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アラウのベートーヴェン・ピアノソナタ全集盤
最近、アラウのベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集が次々と再発売されている。
アラウの全集は2種類。いずれもPhilipsから出ており、1960年代に録音した旧盤(ステレオ録音)と1984年~90年に録音した新盤(デジタル録音)。
最近再販されているのは、1960年代に録音した旧盤の方。この旧盤は、私が知っているもので3種類発売されているけれど、カップリング曲が違う。

(1)ピアノ・ソナタ全集、変奏曲集、ディアベリ変奏曲(1952年録音の旧盤):DECCA盤(2012年5月発売、12枚組)
1960年代に録音した変奏曲集も収録。ただし、ディアベリ変奏曲のみ1952年のモノラル録音(EMI音源だったはず)。
MP3ダウンロードでも購入可能。

Complete Piano SonatasComplete Piano Sonatas
(2012/05/08)
Claudio Arrau

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(2)ピアノ・ソナタ全集:PhiliPs Italy盤(2002年発売、2012年に再販。9枚組)
ピアノ・ソナタ全集のみ収録。変奏曲は入っていない。
2002年に一度発売された全集で、昨年再販されたもの。2002年版では、ブックレットはイタリア語のみ。
以前この2002年盤を買ったのは良いけれど、後で(3)の変奏曲・ピアノ協奏曲全集まで入った1999年版を見つけてそれも買ったので、ピアノ・ソナタ全集に関してはダブってしまった。
(同じ録音を持っていても仕方がないので、amazonのマーケットプレイスに出すとすぐに買い手が見つかった。アラウの全集を聴きたいと思っている人がいるというのが実感できて、なぜか嬉しかったりする。)

Son. Pf. N. 1-32 ArrauSon. Pf. N. 1-32 Arrau
(2012/09/25)
Claudio Arrau

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(3)ピアノ・ソナタ全集、変奏曲集、ディアベリ変奏曲(1985年録音の新盤)、ピアノ協奏曲全集(1960年代録音の旧盤)、三重協奏曲、ロンド(Op.51, No.2):Philips盤(1999年11月発売、14枚組)
ピアノ協奏曲全集は、ハイティンク指揮コンセルトヘボウ管との録音。ロンド(Op.51-2)と三重協奏曲も収録。
1960年代にPhilipsに録音したアラウのベートーヴェン作品が(たぶん)全て収録されている。
ディアベリ変奏曲のみ1985年の新盤を収録。(デジタル録音の新盤全集の方は、1952年録音のディアベリを収録)
すでに廃盤らしく、かなり高額のプレミアがついている。
米国居住者なら、MP3ダウンロードでも購入可能。(日本国内からは購入できないはず)

Complete Piano Sonatas & ConcertosComplete Piano Sonatas & Concertos
(1999/11/09)

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旧盤の録音のうち、標題付きの有名な7曲だけを収録した「7大ピアノ・ソナタ集」(国内盤)もある。
これもすでに廃盤で、USED品はプレミアムが上乗せされて高いので、再販されている全集盤を買った方がお得。
ベートーヴェン:7大ピアノソナタ集ベートーヴェン:7大ピアノソナタ集
(2006/05/24)
アラウ(クラウディオ)

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旧盤を聴き直していると、今までは感じなかったアラウの深い呼吸や間合いとぴったり合うものがあり、じんわり浸透してくるような感覚がする。
昔は、テンポが遅めで、リズム感も少し鈍いし、かなり感情移入が深くて重たいなあ..と思っていたのに、これも年をとったせいかも..。


(4)ピアノ・ソナタ全集(デジタル録音の新盤、1984~90年の録音)
この新盤の方はなかなか再発売されない。演奏に対する(海外の音楽界の)評価を物語っているのだろうか?
分売盤の方も輸入盤・国内盤ともほとんどが廃盤。
日本では、旧盤よりもこの新盤の方が昔から人気がある。アラウが日本で知られるようになったのは、晩年になってからで(私もそうだった)、晩年に録音した新譜が次々発売されていたし、評論家のセンセイ方も新盤を絶賛する人が多かった。
この新盤全集は、曲によって音質にかなりばらつきがある。(たしかNYで録音した演奏は音質があまり良くなかった)
スイスのラ・ショー・ド・フォン(La chaux-de-Fonds)のスタジオ録音が、澄み切ったピアノの音が異常なくらいに美しい。
ただし、すでに80歳代になっているので、録音年が後年になるにつれて、加齢による技術的な衰えが進んでいく。それがかなり私の耳についてしまうので、(数曲を除いて)ほとんど旧盤の方を聴いている。
でも、新盤のベートーヴェンを聴いていると、旧盤では決して聴きとることができないものがあるのは確か。
両方を聴いていると、アラウの長いピアニスト人生のなかで、年を経るにつれて失われたものと得られたものをいろいろと発見したり、感じとれるものがある。

