カヴァコス&パーチェ ~ ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ全集(2) 第6番,第7番,第10番
2013-01-25(Fri)
カヴァコス&パーチェの『ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ全集』のCD3に収録されているのは、第6番、第7番、第10番。
かなり違った曲想が3曲収録されているのは、CD2と同じ。
CD2とCD3のカップリングなら、各曲に対するアプローチを少し変えている(と思う)のがわかるので、気がつくことがいろいろある組み合わせ。
さらにCD3の思わぬ収穫といえば、ヴァイオリンソナタ10曲中、最も苦手な第10番がしっかり聴けるようになって面白く思えてきたこと。
ヴァイオリンソナタ第6番イ長調Op.30-1 [作品解説(五嶋みどり/みどり通信)]
第1楽章 Allegro
冒頭はかなりゆったりとしたテンポで穏やかな旋律。そのせいか緩徐的な楽章だと思い込んでいたので、速度指示がAllegroだとは全然わからなかった。
しばらくすると音が詰まった動きのある旋律に変わり、優美で流麗だったり、リズミカルな躍動感があったり、表情がコロコロ変化していく。
第2楽章 Adagio molto espressivo
第3楽章 Allegretto con variazioni
一番好きな第3楽章は変奏形式なので、曲想がコロコロ変わるところがとっても面白い。
変奏楽章があるのは、第6番、第9番、第10番のみ。この6番の変奏楽章は小規模ながらも、変奏のバリエーションが多彩。
曲想、リズム、ピアノの伴奏の付け方など、変奏ごとの違いが明瞭でも、主題モチーフが聴き取りやすいせいか、変奏に統一感があってわかりやすい。
特に面白いのは第4変奏。最後の部分で、ヴァイオリンとピアノの両方が急にフォルテで和音をバン!バン!と弾くところは、間合いの取り方がちょっとユーモラス。
数年前に録画されたらしき放送用ライブ映像。
第1楽章・第2楽章ともテンポは今回の全集録音とほぼ同じ。第2楽章はライブ映像の方が30秒ほど長い。
演奏解釈は大きく変わっていないように思うけれど、このライブ映像の方が全体的にフォルテがやや強く、表現の起伏も少し大きく、ヴァイオリンが朗々と歌っている感じがする。
Leonidas Kavakos and Enrico Pace playing Beethoven Violin Sonata No.6 Mov.1
Leonidas Kavakos and Enrico Pace playing Beethoven Violin Sonata No.6 Mov.3
ヴァイオリンソナタ第7番ハ短調Op.30-2 [作品解説(五嶋みどり/みどり通信)]
第1楽章 Allegro con brio
第4番~第6番の第1楽章はかなりゆったりしたテンポで演奏していたのに、この曲はわりとテンポが速い。
ヴァイオリンとピアノの線のしっかりした音と、低音の太く量感のある響きにはずしんと重みがあって、こういう響きは好き。
ピアノのアルペジオの響きに疾走感とダイナミズムがあってゾクゾクする感じ。
第2楽章 Adagio cantabile
冒頭の主題旋律の穏やかさと安らぎに満ちた雰囲気にはほっとする。
ベートーヴェンの”adagio”は均整のとれた叙情的な美しさが印象的な旋律が多い。
第1楽章の骨太の響きとは対照的に、柔らかく柔和なタッチと響きが品良く美しく。
第3楽章 Scherzo. Allegro
冒頭主題のちょっと軽妙で装飾音的な旋律が面白い。
中間部の主題船室は、チェロソナタに出てきそうな(表彰式で使われるような)凱旋歌みたいな旋律。
第4楽章 Finale. Allegro; Presto
冒頭のピアノが低音で引くトリルが入った旋律のちょっとおどけた雰囲気が面白い。
続く旋律は可愛らしく伸びやか。
全体的にprestoにしてはちょっと遅めかも。
その分、旋律がくっきり明瞭で、ヴァイオリンとピアノの対話ががっちりと絡みあっていて、軽妙さは少なく、力強い。
ヴァイオリンソナタ第10番ト長調Op.96 [作品解説(五嶋みどり/みどり通信)]
この曲は誰の演奏で聴いても途中で眠くなるので、まともに最後まで聴いたことがない。
こういう苦手な曲は好きな演奏者で聴くと、今までの印象がガラリと変わったりすることが多い。
やっぱりこの曲もそのとおり。清々しい透明感のある第1楽章と、変奏の展開が面白い第4楽章はかなり気にいっている。
第1楽章 Allegro moderato
嵐が過ぎ去った後の秋空のように、清々しく澄み切った明るさが差し込んでいる。
Allegro moderatoにしては、少しゆったりしたテンポで穏やかな静けさが漂っている。
ヴァイオリンとピアノが、粒立ちの良く言葉のような語り口のトリルで対話するところがとっても印象的。
第2楽章 Andante espressivo
物思いに耽っているかのようにゆったりと静かなアンダンテ。
穏やかさのなかにも、そこはかとない寂寥感が流れているような感じもする。
終盤、感情が高ぶったかのように、ヴァイオリンとピアノが同じようなパターンの旋律を何度も繰り返しながらクレッシェンド。最後は弱音へ戻ってフェードアウト。
第3楽章 Scherzo Allegro
この楽章はなぜかブラームスを聴いている気がする。
リズム感や和声がちょっとブラームス風に聴こえるから?
