ブリテンのピアノ曲 ~ Holiday Diary,Night Piece,Three Character Pieces

来年がメモリアルイヤーにあたるので、久しぶりに聴いたのがブリテンのピアノ独奏曲。
ブリテンといえば、オペラと《戦争レクイエム》が有名なのだろうけど、私が聴いたことがあるのは、管弦楽曲とピアノ協奏曲・独奏曲、歌曲集。
珍しいのは、日本の皇紀2600年奉祝曲として委嘱された『シンフォニア・ダ・レクイエム』。第二次大戦勃発後に書いたせいか、「鎮魂交響曲」というタイトルの如く、祝典用の曲にしてはかなり陰鬱な雰囲気が漂う。

テナーのピアースとの交友関係は有名で、ブリテンがピアノ伴奏をしたピアースが歌った歌曲集も残っている。
ブリテンの伝記的映像と家族や友人・知人などのインタビューを集めたDVD『The Time There Was』もある。(買ったのは良いけれど、英語字幕があると思っていたら、英語のスピーチ部分は字幕がなくて、早口のところはよくわからなかった)
今でも印象に残っているのは、バーンスタインがブリテンの音楽を評した言葉。”創意工夫が凝らされて明るくチャーミングだがそれは表層的なものであって、本当にその奥にあるものを聴きとれば、濃い翳りのようなもの、悲痛感や孤独がもたらす苦難のようなものに気づくはずだ”と言っていた。

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(2006/11/21)
Benjamin 'Britten-Time There Was

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ブリテンのピアノ曲で有名なのは、ピアノ協奏曲と左手のピアノのための《ディバージョンズ》。
ピアノ独奏曲や2台のピアノ曲も数曲残している。
ブリテンのピアノ作品の録音は元々多くはないけれど、特にピアノ独奏曲(と2台のピアノ曲)の録音はほとんどない。
私が知っているまとまった録音といえば、スティーブン・ハフのVirgin(EMI)盤(1990年録音)くらい。
ハフのアルバムには、ピアノソロと2台のピアノ用の作品がほとんんど収録されている。

<ピアノソロ曲>
- Suite "Holiday diary" Op.5 [1934年]
- Three Character Pieces
- 5 Waltzes [1923-25年]
- Sonatina romantica [1940年]
- Moderato & Nocturne (Sonatina Romantica)
- Night piece (Notturno) [1963年]
- Twelve Variations on a Theme

<2台のピアノ曲>
- Two lullabies [1936年]
- Introduction and rondo alla burlesca Op.23-1 [1940年]
- Mazurka elegiaca Op.23-2 [1941年]

<過去記事>
スティーヴン・ハフ~ブリテン/ピアノ作品集『Holiday Diary』

このCDは今は廃盤。ブリテン作品の『コレクターズ・エディション』には収録されている。
Britten: The Collector's EditionBritten: The Collector's Edition
(2008/08/27)
Various

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初めて聴いたブリテンの曲が、このハフのCD。
20年近く前、現代音楽のCDを収集していて、たまたま見つけたもの。
聴き心地の良いアルバムなので寝る前に良く聴いていた
ピアニストの名前が記憶になくて、数年前に聴き直していたときに、このピアニストって上手いなあと思って演奏者が誰なのか確かめると、スティーブン・ハフという全く知らない人だった。
興味を惹かれたので、ハフのディスコグラフィやプロフィールを調べると、実は世界でも有名なピアニスト。それがきっかけで、ハフのCDコレクターになってしまった。
このブリテン作品集を聴いていなければ、知らないままだったか、名前を聞いても興味を持たなかったかも。