Beethoven: Claudio ArrauBeethoven: Claudio Arrau
(2006/06/27)
Claudio Arrau

試聴ファイルなし



全集の分売盤以外に、抜粋盤としてピアノ・ソナタを数曲録音したEMI盤もある。
その他にもライブ録音・放送用録音の映像が数種類出ている。

(5)EMI録音集
アラウがPhilipsと契約する前の時代に、EMIに残した録音の集成盤。
ベートーヴェンについては、ガリエラと録音したピアノ協奏曲全集と、ピアノ・ソナタ10曲(NO.7,21,22,23,24,26,28,30,31,32)を収録。
ピアノ協奏曲は、Philips時代の録音よりもテンポが速めで躍動感があるので、第1番と第3番を聴くときはもっぱらこの録音。
ピアノ・ソナタはこもった音質で古ぼけた感じがするのが難点。EMI時代はまだ若かったので、速めのテンポとシャープなタッチで、若々しさに加えて、いくぶんクールな感じがする。
このBOXセットには、ベートーヴェン以外の録音もたくさん収録されている。
Philipsには録音していなかった曲や、Philips盤よりも好きな演奏(グリーグやシューマンのピアノ協奏曲など)がいろいろあって、これは結構楽しめる。
日本でもMP3ダウンロード購入可能。

Icon: Claudio Arrau-Virtuoso Philosopher of the PiIcon: Claudio Arrau-Virtuoso Philosopher of the Pi
(2011/02/28)
Claudio Arrau

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ライブ映像でよく見る(聴く)のは次の2つ。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタに限って言えば、安定した技巧と表現とのバランスが良いと個人的に思えるのは、スタジオ録音・実演とも1970年頃までのものが多い。

(6)ピアノ・ソナタ第32番(放送用録音)
アラウの32番ソナタの録音はスタジオ・ライブ録音とも多く、そのなかで一番良いと思ったのがこの演奏。
1970年の録音なので、Philipsの新盤よりも技術的に安定し、旧盤よりはディナーミクの変化がより滑らかで音楽の流れが良く、表現が深化して自然になっているような気がする。

アラウ & ソロモン (EMIクラシック・アーカイヴ) [DVD] アラウ & ソロモン (EMIクラシック・アーカイヴ) [DVD]
(2005/09/14)
ソロモン アラウ(クラウディオ)

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Arrau Beethoven Piano Sonata No. 32 - Paris, 1970




(7)ピアノ・ソナタのリサイタル映像
ベートーヴェンのピアノ・ソナタを集めたライブ映像なら、ドイツのボンで毎年9月に開催されるベートーヴェン・フェスティバルの1970年&1977年のリサイタルがDVDでリリースされている。
Disc1が1977年のライブ映像(カラー)。第3番、ワルトシュタイン、第32番。(74歳頃のリサイタルのせいか、ミスタッチが多いのが気になる)
Disc2が1970年のライブ映像(モノクロ)。第13番、月光ソナタ、告別ソナタ、熱情ソナタ、第30番のソナタ。カラーのライブ演奏に比べて、技術的な安定感があって、安心して聴ける。

Claudio Arrau: Beethoven Piano Sonatas [DVD] [Import]Claudio Arrau: Beethoven Piano Sonatas [DVD] [Import]
(2011/06/27)
Claudio Arrau

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Claudio Arrau Beethoven "Appassionata" (Full)



tag : ベートーヴェン アラウ

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アラウのベートーヴェン、その他
このあいだ、NAXOSオンラインで熱情の2楽章を聞き比べました。
中でもアラウのヘンスラーから出ているシュベツィンゲン音楽祭での73年の演奏が落ち着きを持っていてとても良かった。
機会があれば御一聴を。

アラウに関してはエントリーでドビュシーの月の光を取り上げられた際に聴かせていただいて興味を持ちました。
今、図書館から「アラウとの対話」を借りて読んでいるところです。

また、月の光ですがNAXOSで聞き比べてよかったものも紹介します。
1.ギーゼキング BBC LEGENDS 1953か1956年のライブ録音
2.ジャン・エフラム・バウゼ CHANDOSの最新録音
3.アール・ワイルド IVORY CLASSICのオムニバス盤