今までしっかり聴いていなかったせいか、気がつかなかったらしい。
第4楽章 Poco Allegretto
主題と8つの変奏で構成される第4楽章は、優美でファンタスティックで軽妙で、ちょっと摩訶不思議。
変奏曲といっても、ベートーヴェンの変奏曲にしては、モチーフの関連性が薄い気がする。変奏の性格も、優雅なメヌエット風、幻想曲風、舞曲風など、かなり違った変奏が突如入れ替わって、意表をつかれる。
肩の力がすっかり抜けたように、大らかで自由闊達。その中に、透き通るような明るさとベートーヴェン流のユーモアが漂っている気がする。
演奏も変奏ごとにタッチを明瞭に変え、緩急・静動がコントラストがくっきり鮮やか。
特に舞曲風の変奏は、その諧謔さや俗っぽい(?)リズム感が良く出ているので、前後の変奏の穏やかな美しさとの落差がある面白さがよくわかる。
最初は構成と展開がよくつかめなくて聴き心地が悪かったこの変奏楽章も、聴き慣れてみるとなんだかとっても面白い。
<関連記事>
カヴァコス&パーチェ~ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ全集(1)第4番,第8番,第9番「クロイチェル」
カヴァコス&パーチェ~ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ第6番 (ライブ映像に関する記事)
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かなり違った曲想が3曲収録されているのは、CD2と同じ。
CD2とCD3のカップリングなら、各曲に対するアプローチを少し変えている(と思う)のがわかるので、気がつくことがいろいろある組み合わせ。
さらにCD3の思わぬ収穫といえば、ヴァイオリンソナタ10曲中、最も苦手な第10番がしっかり聴けるようになって面白く思えてきたこと。
![]() | Beethoven: Violin Sonatas (2012/11/06) Leonidas Kavakos、Enrico Pace 試聴ファイル(英amazon) |

第1楽章 Allegro
冒頭はかなりゆったりとしたテンポで穏やかな旋律。そのせいか緩徐的な楽章だと思い込んでいたので、速度指示がAllegroだとは全然わからなかった。
しばらくすると音が詰まった動きのある旋律に変わり、優美で流麗だったり、リズミカルな躍動感があったり、表情がコロコロ変化していく。
第2楽章 Adagio molto espressivo
第3楽章 Allegretto con variazioni
一番好きな第3楽章は変奏形式なので、曲想がコロコロ変わるところがとっても面白い。
変奏楽章があるのは、第6番、第9番、第10番のみ。この6番の変奏楽章は小規模ながらも、変奏のバリエーションが多彩。
曲想、リズム、ピアノの伴奏の付け方など、変奏ごとの違いが明瞭でも、主題モチーフが聴き取りやすいせいか、変奏に統一感があってわかりやすい。
特に面白いのは第4変奏。最後の部分で、ヴァイオリンとピアノの両方が急にフォルテで和音をバン!バン!と弾くところは、間合いの取り方がちょっとユーモラス。
数年前に録画されたらしき放送用ライブ映像。
第1楽章・第2楽章ともテンポは今回の全集録音とほぼ同じ。第2楽章はライブ映像の方が30秒ほど長い。
演奏解釈は大きく変わっていないように思うけれど、このライブ映像の方が全体的にフォルテがやや強く、表現の起伏も少し大きく、ヴァイオリンが朗々と歌っている感じがする。
Leonidas Kavakos and Enrico Pace playing Beethoven Violin Sonata No.6 Mov.1
