2013_02
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(Sat)22:00

スティーヴン・ハフのインタビュー 

チェリストのイッサーリスの新譜は『In the Shadow of War(戦争の影で)』というタイトルのチェロ協奏曲集(BIS盤)。収録曲は、第1次世界大戦にまつわる現代曲ばかり3曲という珍しい選曲。

ユダヤ音楽で知られるエルネスト・ブロッホの代表作『ヘブライ狂詩曲「シェロモ」』(1916)
ブリテンの師フランク・ブリッジ『悲歌的協奏曲「オーレイション」』(1930)
イッサーリスのピアノ伴奏者でもある英国のピアニストで作曲家でもあるスティーヴン・ハフ『孤独の荒野』(2005)

ハフはピアノ作品や室内楽を作曲しているのは知っていたけれど、チェロ協奏曲の方は全然知らなかった。
この曲は「ハーバート・リードの1919年出版の詩から題材を得た作品」なのだという。

戦争の影で ~ チェロ協奏曲集 (In the Shadow of War / Steven Isserlis , Hugh Wolff) [SACD Hybrid] [輸入盤]戦争の影で ~ チェロ協奏曲集 (In the Shadow of War / Steven Isserlis , Hugh Wolff) [SACD Hybrid] [輸入盤]
(2013/02/10)
スティーヴン・イッサーリス

試聴ファイル



ハフのディスコグラフィをチェックしてみると、BISからハフの作品集が1年ほど前にリリースされていた。
ハフが50歳になるのを記念して録音されたもので、ハフが作曲した管楽器のための室内楽曲、歌曲、ピアノ・ソナタとチェロ協奏曲(イッサーリスの新譜と同じ音源)が収録されている。
試聴してみたけれど、ハフが作曲したピアノ作品はわりと好きとはいえ、このCDにはちょっと手がでない。
でも、《ピアノ・ソナタ"Broken Branches"》には興味があるので、米国NaxosのNMLで試聴。(米国のNMLは合計15分間で、どのトラックでも全曲試聴できるので)
このピアノ・ソナタは、静謐で重々しく、冷たい水が滴るような感覚がする。
最初は和声と冷たく研ぎ澄まされたタッチが似ているせいか、なぜかヤナーチェクのピアノ曲を連想したし、他の現代音楽のピアノ曲でも似たような雰囲気が漂う曲があったかも。
和声自体は美しく旋律もそれなりに歌謡性があることはあるので、比較的聴きやすい。
形式が散文的でモチーフもコラージュのように断片的に移り変わっていくので、つかみ所のなさはある。
ダウンロードして聴きたいかどうかというと、ちょっと微妙。

探してみると、Classic Onlineなら、この曲だけ$3.99でダウンロード販売中。
ここはNAXOS系列の音楽配信サービスで、珍しくも日本からでもダウンロード購入できるので、時々利用している。


作曲家 スティーヴン・ハフ (Broken Branches compositions by Stephen Hough)作曲家 スティーヴン・ハフ (Broken Branches compositions by Stephen Hough)
(2011/12/05)
Stephen Hough

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ハフの公式ホームページには、最新のニュースがいろいろ載っている。
インタビュー記事、ディスコグラフィ、自作曲の楽譜、コンサートの日程、それに(主に宗教関係の)執筆文など。

最近のインタビューもいくつかPDFで読める。
この中で面白かったのは、「展覧会の絵」というタイトルの記事。
ハフは絵も描くそうで、2012年10月にロンドンのBroadbent Galleryでハフの絵画展が開催されていた。(こういう抽象絵画は私にはよくわからないので何とも言えません)
バレエ好きのハフは、Royal Ballet CompaniesのGovernorに任命されたそうなので、ほんとに多才な人。
この記事は、そんなハフにとって絵を書く意味と音楽の関連性、作曲家としての作品、ブラームスのコンチェルトや最新アルバム『French Album』を廻るハフの話が載っている。
ハフの写真には、修道増のようにストイックな容貌と雰囲気が漂っている。
カトリックに改宗したり、宗教関係について書き物をしたりと、彼の内面世界はとても複雑なのかもしれない。

”Pictures at an exhibition: Painting, composing blogging – when does Stephen Hough get time to play the piano?" [An interview with Stephen in Classical Music, 22 SEPTEMBER 2012]

◆絵を描くということ
ハフのスタジオには小さな部屋があり、疲れたときやストレスがたまると、そこで絵を描く。
感情的なカタルシスがあって、とてもリフレッシュできるので、ピアノへ戻ったときには、また違った芸術的表現に対する用意ができている。

