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メシアン/鳥のカタログ
随分昔、現代音楽のCDを買い始めた頃、NHK-FMでメシアンの《異国の鳥たち》をたまたま聴いて、これが結構面白かったので、《鳥のカタログ/Catalogue d'oiseaux》のNAXOS盤を購入。
《鳥のカタログ》は、フランスに生息している13種類の鳥をモチーフにした曲集。
自然の風景や生物の鳴き声、動きなどをピアノの音で表現した曲なので、鳥の姿・動き・鳴き声が体感できそうだと思い込んで聴いてみたら、期待していたほどに視覚喚起的ではなく、どれがどの曲がわからないような似たような響きが旋律が延々と続いて(その時はそう思えた)、どうもメシアンの音楽とは合わなさそうだった。

そもそも、バードウォッチングの趣味もなく、鳥の名前でわかるのは、飼っていたインコ、文鳥、カナリア、そこらを飛んでいる雀・カラス・鳩、テレビや動物園で見た鶴、フラミンゴ、鷲と鷹(どちらか区別がつかない)、近所の公園の池を泳いでいるアヒルと白鳥...と、まあ鳥オンチの私が、この曲からフランスの見たこともない鳥をイメージするのは、今思えば土台無理な話だった。

《鳥のカタログ》は全7巻13曲、総演奏時間が3時間30分くらいでCD3枚分と、ピアノ独奏曲集としてはかなりの規模。リサイタルで全曲演奏する人は多くないに違いない。

<曲名>
第1番 キバシガラス(黄嘴烏、Le Chocard des Alpes)
第2番 キガシラコウライウグイス(Le Loriot)
第3番 イソヒヨドリ(磯鵯、Le Merle bleu)
第4番 カオグロヒタキ(Le Traquet Stapazin)
第5番 モリフクロウ(La Chouette hulotte)
第6番 モリヒバリ(L'Alouette lulu)
第7番 ヨーロッパヨシキリ(La Rousserolle effarvatte)
第8番 ヒメコウテンシ(姫告天子、 L'Alouette calandrelle)
第9番 ヨーロッパウグイス(La Bouscarle)
第10番 コシジロイソヒヨドリ(Le Merle de roche)
第11番 ノスリ(鵟、La Buse variable)
第12番 クロサバクヒタキ(Le Traquet rieur)
第13番 ダイシャクシギ(大杓鷸、Le Courlis cendré)


最近、ウゴルスキやムラロの演奏で《鳥のカタログ》を聴き直してみると、視覚喚起性はあるとは思うけれど、それよりも多彩な音色とソノリティ・リズムで構成された抽象的な音楽に聴こえる。
バードウォッチングに興味があるわけでもなく、モチーフになっている鳥のことを全然知らないので、鳥と音楽との関連性はさっぱりわからないためか、どの曲も似たように聴こえるところはある。
下手に音から鳥のイメージを感じようとするよりは、抽象的な音だけの世界だと思って聴くと、これが結構楽しめてしまう。
多分メシアンの音楽をいろいろ聴いてきたので、その書法に耳と感性が慣れてきたこともあるだろうし、よく理解できないときは考えすぎずに音だけにシンクロして聴いた方が、逆に音楽との距離感が小さくなるような気がする。
最近聴いてとても好きになった《アーメンの幻影》と似た旋律や和声がちょこちょこ出てくるので、これも《鳥のカタログ》が聴きやすくなった理由に違いない。
といっても、ある旋律を聴いても、それがどの曲のものか判別できるかというと、これはかなり難しい。


《鳥のカタログ》よりも先に書いた《鳥たちの目覚め》では、管弦楽と独奏ピアノで実際の鳥の囀りを再現されている。
この作品について、メシアン自身こう言っている。

「わたしが描こうとした鳥や風景を知っている人なら、この作品を聴くことに特別な喜びを見出すだろう。(略)しかし音楽的な効果はそれとは全く別のことだ。もしこの作品が成功しているなら、鳥の声の識別とは関係なく、生命そのものが姿を現すだろう」

《鳥のカタログ》の曲ではないけれど、《ニワムシクイ》という曲をメシアンは書いている。
《鳥のカタログ》と同じ系列の作品らしく、<楽譜の風景>サイトに載っているメシアンによる「ニワムシクイ」の解説を読むと、どのように自然の姿が音で表現されているかを知ることができる。
メシアン 最大にして最高峰のピアノ独奏曲 ~ 「ニワムシクイ」[楽譜の風景]

メシアン愛好家でアマチュアピアニストの西村英士さんのホームページ<オリヴィエ・メシアンに注ぐまなざし>にある解説を読むと、メシアンにとって鳥のもつ意味や、どのように音楽として表現しようとしたのか、少しわかってきた(ような気がする)。
メシアンの音楽語法 IV.鳥の歌 Chants d'oiseaux[オリヴィエ・メシアンに注ぐまなざし]

                              

《鳥のカタログ》有名な録音の一つは、ウゴルスキ盤。
試聴ファイルを聴いただけでも、かなり緩急・強弱のコントラストが強くて、ダイナミック。
かなり強いタッチでガンガンと響き、情念が飛び交うようにパッショネイトめいたものを感じる。
ウゴルスキ盤の良いところは、最後に”La Fauvette des jardins”(ニワムシクイ)が入っているところ。(アウストボとムラロのCDに「ニワムシクイ」は未収録)
価格も手頃なので、このいう弾き方や響きが好みに合うのであれば、ファーストチョイスに良さそう。


メシアン 鳥のカタログ 第2巻 第4番 カオグロヒタキ, ウゴルスキ(p)



Olivier Messiaen - Le Choral des Alpes (第1巻第1番「キバシガラス」)


Catalogue D'Oseaux / La Fauvette Des JardinsCatalogue D'Oseaux / La Fauvette Des Jardins
(2003/07/01)
Anatol Ugorski

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ロジェ・ムラロの演奏は、ウゴルスキほど強弱のコントラストが極端に強くはないけれど、すっきりとクリアで引きしまった音と、構造がくっきり透けて聴こえるような明晰さ。
ウゴルスキよりも抑制の利いた理知的な趣きがあって、メシアン演奏に関しては、ムラロの方が好みに合っている。

ムラロの《鳥のカタログ》のCDには「ニワムシクイ」は入っておらず、『メシアン/ピアノ独奏曲全集』に収録されている。
このBOXセットには《幼な児イエスにそそぐ20の眼差し》、《8つの前奏曲》も入っているので、結構高い分売盤を買い集めるよりも、全集盤を1つ買う方が良さそう。

Messiaen-Catalogue D'oiseauxMessiaen-Catalogue D'oiseaux
(2000/08/22)
Roger Muraro

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私が昔買ったNAXOSのアウストボ盤は、全体的にタッチと音があまり鋭くないせいか、音の線も音楽もややぼんやりした感じがする。
冒頭に収録されている”Petites esquisses d'oiseaux”から聴き始めたのが良くなかったのかも。
その頃は、まだメシアンの音楽に慣れていなかったこともあり、平板でどれも似たような音楽に聴こえて、《鳥のカタログ》を聴く頃にはすっかり集中力がなくなってしまっていた。
メシアンのピアノ作品も聴き慣れたので、今聴き直せば昔とは違った印象になるのかもしれない。

Catalogue D'Oiseaux / Petites Esquisses D'Oiseaux [CD, Import]Catalogue D'Oiseaux / Petites Esquisses D'Oiseaux [CD, Import]
(1998/3/5)
Haakon Austb

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tag : メシアン ウゴルスキ アウストボ ムラロ

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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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