Leonidas Kavakos and Enrico Pace playing Beethoven Violin Sonata No.6 Mov.3

第1楽章 Allegro con brio
第4番~第6番の第1楽章はかなりゆったりしたテンポで演奏していたのに、この曲はわりとテンポが速い。
ヴァイオリンとピアノの線のしっかりした音と、低音の太く量感のある響きにはずしんと重みがあって、こういう響きは好き。
ピアノのアルペジオの響きに疾走感とダイナミズムがあってゾクゾクする感じ。
第2楽章 Adagio cantabile
冒頭の主題旋律の穏やかさと安らぎに満ちた雰囲気にはほっとする。
ベートーヴェンの”adagio”は均整のとれた叙情的な美しさが印象的な旋律が多い。
第1楽章の骨太の響きとは対照的に、柔らかく柔和なタッチと響きが品良く美しく。
第3楽章 Scherzo. Allegro
冒頭主題のちょっと軽妙で装飾音的な旋律が面白い。
中間部の主題船室は、チェロソナタに出てきそうな(表彰式で使われるような)凱旋歌みたいな旋律。
第4楽章 Finale. Allegro; Presto
冒頭のピアノが低音で引くトリルが入った旋律のちょっとおどけた雰囲気が面白い。
続く旋律は可愛らしく伸びやか。
全体的にprestoにしてはちょっと遅めかも。
その分、旋律がくっきり明瞭で、ヴァイオリンとピアノの対話ががっちりと絡みあっていて、軽妙さは少なく、力強い。

この曲は誰の演奏で聴いても途中で眠くなるので、まともに最後まで聴いたことがない。
こういう苦手な曲は好きな演奏者で聴くと、今までの印象がガラリと変わったりすることが多い。
やっぱりこの曲もそのとおり。清々しい透明感のある第1楽章と、変奏の展開が面白い第4楽章はかなり気にいっている。
第1楽章 Allegro moderato
嵐が過ぎ去った後の秋空のように、清々しく澄み切った明るさが差し込んでいる。
Allegro moderatoにしては、少しゆったりしたテンポで穏やかな静けさが漂っている。
ヴァイオリンとピアノが、粒立ちの良く言葉のような語り口のトリルで対話するところがとっても印象的。
第2楽章 Andante espressivo
物思いに耽っているかのようにゆったりと静かなアンダンテ。
穏やかさのなかにも、そこはかとない寂寥感が流れているような感じもする。
終盤、感情が高ぶったかのように、ヴァイオリンとピアノが同じようなパターンの旋律を何度も繰り返しながらクレッシェンド。最後は弱音へ戻ってフェードアウト。
第3楽章 Scherzo Allegro
この楽章はなぜかブラームスを聴いている気がする。
リズム感や和声がちょっとブラームス風に聴こえるから?
今までしっかり聴いていなかったせいか、気がつかなかったらしい。
第4楽章 Poco Allegretto
主題と8つの変奏で構成される第4楽章は、優美でファンタスティックで軽妙で、ちょっと摩訶不思議。
変奏曲といっても、ベートーヴェンの変奏曲にしては、モチーフの関連性が薄い気がする。変奏の性格も、優雅なメヌエット風、幻想曲風、舞曲風など、かなり違った変奏が突如入れ替わって、意表をつかれる。
肩の力がすっかり抜けたように、大らかで自由闊達。その中に、透き通るような明るさとベートーヴェン流のユーモアが漂っている気がする。
演奏も変奏ごとにタッチを明瞭に変え、緩急・静動がコントラストがくっきり鮮やか。
特に舞曲風の変奏は、その諧謔さや俗っぽい(?)リズム感が良く出ているので、前後の変奏の穏やかな美しさとの落差がある面白さがよくわかる。
最初は構成と展開がよくつかめなくて聴き心地が悪かったこの変奏楽章も、聴き慣れてみるとなんだかとっても面白い。
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