ジェシ-・ノーマン『Jessye Norman Sings Michel Legrand : I Was Born in Love With You』

2013.05.24 10:00| ♪ 管弦楽曲/声楽曲
最近、今まで集めてきた本とCDを大量処分するために選別中。
手放してから後悔しないように、念のため処分しようと思っているCDを聴いてみると、手元に残しておきたくなるCDがやっぱり見つかる。

随分昔、ジェジー・ノーマンのCDを集めていた時に買ったけれど、聴いた記憶がないルグラン作品集『Jessye Norman Sings Michel Legrand : I Was Born in Love With You』。
ルグラン=映画音楽というイメージだったので、オペラ歌手が歌う映画音楽というものにほとんど期待せずに聴き始めたけれど、これが思いがけない素敵なアルバム。

ピアニッシモで軽く口づさむようなノーマンの歌い方は、フランス人シャンソン歌手のちょっと鼻にかかったようなフランス語の歌い方とは全然違うし、ジャズ・シンガーのハスキーな声質とも違って、最初はかなり違和感が無きにしも非ず。
フォルテになると、いつものように馬鹿でかく(?)はないけれど、力強く弾力のある伸びやかな歌声になって、ノーマンらしい歌になる。
センチメンタルでムーディな歌い方とは違って、どちらかというと直線的なところがあるせいか、ベタベタした情緒性がなくて、これは意外と良いかも...と思えてきた。
レビューにもよく書かれている通り、ノーマンの歌には、好みがはっきりと分かれるに違いない。
もともとジャズボーカルというものが好きではなくほとんど聴かないのが幸いして、ノーマンの歌にすぐに慣れてしまった。
それに、サラ・ブライトマンがクラシックを歌ってもポップスにしか(私には)聴こえてこないのとは違って、ノーマンがルグランの曲を歌うと、意味深く、奥行きや広がりを感じるのは、やはりノーマンの歌唱力がなせる業というところだろうか。ルグラン自身も”ノーマンの歌唱力が素晴らしい”と言ってそうだし。

でも、最初に耳が惹きつけられてしまったのは、ノーマンの歌ではなくて、作曲家のルグラン自身が弾いているピアノ伴奏。
宝石のような硬質な輝きと、洗練された華麗さが煌くように流麗で美しくて、これはとっても素敵。
かなりムーディなんだけど、ベタベタとまとわりつくところがなくて品が良く、弱音の響きと歌いまわしの柔らかさは、ふんわりと絹や真綿で包み込まれるように心地良い。
《瞳の中に/Dans ses yeux》では、アクセントを利かせたスタイリッシュなピアノが颯爽としていて、なんてカッコイイこと。
いくつか入っているルグランの映画音楽は、映画の映像と切り離して音楽だけ聴いている方が、曲の良さがずっとよくわかる。
演奏はもちろん、曲の意味や雰囲気に合わせて変幻自在につけていく伴奏の内容自体が素晴らしい。ルグランのジャズアルバムがあれば、聴いてみたくなってきた。
伴奏しているアーティストが豪華で、ルグランのピアノに加えて、ベースがロン・カーター、ドラムはグラディー・テイト。ジャズのピアノ・トリオが伴奏。
曲によって、ピアノ・ソロかピアノ・トリオのどちらかで伴奏しているし、最初はピアノ・ソロで、続いてピアノ・トリオで伴奏する曲もあるので、ピアノ・ソロもピアノ・トリオも両方楽しめる。
ノーマンの歌&ルグランのピアノソロ&ジャズ・ピアノ・トリオと、この組み合わせが私のツボにぴったりはまっていた。


CDジャケットのノーマンのポートレートは、クラシックのCDジャケットのものとは違って、モノローンでとてもシック。もしかしたら、昔ジャケ買いしてしまったのかも。
国内盤のタイトルは、『おもいでの夏~ジェシー・ノーマン meets ミシェル・ルグラン』。
Sings Michel Legrand: I Was Born in Love With YouSings Michel Legrand: I Was Born in Love With You
(2000/02/08)
Michel Legrand、 他

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<収録曲>
1. 「おもいでの夏」~夏は知っている/The Summer Knows
2. 瞳の中に/Dans ses yeux
3. アイ・ウィル・セイ・グッバイ/Je vivrai sans toi
4. 「ハッピー・エンド」~これからの人生/What are you doing the rest of your life?
5. 「嵐が丘」~アイ・ウォズ・ボーン・イン・ラヴ・ウィズ・ユー/I was born in love with you (Theme from "Wuthering Heights")
6. 「水のなかの小さな太陽」~愛のささやき/Dis-moi
7. 嘆きの子供たち/Les enfants qui pleurent
8. 月と私/The Moon and I
9. セ・リュイ・ラ/Celui-la
10. 「華麗なる賭け」~風のささやき/The Windmills of your Mind
11. 「ロシュフォールの恋人たち」~ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング/You must believe in Spring (from "Les demoiselles de Rochefort")
12. リラのワルツ/La Valse des lilas
13. アフターソーツ/Afterthoughts
14. 「シェルブールの雨傘」~シェルブールの雨傘/Les Parapluies de Cherbourg
15. ビトゥイーン・イエスタデイ・アンド・トゥモロウ/Between yesterday and tomorrow
(ピアノ・ソロ伴奏:5,6,8,9,10,13,14)
(ピアノ・トリオ伴奏:1,2,3,4,7,11,12,15)

国内盤のボーナストラック:
16. 夏は知っている(フレンチ・ヴァージョン)
17. 愛の閃く時


収録曲は、曲名は知らなくても、どこかで聴いた曲が結構多い。
曲名と音楽がすぐに浮かぶ曲は、”You Must Believe In Spring”、”風のささやき”、”シェルブールの雨傘”。