長くなって申し訳ないのですが、菊池寛と小島征二郎のエントリーもとても興味深いものでした。
福田和也の「怪物伝」という本にとりあげられた菊池寛は何事にも無頓着な人物としてとりあげられていたので、自分の中にそうした人物を描いていたのですが、どうやらそれだけではないようですね。
今度小説も読んでみます。


それでは
アラウ、菊池寛について
すーさん様、こんばんは。
ご訪問、コメントどうもありがとうございます。

シュベツィンゲン音楽祭のCDは数年前に購入しました。
特にブラームスのヘンデルヴァリエーションはとても気に入ってます。
熱情ソナタの方はよく覚えていませんが、昔書いた記事を読むと、おっしゃるとおり落ち着いた演奏でしたね。
今の私が熱情ソナタで好きなのは、レーゼルとポリーニ(1986年)のライブ録音になります。

「アラウとの対話」は、アラウのことを知るにはとても貴重な本です。
録音を聴いていれば、思い当たる話がいろいろ出てきますし、本を読んでから録音を聴くと、なぜそういう弾き方をしているのか、わかる部分もいろいろありました。

アラウの「月の光」は、他の誰にも弾けないような異色の演奏なので、別の惑星の「月の光」が見えてくるような気がしてきます。
異聴盤はあまり多くは聴いていませんが、アラウ以外で最も好きなのは、スティーブン・ハフの新譜に収録されていたスタジオ録音です。

福田氏の「怪物伝」は読んだことがないのですが、どのように描かれているのか興味があります。教えてくださってありがとうございます。
菊池寛は、極めて合理的な発想と行動をとる人だと思いますので、それが一見無頓着に見えるのかもしれませんね。
菊池寛の評伝は他にもいろいろ出ていますが、私が一番説得力を感じたのは松本清張の「形影」でした。
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
お返事です
お久しぶりです。

かなり落ち着かれたご様子のようにお見受けいたしますが、そうであれば何よりです。

ご指摘のとおり、「ディアベリ変奏曲」は、「ディアベッリ変奏曲」とも表記しますね。
原語どおりに表記する場合は、「ディアベッリ」の方が正しいように思います。実際「ディアベッリ」と発音する人はあまり見かけませんが...。

「第2楽章 adagio molto」というのは、第32番のピアノ・ソナタのことですね。
ベートーヴェンのそれまでのピアノ音楽や人生に対する答えが、このソナタに篭められているように思います。
エンディングは、明鏡止水の境地の如く、澄み切った清明さと調和に満ちています。
望むべくは、このような心境に到達したいものです。

お礼
お返事ありがとうございました。

Yoshimiさんのブログに出会う前までは、クラッシク音楽を積極的に聴くことは、ほとんどなかったと思います。

今も特にクラシック音楽に興味があるという訳ではないのですが、静かに何か他の事に集中したい時、気分がすぐれず静かにしていたい時、なぜかクラッシク音楽を流しておきたくなります。ほぼ毎週なにかしら聞いていると思います。ただし、あまり沢山は持っていなにので、同じアルバムの曲ばかりですが。。。

特に、ピアノ・ソロ、またはバイオリン無伴奏が好みです。
図書館には、沢山のCDがありますが、ソロなのか無伴奏なのか、判別が難しいです。また、解説書の借用の有無をいつも聞かれるのですが、きっと解説書を読みながら聞かれる方も多いようです。僕には少し抵抗があり、聞くだけにしています。

また時々、こちらのブログを参考にさせて頂ければと思っています。

無伴奏曲というと
Hiroshiさん、こんにちは。

山ほどあるクラシック音楽のなかで、愛聴できる曲と演奏家に出会えたのは、とても素敵なことですね。

ヴァイオリンの無伴奏曲で有名なものは、バッハ、イザイ、パガニーニ、バルトーク、ヒンデミットなど多くはありませんから、すぐにわかるようになると思います。
それ以外の曲なら、”無伴奏””Unaccompanied”と曲名に書かれていなくても、ジャケット後面に書かれている演奏者名にヴァイオリニスト以外の名前(指揮者&オケ、ピアノ伴奏者など)が無ければ、無伴奏曲である可能性は高いと思います

私の場合は、解説書は必ず読みます。
演奏者や作曲者に関するエピソード、作曲経緯・解説など、私にとって参考になる情報がとても多いですから。
情報源はCD解説書以外にも数多くありますから、その解説を読んだとしても、偏った先入観を持つ可能性は低いですね。

個人的な趣味と思い入れで書いている記事ですが、音楽に関して何かお役に立つことがあれば幸いです。
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プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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