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ボストリッジ ~ ブリテン歌曲集(赤いオウム、ジョンダンによる聖なるソネット、ほか)
随分前に聴いたアルバムなのに、記事をアップロードするのをすっかり忘れていたボストリッジの『ブリテン歌曲集』。
有名な《ジョンダンによる聖なるソネット》のほか、あまり知られていない歌曲集がいろいろ収録されている。

Red Cockatoo. Holy Sonnets. SongsRed Cockatoo. Holy Sonnets. Songs
(1995/11/09)
B. Britten

試聴する(hyperionサイト)


プレイフォード編『Harmonia Sacra』
1.Pelham Humfreys: Lord! I Have Sinned
2.Pelham Humfreys: Hymn To God The Father
3.William Croft: A Hymn On Divine Musick

この3曲は、英国の楽譜商プレイフォードが1714年に出版した歌曲集「Harmonia Sacra」※から、HumfreyとCroftの作品を編曲したもの。
ブリテンの歌曲集「Five Songs from Harmonia Sacra, High Voice, Harp or Piano」に収録されている。
ブリテンが病気でピアノ伴奏ができなくなったため、テノール歌手のピアースとハープ奏者オシアン・エリスのために、元々は原曲にハープ伴奏を付けており、最終的にはピアノ伴奏も加えたらしい。

この曲はいずれも17世紀に作曲された聖歌だからか、よく似た旋律と雰囲気。それに、昔よく聴いていたダウランドなどの17世紀のリュート歌曲集を思い出したのは、同時代の音楽なので相通じるものがあるからでしょう。

珍しいハープ伴奏版のCDがAtma Classiqueからリリースされている。ピアノとは違うハープの響きがとても綺麗。
試聴ファイルはこちら


※「Harmonia Sacra」に収録されている作曲家は、Henry Purcell, Matthew Locke, John Blow, Pelham Humphryes, John Church, John Weldon, Robert King, Daniel Purcell, Jeremiah Clarke, Gratiani, Giacomo Carissimi, William Croft。


『The Way To The Tomb...』より
ドナルド・ダンカンの仮面劇&反仮面劇”This Way to the Tomb/墓の道”のための機会音楽(1945年)から抜粋した3曲。この劇のために、独唱、アカペラ合唱、歌とピアノ・パーカッションの重唱のためのブギウギを書いている。

1.Evening
冒頭の旋律は、夕方の黄昏た雰囲気というよりは、何かの幕開けのような雰囲気がする。

2.Morning
”Morning”というタイトルの曲は、他にピアノソロの組曲”Holiday Diary” や《4つの海の間奏曲 Op.33a》の"Sunday Morning"とかがあり、いずれも明るく快活。

3.Night
パーセルの没後250周年記念の同月に作曲。劇中では、主人公ジュリアンの最後の歌。
ブリテンは”Night”(夜)にちなんだ曲が他にもいろいろあり、《4つの海の間奏曲》の”Moonlight”、W H Audenの詩に基づいた”Night Covers Up The Rigid Land”、”Nocturno”という曲は特に多く、ピアノソロ組曲”Night Piece-Nocturno”、歌曲集”Nocturne”(Op.60)、歌曲集”Serenade”、”On This Island Nocturne”、”W. H. Auden poem”、”Suite for Harp”などの曲集に入っている。
曲想は様々。”Night Piece-Nocturno”はいかにも夜想曲らしい美しさ。
『The Way To The Tomb...』は、夜の帳が垂れ込めたような鬱々とした重苦しさがある。


『W H Auden Settings』
同時代の詩人W H Auden 1936年に会う。GPOfilm Unitをしていた。ドキュメンタリー映画の言葉と音楽を書く。
2人の若い才能あるクリエイターは共同して、劇、BBC,、映画などの仕事を手がける、。
Audenの新しい詩集”Look、stranger!”では、2つの詩をブリテンに捧げている。

1.Night Covers Up The Rigid Land
2.Fish In The Unruffled Lakes

波立つことのない静かな湖面の下で、蠢いている魚の動きを表わしているらしい冒頭のピアノ伴奏は、煌くような響きの高音がとってもミステリアスな雰囲気。

3.To Lie Flat On The Back With The Knees Flexed


『The Red Cockatoo & Other Songs』
1.A Poison Tree (Blake)
冒頭のピアノ伴奏が、かなり調子はずれの変なリズムと和声。続いて”I was angry...”という歌が入ってくるので、ピアノ伴奏はかなり険悪な雰囲気を象徴しているらしい。歌とピアノ伴奏との掛け合いが面白い。

2.When You're Feeling Like Expressing Your Affection (Auden)
まるでミュージカルで出てくるような明るく楽しげなリズムと旋律。

