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芥川也寸志/ヴァイオリンとピアノのためのバラード 、ラ・ダンス
このところ芥川龍之介の小説や評伝などを立て続けに読んでいるせいか、龍之介の三男・芥川也寸志が作曲した音楽を聴きたくなってきた。

芥川也寸志のプロフィールを読むと、子供の頃から父・龍之介の遺品であるクラシックのレコードを蓄音機で聴いていたという。特に気にいっていたのが、リヒャルト・シュトラウスやストラヴィンスキー。すでに幼稚園の頃から、ストラヴィンスキーのバレエ音楽《火の鳥》の「子守唄」を口ずさんでいたというから、現代音楽作曲家となる将来を暗示していたのかも。
龍之介の文才も受け継いでいるようで、『音楽の基礎』、『私の音楽談義』、『音楽の旅-エッセイ集』、『音楽を愛する人に―私の名曲案内』など著作も多い。

芥川龍之介がクラシックに関して書き残したものといえば、『あの頃の自分の事』という随筆(というか回想というか)に、東大在学中にクラシック演奏会に行った時のことが書かれている。
それに、1925(大正14)年5月に「新小説」に掲載された短編『ピアノ』はとても素敵なお話。
2000字にも満たないけれど凝縮された文章が、色彩感鮮やかに、ピアノが藜のなかで静かに佇んでいる情景と白い鍵盤、その上に落ちている落ち栗などをくっきりと浮かびあがらせる。ピアノの音まで聴こえてきそうなくらい。
まるでピアノが意志を持っていて、「わたし」とピアノが心を通じ合っているかのように不思議な、それでいて、ほのぼのとしたものが伝わってくる。

数年前、芥川也寸志の書いた管弦楽曲を数曲聴いた時には、日本の現代音楽にしては、日本と西洋が融合したモダンで颯爽とした作風だったので、とても聴きやすく好きなタイプの音楽だった。
今度は管弦楽曲以外の録音を探してみたけれど、室内楽曲やピアノ曲は、管弦楽曲や映画音楽ほどには有名ではないらしく、録音がなかなか見つからない。

Youtubeで見つけた音源は《ヴァイオリンとピアノのためのバラード》(1951年)。
厳めしくも、エキゾチックな雰囲気が漂っていて、ゾクゾクっとする。
冒頭の伝統的な日本の音階で書かれたような旋律を聴くと、「五木の子守歌」の”おどま盆ぎり盆ぎり~”のメロディにそっくり。
この冒頭主題の演奏は短く、すぐに軽快なテンポに変わる。
ほの暗く叙情的なヴァイオリンの旋律と、それと対照的に、厳めしい雰囲気でオスティナートするピアノ伴奏とが融合し、急迫感がある。
中間部は緩徐的になり、冒頭主題の旋律が再び現れて、バラードらしい哀愁が漂う。
再現部の最後は、ヴァイオリンがねじれるような響きで上行して、エンディング。


芥川也寸志:ヴァイオリンとピアノのためのバラード




同じくYoutubeで見つけたのは、ピアノ独奏曲の《ラ・ダンス/La Danse》 (1948)
こちらは作曲ソフトで合成された演奏。音が金属的なところはあるけれど、合成音でもどういう曲かよくわかる。演奏機会が少ない曲が聴けるという点では、こういう音源もありがたいもの。

《ラ・ダンス》は、和風の音階・リズムの旋律を使って、西洋風ダンスを踊っているような、和洋融合したところが面白い。
旋律とリズムの違う4つのパートに分かれて、変奏曲というよりも組曲的。
とても美しいパートは、4:24~。リズムが滑らかになって、旋律も柔らかくそよ風のように優しく爽やか。

芥川也寸志「ラ・ダンス」La Danse (1948) by AKUTAGAWA Yasushi
(Performed by Ableton Live and Galaxy Vintage D.)



<参考情報>
芥川也寸志[クラシック名曲・名盤]:プロフィールと主要録音の紹介
芥川也寸志―その芸術と行動(東京新聞出版局,1990/06)(amazon)


<関連記事>
芥川也寸志の管弦楽作品 (1)オーケストラのためのラプソディ、弦楽のための三楽章「トリプティーク」
芥川也寸志の管弦楽作品 (2)エローラ交響曲

tag : 芥川也寸志 芥川龍之介

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芥川の作品
こんにちは。
芥川の作品、昔わずかに聴いたものはだいたい忘れてしまいました。。
このヴァイオリンとピアノのバラードはエキゾチックな雰囲気が漂っていて雰囲気がいいですね。
父の短編「ピアノ」、興味深いです。読んでみますね。
芥川父子の作品とは波長が合います
ポンコツスクーターさま、こんにちは。

也寸志さんの作品は、明朗で颯爽とした作風のものが多いですね。
バラードも現代的ではありますが、難解な前衛的さはなくて、好きな曲です。
オスティナートをよく使っているのは、師の伊福部昭の影響があるそうです。
伊福部作品も好きなので、このおふたりの作品とは波長が合います。

「ピアノ」は短編ながら、文字の間から、ピアノと人との”以心伝心”のような不思議な関係が伝わってくるような、味わい深いものがあります。
このところ、ちくま文庫の芥川全集を順番に読んでいるのですが、好きな作品がたくさんあるので、久しぶりに小説三昧です。
これも「或阿呆の一生」の記事を拝見したおかげです。どうもありがとうございました。
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好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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