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ベートーヴェン/《トルコ行進曲》と《創作主題による6つの変奏曲Op.76》
《トルコ行進曲》といえば、一番有名なのがモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番イ長調K.331「トルコ行進曲付」。
子供の頃にピアノのレッスンで練習したのでよく覚えている。その頃からどうにもこの曲が好きになれず、おかげでモーツァルトのピアノ曲は、聴くのも弾くのも嫌になってしまった。
今でもこのトラウマ(?)が影響しているかも...。

同じく練習していたベートーヴェンの《トルコ行進曲》の方は、とても好きだった。
どうやら、幼少のみぎりからベートーヴェンとは相性が良かったみたい。
《トルコ行進曲》は、元々はピアノ独奏曲の《創作主題による6つの変奏曲 ニ長調 Op.76》(1809年)の主題。
ベートーヴェンは気にいったモチーフを転用して作曲することが度々あり、この変奏曲の主題は、後に作曲した劇音楽《アテネの廃墟 Op.113》(1811年)の第4曲「トルコ行進曲」に使われている。
そのため、原曲の変奏曲が、《「アテネの廃虚」からのトルコ行進曲による6つの変奏曲》とも言われるようになった。

そういえば、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番は<トルコ風>。トルコ人の太守セリムの後宮(ハレム)を舞台にしたオペラ《後宮からの逃走》というのもある。
モーツァルトもベートーヴェンもどうしてトルコがらみの曲を書いたのかというと、オスマン帝国が16世紀と17世紀に行ったウィーン包囲の名残り。
オスマントルコ軍の軍楽隊メフテルがヨーロッパ人にとって強烈な印象を焼き付けたらしく、18世紀頃にトルコ趣味の音楽が流行ったという。
ヨハン・シュトラウス2世も、ウィーン包囲にちなんだ曲「取り壊しポルカ」を書いている。
詳しくは、”「取り壊しポルカ」で何が取り壊された?~オスマントルコによるウィーン包囲~”[有名なクラシック音楽]で解説されている。


ベートーヴェンの変奏曲の楽譜を確認してみると、私が練習した曲とは随分違う。
Youtubeで音源を探すと、キーシンが《トルコ行進曲》をリサイタルのアンコールで弾く時に、”piano arrangement by Anton Rubinstein”と言っていた。
やがて弾き始めると、これが私が練習していた《トルコ行進曲》と同じ!装飾音が入っているのですぐわかる。
てっきりベートーヴェンの曲だと思っていたけれど、実はアントン・ルービンシュタインの編曲版を練習していたのだと、ようやく今になってわかったのだった。
他にも、ラフマニノフがルービンシュタイン版をさらに編曲したバージョンがあり、これはラフマニノフの自作自演のピアノロールで聴ける。

Six Variations on an Original Theme in D major, Op.76(楽譜ダウンロード/IMSLP)


キーシンが弾くルビンシュタインの編曲版《トルコ行進曲》
原曲の主題に加えて、原曲の第1変奏の後半部分に出てくる旋律を編曲して使っている。
キーシンが弾くと、軽快な和音の打鍵と明るい音色できらきら輝いて、とっても可愛らしい。
ミリタリー調というより、おもちゃの兵隊さんの行進みたい。弾いているキーシンも楽しそう。

Beethoven - The Famous Turkish March




ラフマニノフの《トルコ行進曲》
キーシンとは随分雰囲気が変わり、遅いテンポで無骨な雰囲気は異国の異様な軍隊のイメージ?
左手の伴奏和音に符点のリズムが多くて、キーシンの演奏とはちょっと違うので、これがラフマニノフの編曲版らしい。
最後は軍隊が遠ざかっていくように、リタルダンドしながらフェードアウト。
※この録音は音がかなり鮮明。ラフマニノフは空気圧による自動演奏ピアノのために録音していたが、それに使われていたミュージック・ロールのデータをコンピューターに入力して、現代ピアノで自動演奏しているものらしい。

Rachmaninoff plays Beethoven-Rubinstein: Turkish March


ラフマノノフが蓄音機に残した録音もある。(Youtubeの音源はこちら)




原曲《創作主題による6つの変奏曲 ニ長調 Op.76》(「アテネの廃虚」からのトルコ行進曲による6つの変奏曲)
1809年の作曲ということは、ピアノ・ソナタ第24番《テレーゼ》を作曲した頃の中期の作品。
演奏機会が多いとはいえないこの変奏曲をリヒテルが弾いているのが珍しい。
冒頭から軍隊の行進曲のごとく威勢良い。第1変奏はとっても可愛らしく、第2変奏は飛び跳ねるようなリズムが面白い。
第3変奏はワルツのようにしとやかで優美。第4変奏も第2変奏のようにリズムが変化して、厳めしさと可愛らしさが交代する。第5変奏はレガートで流麗。
第6変奏はフィナーレらしく、疾走するように軽快で華やか。最後は主題が再び登場して、ちょっとしたユーモアが漂う、可愛らしいエンディング。
単純でマニッシュな行進曲の主題が、リズムや旋律がコロコロと変化して、可愛らしくも、軽快にも、優雅にも、表情が多彩。これはとっても面白い。

Richter plays Beethoven Variations Op.76




劇音楽《アテネの廃墟》の第4曲「トルコ行進曲」
シンバルとかが入っているので、軍隊が行進しているような軍楽風。
ピアノ編曲版が完全に刷り込み状態になっているので、やっぱりピアノの音の方がしっくりくる。

Türkischer Marsch from "Die Ruinen von Athen" op.113


tag : ベートーヴェン キーシン リヒテル ラフマニノフ

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トルコ行進曲
こんばんは!