3.Not Even Summer Yet (Burra)
4.The Red Cockatoo (Waley)

ジャケットの絵の”赤いオウム”をテーマにした曲。賑やかにオウムがぺちゃくちゃおしゃべりしているようで諧謔。

5.Wild With Passion (Beddoes)
タイトルどおり、物々しさのある主題。

6.If Thou Wilt Ease Thine Heart (Beddoes)
旋律も和声も美しく、ピアノ伴奏が分散和音主体で流麗。

7.Cradle Song For Eleanor (MacNeice)
ジャズ風、ミュージカルで出てくるような曲。冒頭の旋律はガーシュウィンの”サマータイム”のような気だるげな雰囲気。

8.Birthday Song For Erwin (Duncan)
バースディソングにしては、冒頭はちょっと不可思議な雰囲気の和声で、曲想もあまり明るくもなく。

9.Um Mitternacht (Goethe)

これも夜の歌で”At Midnight”。


『The Holy Sonnets Of John Donne, Op. 35』
ブリテンは1945年7月に解放された捕虜たちのために、ドイツのベルゼン(BELSEN)でメニューインとコンサートを開催。
イギリスに帰国してから間もない45年8月に、《ジョンダンによる聖なるソネット》が完成。
敗戦国ドイツの情景にかなり衝撃を受けたらしく、この歌曲集にそのときの経験が色濃く反映されている。
どの歌も全て、死とrepentance(悔恨、改悛)というテーマに関連している。
ジョン・ダンの詩集自体は、作曲した時よりも2年くらい前にピアースとともに何度か読んでいたし、米国滞在中の1941年にはすでに歌とピアノのスケッチも未完成ながら作っていた曲もあった。

ジョン・ダンの詩には、タイトルがついていないので、曲名は詩の冒頭にある一節から付けたもの。

1.Oh My Black Soule!
何かの幕開けか、それとも何かを打ちのめそうとしているのか、低音を同音連打するピアノの響きとメロディが峻厳な雰囲気。

2.Batter My Heart
”Batter My Heart”は、「私の心を叩き割って下さい」と神に訴えている言葉。この部分の訳文は、「これまで、軽く打ち、息をかけ、照らして、私を直そうとされたが、今度は、起き上がり立っていられるように、私を倒して、力一杯、壊し、吹き飛ばし、焼いて、造りかえてください」(岩波文庫「ジョン・ダン詩集」の湯浅信之氏訳)
焦燥感と切迫した緊張感が漲り、この歌曲集のなかでは印象が一番強い曲。

3.O Might Those Sighes And Teares

4.Oh, To Vex Me
ピアノ伴奏の忙しくなく動き回る

5.What If This Present
高らかに歌い上げるようなトリルの旋律、ジャジーな雰囲気、

6.Since She Whom I Loved
美しくも鬱々とした重苦しさが垂れ込めた曲。

7.At The Round Earth's Imagined Corners
これはプロローグのように晴れやかな曲。 This Way To The Tomb - Eveningjに少し似ているかも。

8.Thou Hast Made Me
冒頭のピアノソロからして、これは騒然として藻のものしく峻厳。低音が峻厳、高音が警告のような。

9.Death, Be Not Proud
Since She Whom I Lovedと同じく、旋律自体は穏やかで美しくも、”死”がしのびよってくるような重苦しさと息が詰るような。
最後の方は和声が乱れて、不協和的な響きが多くなる。



《The Holy Sonnets Of John Donne, Op. 35》の映像がなかったので、これはボストリッジのアルバム『Britten Songs』のミュージッククリップ。この映像でも、ブリテンの曲の雰囲気がよく味わえる。

Ian Bostridge Presents Britten: Songs (FULL)
「Michelangelo Sonnets, Op. 22: Sonnet XXXVIII. Rendete a gli occhi miei, o fonte o fiume」 (Antonio Pappano & Ian Bostridge)


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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

愛聴するのはベートーヴェンとブラームス、それにバッハ。ロマン派ならリスト。​さらに現代(20​世紀)の音楽を探検中。特に好きなのはピアノ音楽(ソロ、コンチェルトに室内楽)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなピアノ曲:ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第30・31・32番,ピアノ協奏曲第3番&第4番。ブラームス/ピアノ協奏曲第1番&第2番、ヘンデル変奏曲、後期ピアノ作品集。バッハ:パルティータ、フランス組曲、イギリス組曲

好きなヴァイオリン曲:バッハ・ベートーヴェン・ブラームスのヴァイオリンソナタ(ピアノ&ヴァイオリン)、シベリウス/ヴァイオリン協奏曲

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