「テクスチュアの色彩や透明感について考えるのが好き。どうやってペダルと音を使えば、違った旋律に聴こえるようになるのか、それぞれの異なる旋律が、独立したルバート、独立した生命を持つことができるか。」
「それは絵を描くことでも同じ。色のブロックよりもむしろ、色の幾多の異なるレイヤーが見える抽象画に興味があり、それには音楽的な関連性がある。」


◆作曲
ハフの作曲作品は、”情感豊かで、徹底的に考え抜かれた”(warm-hearted and thoroughly thought out)ものであり、多くの熱狂的な聴衆がいる。
彼の人生において、作曲という部分は重要度を増している。充分な時間を確保できないことが、ずっとフラストレーションになっている。
彼の第2のピアノ・ソナタは、今シーズンのリサイタルプログラムで重要な位置づけ。
「Notturno Luminosa”という副題がついているが、”Moonlight Sonata”ではない。」
「それは都市の夜。眠れない夜に光っているアラーム時計や寝室のたった一つの電球のやりきれなさ。それへの不安がある:幻覚、夜の非合理性、夜のパニック”。だからタイトル自体は正しいのだが、たぶん誤解を生む。」


◆ブラームスのピアノ協奏曲
ハフはブラームスのコンチェルトは2曲とも好きだが、だんだん(たぶん驚くべきことに)彼はDマイナー(第1番)の男として登場することが多くなっている。
ハフ自身は、ブラームスの第2番の方が良い(better)作品だと思っているが、第1番はより素晴らしい(greater)曲だという。
「第2番はオーケストレーションと構造の点でより優れており、ブラームスの全盛期に書かれた記念碑的な作品。」
「第1番はエッジの粗いところはあるが、それが到達したもの、我々に与えたものは、最終的にはさらに心を動かすものである。なぜなら、それは”volcanic inspiration”(爆発的なインスピレーション)の作品だから。
最終楽章のカデンツァの後の瞬間、Dmajorでホルンが入ってくるところは、音楽全体のなかで最も素晴らしい瞬間の一つ。ここにくると涙が浮かんで来る。」



◆『French Albumn』
「フランス音楽の審美的なところが好き。重要なこと、とても特別な人間的感情を伝えるのに、長くも深刻にもなる必要もない。」
それほど多くの活動分野と膨大なレパートリーの間を飛び回ることは精力的な挑戦のように見えるが、ハフにとっては、”this is Hough in his element.”(※”これがハフを形作っている重要な要素”、”ハフをハフたらしめている重要な要素”いう意味だろうか)
「それによって、私が正気の状態でいられる。俳優のようにローブを着替えることができなくてはならない。異なる作曲家の魂の中に入り込むという挑戦が好き。一年を唯一つのことに費やすのは好きではない」
「それは健康的なこと。たとえば、フンメルを弾くことはショパンを弾くことの手助けとなるし、ブラームスとドビュッシーの筋肉の使い方は、脳にとっても、ピアニスティックな点では体にとっても、良いことだ。」
「かなりバラエティがあって、独自の位置を占める曲を組み込むプログラムが好き。それはまるで展覧会のようだ。」
「ニューヨークの Frick Collectionのような、異なる時代の様々な絵画を展示している美術館を愛している。美術館との比較は、そんなに悪いことではない。」
「私たちは偉大な美術館を求めている。ブラームスのピアノ協奏曲のような作品は繰り返し演奏されるが、それは決して充分に満足されることがないからだ。しかし、演奏したり考える方がルーティンに陥ってはいけない。あらゆる時に、新しいものを発見し、驚き、刺激されることに飢え、立ち戻って行く必要がある。それが演奏者を作り上げている部分の一つ。」
「もし絶えず音楽に精神や感情をかきたてられることがないのであれば、それは職を間違えているのだ」
‘If you’re not constantly excited by music then you’re in the wrong profession’

(以上、要約)


こちらは、ハフがレパートリーについて語っているインタビュー記事。
"Vraiety is the Key"[An interview with Stephen in the Sunday Times, January 2013]

タグ:イッサーリス スティーヴン・ハフ

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2 Comments

物理学者 惠藤憲二  

物理学者 惠藤憲二のつぶやき

はじめまして物理学者の惠藤憲二です。
すごくいいじゃないですか!!

2013/02/26 (Tue) 00:44 | EDIT | REPLY |   

yoshimi  

はじめまして

惠藤憲二さま

どの曲(内容)のことをおっしゃているのでしょう??

2013/02/26 (Tue) 00:51 | EDIT | REPLY |   

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