娘が中学生の時弾いていましたが、キーシンが演奏しているものに近い感じです。確かにこういう感じの装飾音が入ってます。でももうちょっと簡単にしてあった様な気がします。残念ながらなぜか楽譜が開けないんですよね。そうか、ベースはルービンシュタイン編曲のものだったんですね。

元の《アテネの廃墟》も、初めて聴きましたが、面白い!!当時流行のトルコ風を張り切ってふんだんに取り入れたのが、良くわかりますね。
No title
こんばんは^^
糖質制限の記事、参考にさせて頂きます。昨年の健康診断で、血糖値が少し高めだったので。
モーツァルトのトルコ行進曲、私ももともとあまり好きでは無かったですが、いくつかの経緯を経て大好きになりました。
一つは、グールドの録音です。おもちゃが行進している様な表現が素敵です。
もう一つは、メヘテル(メーテルハーネとか書いてあったと思う)という旧トルコ軍楽隊の音楽を聴いて事によります。ワールドミュージックに分類されていましたが、とにかくとてつもない音楽で、ドンドンジャンジャン、『こるぁ!殺すぞ!』って言われている様な感じに聞こえます。こんな原曲を、西洋音楽の伝統の枠に見事に収めて表現したモーツァルトはやはり天才なのでしょう。感心させられた次第です。
懐かしい曲です
Tea316さん、こんにちは。

「トルコ行進曲」の楽譜は、名曲アルバムとかに入っているバージョンだと、簡単な編曲になっているものが多いです。
それも元々はルービンシュタインの編曲版を元にしているのだと思います。

《アテネの廃墟》の方は、シンバルとか管楽器がガンガン鳴っていて、トルコの軍楽隊が演奏しているような雰囲気がありますね~。
今思い出しましたが、モーツァルトは『後宮からの逃走』というトルコ風音楽を使ったオペラを書いてましたね。映画「アマデウス」のオペラシーンで使われていたような記憶があります。

楽譜のダウンロード画面は、一つ前の画面のURLを下に貼り付けました。
ここからならダウンロードできると思うのですが...。
楽譜が3つ並んでいますが、一番下の楽譜がサイズが最小なので、ダウンロードが速いです。
http://imslp.org/wiki/6_Variations_in_D_major,_Op.76_%28Beethoven,_Ludwig_van%29
見れました!
こんばんは!
楽譜をみることができました!ありがとうございました。

そういえば『後宮からの逃走』はトルコが舞台ですね。
トルコ人はすんごい悪者扱いだったような…。
とにかくトルコの文化はかなり強烈なインパクトだったようですね。
脅威のトルコ軍
Tea316さん、こんにちは。
 
高校では世界史を選択していたので、トルコ帝国というとすぐに十字軍を連想しますね。
欧州の中心都市だったウィーンをトルコ軍に2度も包囲されたということは、ヨーロッパ人にとってトルコはよほど脅威だったのでしょう。

「アマデウス」の《後宮からの逃走》では、たしか茶色の馬の張りぼてが出てきたような記憶があります。最初はコメディかと思ってしまいました。(もしかして、《ドン・ジョバンニ》だったかも?)
リヒテル
こんにちは。
それぞれ面白い演奏ですね。
キーシンは可愛いし、ラフマニノフは少しこわもて。
リヒテルのは変奏があるので、広がりがありますね。ピアノの音もきれいです。
このリヒテルの演奏は
ポンコツスクーター様、こんばんは。

「トルコ行進曲」にこんなにバリエーションがあるとは知りませんでした。
さらに、リストが4種類の編曲を書いてます。(後日記事に書きますが)

ラフマニノフはピアノロールを元にピアノに自動演奏させた音源らしいので、蓄音機に残っている録音よりも、かなり厳めしい感じです。
蓄音機の方は、少しタッチが軽やかで、そこはかとなく華やかな感じが漂ってます。

リヒテルの音源は、1970年4月のカーネギーホール・リサイタルのようです。
この時は、ベートーヴェンの変奏曲3曲(エロイカなど)とシューマンの交響的練習曲という、ちょっと変わったプログラムです。
シューマンも変奏形式の曲ですから、変奏曲ばかり弾いたようです。
まだ55歳なのでタッチもシャープで切れよく、全盛期のリヒテルらしいベートーヴェンですね。


夜のガスパル様へ
夜のガスパル様、こんにちは。

せっかくコメントいただいていたのですが、なぜか「迷惑コメント」に分類されていましたので、今気が付きました。
お返事が大変遅くなりまして、すみませんでした。

糖質制限食は、糖尿病治療で導入する医師も増えているようです。
医学的なエビデンスもありますので、効果は高いのではないかと思います。

「トルコ行進曲」をトルコの軍楽隊の演奏で聴くと、トルコ帝国のイメージもあまり良くないでしょうから、当時の欧州の人にはとても異様に聴こえたでしょう。
それが、モーツァルトの手にかかると、優雅で気品を帯びた曲に変身するのが面白いですね。
グールドの録音は聴いたことがありませんが、いわゆるモーツァルト弾きの演奏とは違うのは想像できます。
グールドが弾くと、なんでも通り一遍の演奏にはならないですから。


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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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