”You Must Believe In Spring”
この曲はビル・エヴァンスのアルバムのタイトルにもなっているので、かなり有名かも。これは手持ちのエヴァンスの録音のなかでは一番好きなアルバム。
原曲は、カトリーヌ・ドヌーヴが主演したフランス映画「ロシュフォールの恋人たち」で使われているもので、ジャック・ドゥミ監督自らが「CHANSON DE MAXENCE(マクサンスの歌)」を作詞。
今は、原曲・原詩よりも、この英語版の曲名と英詩(作詞はアラン&マリリン・バーグマン)のほうが有名なのだそう。
歌詞の一節”Just think if Winter comes,Can Spring be far behind?”は、日本語で言うと”冬来たりなば、春遠からじ”というところ。(作品解説[JAZZYな生活])

エヴァンスの演奏を聴いた時のような痛切感はあまり感じないけれど、しみじみ~とした味わいがあって、これも良い感じ。
Jessye Norman - You must believe in spring (Michel Legrand)




”The Windmills of your Mind”(風のささやき)
1968年アメリカ映画「華麗なる賭け」の主題歌。
映画は見たことがないけれど、この曲はたしかポール・モーリアのCDで初めて聴いた覚えがある。
ポピュラー音楽の楽譜にもよく載っているので、自分でも弾いていた。
狭い範囲の鍵盤上を音符が行きつ戻りつするので、ほんとうに囁いているかのように聴こえる。

Jessye Norman The Windmills of your Mind - Les Moulins de mon coeur




”シェルブールの雨傘”
1964年のフランス映画。音楽は自分で弾いていたのでよく知っているけれど、映画は見たことがない。
カトリーヌ・ドヌーヴが主演したくらいは知っていた。でも、セリフがないミュージカル映画とは全然思っていなかった。
口ずさむように静かに始まり、徐々に動きが増してピアノ伴奏がアルペジオに変わって、最後はドラマティックに盛り上がってから、静かにフェードアウト。
ルグランのピアノ伴奏は、それだけ聴いていてもちゃんと曲になっているように、旋律・音型と表情がいろいろ変化していき、とても華麗でドラマティック。

Les Parapluies De Cherbourg- Michel Legrand & Jessye Norman




”The Summer Knows”
1971年アメリカ映画 「おもいでの夏」の主題歌。この映画は見たことも聴いたこともないけれど、この曲はどこかで聴いたような気がしないでも..。

Jessye Norman - The Summer Knows (Michel Legrand)


タグ:ルグラン ノーマン

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コメント

ジェシー・ノーマン

こんばんは。
ジェシー・ノーマンで思い出すのは。80年代後半の来日公演です。ピアノ伴奏のリサイタルでしたが、ことに印象的だったのは、アンコールの「献呈」と「あんたが欲しいの」でした。これらの曲のよさを教えてくれたと同時に、いまでもベストの歌唱だと思います。FMでエアチェックしたカセットテープは今もあります。
そんな彼女は、ポップスも得意ですよね。「シェルブールの雨傘」は初めて聴かせていただきましたが、やはり雰囲気がありますね。ドヌーヴの色香が漂ってきそうな歌です。

ノーマンのリサイタル

ポンコツスクーター様、こんばんは。

ノーマンのリサイタルといえば、私は1987年のヨーロッパリサイタルのライブ録音持ってます。
これも素晴らしいもので、昔は何十回とは言わず聴いてました。(これもそのうち記事に書こうと思ってます)
ピアノ伴奏は、シュヴァルツコップの伴奏者として有名だったジェフリー・パーソンズです。

この時は「献呈」と「あんたが欲しいの」(サティの「ジュ・トゥ・ヴー」のことですよね)は歌っていなかったのですが、スピリチュアル(黒人霊歌)は2曲歌っていました。アンコールでは黒人霊歌をよく歌っていたようです。
ノーマンのポップスというと、「アメイジンググレイス」とかクリスマス用ポピュラー曲をCDで聴いたことがあります。
この「シェルブールの雨傘」は、シックな品の良さのあるムーディーなところが良いですね!
それに、盛り上げ方が上手くて、結構ドラマティックな感じもしました。
ノーマンは、何を歌っても、やっぱりノーマンでした。

ルグラン

こんにちは!

「シェルブールの雨傘」しか知りません。作曲したのがルグランという作曲家で、ピアニストさんだとは知りませんでした。

ノーマンはこういう歌も録音していたんですね。歌い方がとても品があって良いです。オペラアリアを歌う時より、軽やかで爽やかです。

ジャズピアニストだったルグラン

Tea316さん、こんにちは。

ルグランは映画音楽界の大物ですが、ジャズピアニストだったとは私も知りませんでした。
調べてみると、『Legrand Jazz』というアルバムではマイルス・デイヴィスと録音してますし、コルトレーンやサラ・ヴォーンとかジャズ界の大物と共演しているという凄い人でした。
このアルバムのピアノ伴奏を聴いていると、それも納得できるくらいに素敵でした。

映画としてすこぶる評判が悪かった『ベルサイユのばら』の音楽も担当していたそうです。(これも知りませんでしたが)
映画は見ましたよ。宮廷風景や衣装はとても綺麗でしたが、ストーリーは原作マンガとは全然違っていて、パッとしませんでしたけど。そのせいか、音楽の方も全然記憶に残ってません。

ノーマンはポピュラーな曲を歌ってもやっぱり上手いですね。
センチメンタルに流れず、軽やかでもじんわり深みのある叙情感を感じます。
ポップな曲はあまり聴かないのですが、このアルバムは珍しく何回もリピートして聴いてます。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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