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ベートーヴェン=リスト編曲/《アテネの廃墟》のモティーフによる「トルコ風カプリッチョ」と「幻想曲」
フランツ・リストのベートーヴェン編曲で一番有名なのは、交響曲全集のピアノ独奏編曲版。
調べてみると、リストがベートーヴェンの劇音楽《アテネの廃墟》がとても気に入っていたのかどうかはわからないけれど、この劇音楽に出てくる「トルコ行進曲」などの主題を使って、ピアノ協奏曲にピアノ独奏曲、さらに2台のピアノ版も書いている。

《アテネの廃墟のモティーフによるトルコ風カプリッチョ S.388》(ピアノ独奏版,1846年)[楽譜ダウンロード(IMSLP)]
(主題の《トルコ行進曲》の編曲部分のみ抜粋したのが、S389a)

《アテネの廃墟による幻想曲 S.122》(ピアノ協奏曲版,1852年)

《アテネの廃墟による幻想曲 S.389》(ピアノ独奏版,1852年)[楽譜ダウンロード(IMSLP)]

《アテネの廃墟による幻想曲 S.649》(2台のピアノ版,1852年)

1839年に”Fantasie über Themen aus Beethovens Ruinen von Athen S.388b”というピアノ独奏版を書き、これが、ピアノ協奏曲版(S.122/1852年)に改訂され、主題はピアノ独奏曲のカプリッチョ(S.388/1846年)にも使われている(ということらしい)。
S.122は、ピアノ独奏曲(S.389)と2台のピアノ版(S.649)にも編曲(1952年)。


《アテネの廃墟のモティーフによるトルコ風カプリッチョ》(S 388)
冒頭の「トルコ行進曲」は、オドロオドロしい序奏で始まるけれど、主題部はとても可愛らしい行進曲。
後半部へ移行するところで、メンデルスゾーンの《結婚行進曲》の冒頭の和音のような旋律が聴こえてくる。
鍵盤の低音部から高音部までたっぷり使っているので、音色の色彩感がカラフルで、特に高音部の和音は宝石のようにキラキラ煌き、低音の和音もリズムがいろいろ変化して、軽やかで華やか。
行進曲というよりも、ダンスでもしているみたい。

可愛らしく終わった途端、ファリャの《火祭りの踊り》のようなトリルが始まって、幻想曲風に。
「トルコ行進曲」の主題とはかなり違った旋律が出てきて、リストらしい華やかなスケールや和音が鍵盤上を行き来する。こういうところは、リストの《ピアノ協奏曲》や《死の舞踏》を連想する。

終盤になると、再び「トルコ行進曲」の主題が現れて、この編曲がとても楽しい。
ピアノは高音部主体で音色がオルゴールのように可愛らしい。厳めしい異国の軍隊風とは全く違い、繊細で華麗な装飾が施されてキラキラと煌くような旋律がとっても綺麗。
このトルコ行進曲の主題が、フィナーレへ向けて、途中で冒頭主題も織り込みながら、華やかなパレード風に変形されていく。
ベートーヴェンの《トルコ行進曲》とリストのオリジナルな幻想曲とが融合して、華やかでファンタスティックで、とっても素敵。

Beethoven-Liszt:Capriccio alla turca sur des motifs de Ruines d'Athènes




《アテネの廃墟による幻想曲》ピアノ協奏曲版(S 122)
《アテネの廃墟による幻想曲》は、全部で3バージョン(ピアノ協奏曲、ピアノソロ、2台のピアノ)。
どのバージョンでも演奏機会はとても少ないらしく、録音もピアノ協奏曲が数件。
ピアノ協奏曲を録音しているのは、ベロフ、ヤンドー、ハワードなど。

これはベロフのピアノによる協奏曲バージョン。
ベートーヴェンの原曲は《序曲》と《トルコ行進曲》くらいしか聴いていないので、原曲のどの部分の主題が使われているのかよくわからないけれど、それを知らなくても充分楽しめる。
《アテネの廃墟のモティーフによるトルコ風カプリッチョ》と似たような旋律も出てくるけれど、こちらの方がより凝った編曲と華麗な装飾でピアニスティック。

トゥッティでのどかに序奏が演奏された後に、突如リストらしいデモーニッシュで華やかな和音がピアノでかき鳴らされて、主題が展開されていく。
ここでも、ピアノ独奏により《火祭りの踊り》のようなトリルとスケールが多用されて、最後はオケとピアノが協奏していく。まるで《死の舞踏》のように、追いつ追われつ...という疾走感。

終盤には、編曲された《トルコ行進曲》が出てくる。
直前のパートとはガラリと雰囲気が変わって、ピアノが弾く高音部の旋律は、キラキラと煌く音色が綺麗で可愛らしい。
ピアノ独奏版の方の《トルコ風カプリッチョ》の終盤で出てくる「トルコ行進曲」よりも、さらに音色が美しく華やか。
やがて、フィナーレに向けて《トルコ行進曲》が壮大に展開されて行き、いかにもリストらしい豪華絢爛たるピアニスティックな協奏曲。


Liszt - Fantasy on Themes from the Ruins of Athens, S. 122
Piano: Michel Béroff,Kurt Masur、Gewandhausorchester Leipzig



tag : フランツ・リスト ベートーヴェン

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アテネの廃墟
僕も詳しいわけではなく、ハワードの受け売りですが、《アテネの廃墟》幻想曲は原曲の「第7曲:行進曲と合唱 (March and Chorus)」「第4曲:回教僧の合唱 (Dervish Chorus)」「第5曲:トルコ行進曲」を使用しているそうです。原曲もこの幻想曲も好きです。

この曲はブゾーニもお気に入りだったのか、ピアノロールに録音があります。彼の弟子であるエゴン・ペトリが史上初めてこの曲を(ピアノロールではなく)録音した人物のようです。
素敵な編曲ですね!
ミッチさま、こんにちは。

トルコ行進曲以外に3曲のモチーフが使われているのですね。
劇音楽や合唱曲はあまり聴くのが得意ではなくて、使われているモチーフがわからなかったので、教えてくださってありがとうございます。
原曲の該当部分をしっかり聴いておけば、幻想曲の編曲の面白さがさらに味わえそうです。

ブゾーニやペトリも録音していたくらいですから、リストの編曲のなかでは、隠れた名曲ですね!
幻想曲のピアノソロ版は聴いたことがないのですが、このピアノ協奏曲はピアノパートが華麗でとっても素敵です。
No title
今度、アテネの廃墟モティーフによる幻想曲(ピアノとオケ)をやる事になり、こちらを拝見しました。
詳しく説明があり、勉強になりました!
お役に立てて良かったです
misuzuさま、こんにちは。

幻想曲を弾かれるなんて、とっても貴重な経験ですね!
日本でもそうそう演奏機会の多い曲ではないと思いますし、在阪のオケの演奏会プログラムに載っているのは、見たことがありません。
リストなので技巧的には難しいのでしょうが、オケをバックに弾けば、舞台映えする曲ですね。
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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