ブリテンのピアノソロ曲は、前衛的な現代音楽とは違って調性が安定しているので、やや不協和な音も心地良く聴こえて、ポピュラー音楽並に聴きやすい。
現代的な乾いた感じのするさっぱりした叙情感と和声がスタイリッシュな雰囲気。
醒めた知性を感じさせるクールさとほのかに差し込む翳りのせいか、冷んやりとした質感があり、すっきりとした
シンプルなフォルムに透明感が漂う。
来年はブリテンイヤーなので、ピアノ作品集の新譜も出てくるだろうけど、このハフのアルバムはぜひ再版して欲しいと思う一枚。

                       

水面が波打ち水しぶきが跳ね上がって朝陽できらきらと輝いているような面白いリズム感と色彩感。とっても爽やかな'Early Morning Bathe'。
Britten 'Holiday Diary' movement 1 'Early Morning Bathe' - Alexander Kirk



小船がゆったりと波間に漂っているような'Sailing'。この静寂さと透明感は昼よりも夜のイメージがする。日中なら、澄み切った青空と深碧の海と真白いヨットのような情景。
Britten 'Holiday Diary' movement 2 'Sailing' - Alexander Kirk



'Fun-Fair'は「移動遊園地」。サーカスやパレードを連想させるような躍動的なリズムが楽しい。
Britten 'Holiday Diary' movement 3 'Fun-Fair' - Alexander Kirk



'Sailing'のような静寂さで始まる”Notturno”。同音連打のパッセージが現れてからは、やや不気味な幻想的な雰囲気が漂っている。夜の帳のなかで得体の知れないものが蠢いているような..。
Anthony Goldstone - Benjamin Britten Night Piece - Notturno



どの曲もリズムが面白い。軽妙で洒落た雰囲気の中に翳りが差し込んでいたりするのがブリテンらしい。
Britten Three Character Pieces (piano:Sarah Beth Briggs)


タグ:ブリテン スティーヴン・ハフ

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コメント

ブリテンですね!

こんばんは!
最近すっかりブリテンの歌曲にはまりつつあります。
ピアノ曲は全く聴いたことがありません。
ハフが演奏しているアルバムは、廃盤ですか…それは残念だな。
来年はメモリアルイヤーなので、また再販されると良いな。ぜひ聴いてみたいな。

現代音楽だけど、調性が安定しているから聴きやすいのか…なるほど。

クールでお洒落でスタイリッシュなんだけど、その裏には漆黒の闇があるように感じるところに、私は惹かれるのかも。

'Sailing'と”Notturno”が好きかな。
来年は是非ともブリテンがいっぱい聴けると良いんだけど。
早くもワグナーとヴェルディは、オペラ界で盛り上がっているみたいだけど(笑)。

ブリテンの陰翳

Tea316さん、こんばんは。

ブリテンは、歌曲の方がピアノ作品よりも有名でしょうね。
ハフのアルバムは、たぶん再販されるのではないかと期待しています。
新たに録音するよりコストが掛からないですし、海外で人気のあるハフの演奏ならCDを買う人も結構多いでしょう。
イギリスのレーベル(Chandosとか)なら、新譜を出すかもしれませんね。

ブリテンのプロフィールを読んでいると、20歳代の時に両親が相次いで亡くなり、その上友人も飛行機事故で失っています。
この経験が、陰翳や虚無的な雰囲気(”漆黒の闇”ですね)が作品のなかに漂う理由の一つではないかと思っています。
「シンフォニア・ダ・レクイエム」は、その亡き両親の思い出に捧げた曲とも言われてます。

私も'Sailing'と”Nocturno”の静寂さは好きです。
聴いていると精神的に落ち着くので、私にはヒーリング的な鎮静効果があるみたいです。(ちょっと暗いですけどね)
ブリテンは12音技法などの前衛的な作曲技法は使っていないように思いますが、曲によっては無調的な部分もあるようです。

ブリテンのオペラは有名ですから、どこかの歌劇団が上演するでしょうが、代表作の「ピーター・グライムズ」や合唱曲の「戦争レクイエム」は、陽性の音楽とは言い難いですね。あまり一般受けしなさそうです。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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