな酵母のパン,2005.7.14/ねこねこ通り)
「非加熱タイプの蜂蜜を使うのは、蜂の唾液中の酵素が小麦中のでんぷんに作用することで一部が麦芽糖に変化し、甘味と風味のあるパンができるから。また発酵力も補える。」ということらしい。
そういえば、ホームベーカリーでロデブを焼くときに、砂糖のかわりに、レシピどおり蜂蜜を入れると、膨らみがよくなっていた。(でも、気のせいかも)
蜂蜜は単なる砂糖の代用品だと思っていたけれど、蜂蜜を使うのはちゃんとした理由があってのことらしい。
蜂蜜がモルトの代用になるんなら、今度はフランスパンに蜂蜜を使ってみよう。

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