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ツィンマーマン&パーチェ ~ ヒンデミット/ヴァイオリンソナタ
フランク・ペーター・ツィンマーマンがヒンデミットイヤー(2013年)にリリースした『ヒンデミット作品集』。
このアルバムのヴァイオリン協奏曲はレコ芸の「第51回レコード・アカデミー賞」のノミネート曲だったし、2013年のドイツ批評家賞にも選ばれている。
そういえば、五嶋みどり&エッシェンバッハ指揮北ドイツ放送響のヒンデミットアルバムが、第56回グラミー賞(最優秀クラシック・コンペンディアム賞)を受賞していた。


パウル・ヒンデミット : ヴァイオリン作品集 [SACD hybrid] [輸入盤]パウル・ヒンデミット : ヴァイオリン作品集[SACD hybrid] [輸入盤]
(2013/06/10)
フランク・ペーター・ツィンマーマン (ヴァイオリン), エンリコ・パーチェ (ピアノ)、パーヴォ・ヤルヴィ指揮フランクフルト放送交響楽団

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新譜のジャケットデザインは、とてもセンスがいい。
カンディンスキー(か誰かの)の抽象画に少し似ているかも。
ダークでカラフルな色合いと幾何学的な構図が、ヒンデミット作品のイメージにぴったり。

<収録曲>
1. ヴァイオリン協奏曲 (1939)
  パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)(2009年9月録音)

2. 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ op.31-2 (1924)
3. ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 op.11-1 (1918)
4. ヴァイオリン・ソナタ ホ調 (1935)
5. ヴァイオリン・ソナタ ハ調 (1939)
  ピアノ伴奏;エンリコ・パーチェ (2012年5月録音)


ヴァイオリン協奏曲 (1939)

Hindemith: Violin Concerto / Zimmermann · P. Järvi · Berliner Philharmoniker
これはライブ演奏の抜粋映像。(録音とはオケが違う)



どの曲もヒンデミット独特の和声と旋律が盛り込まれているので、聴けばすぐにヒンデミットだとわかる。
弦楽曲はあまり聴かないので、ヴァイオリン協奏曲と無伴奏ヴァイオリンソナタは好きな曲とはいえないとしても、ヴァイオリン協奏曲の方は、何回も聴いていると、耳が慣れたせいか、意外と面白く聴けるようになってきた。

無伴奏ソナタは、和声の響きに独特の美しさを感じるピアノ独奏曲とは違って、和声よりも旋律自体の動きが面白い。
なぜか第4楽章はどこかで聴いたことのある調性音楽の旋律で始まる。”Fünf Variationen über Das Lied Komm Lieber Mai Von Mozart”というタイトルが付いているので、これはモーツァルトの曲。
無伴奏の方は、もともと苦手な形式なので、ヴァイオリンソナタの方がやっぱり聴きやすい。
収録曲のなかでは、ヴァイオリンソナタが比較的叙情性が強く、ピアノ独奏曲(ルードゥス・トナリスとか)で使われているのに似たような和声や旋律も出てくる。
この曲を聴きたいからCDをとりだす...ということはあまりないとしても、聴けばとっても楽しめて必ず満足できるほどには好きな曲。

パーチェがピアノ伴奏しているヴァイオリンソナタは、最初はかなりとっつきが悪かった。
馬が疾走するようなラフマニノフの《パガニーニ狂詩曲》風の部分や、ブロッホの《コンチェルトグロッソ》(の調性感を崩したような)を連想するようなところがあったり、ヒンデミットの《ピアノ・ソナタ第3番》とあい通じるような旋律やリズムが出てきたりして、繰り返し聴いていると、だんだん面白くなってきた。

即物的と称されることもあるヒンデミットの作品は、感情に訴えるような音楽ではないので、叙情感もクールで醒めている。
旋律の歌謡性が薄くてロマンティックではない叙情感のある旋律、メカニカルなリズム感、ヒンデミットが生きていた時代の都市の喧騒を連想するような騒々しい音遣いとかは、ヒンデミットらしいところ。
旋律が印象に残る程度にはわかりやすく、硬質のピアノの音色と滑らかなヴィヴラートのかかったヴァイオリンの音色とが対照的で、対位法的なかけあいも鮮やか。
でも、無調ではないので、現代的な乾いた叙情感というか、漠然とした不安感や好奇心・不可思議な眼差しを感じさせるような独特の和声が美しい。
頭で考えながら聴くというか、古典と現代とが共存/錯綜するようなモダンな作風を、感情にシンクロさせることなく、楽しむ....という感じ。

初期の作風は後期ロマン主義の影響があるらしく、1918年のヴァイオリン・ソナタ変ホ長調の旋律も、ヒンデミットにしてはかなりロマンティックでわかりやすい。
ホ調(1935年)、ハ調(1939年)のヴァイオリンソナタとなると、調性感がやや曖昧になり、ヒンデミットらしい不可思議な雰囲気漂う乾いた叙情感が美しい。
ハ調のソナタの第2楽章はフーガ。ピアノ・ソナタに出てくるフーガを連想する。



ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 op.11の1 (1918)

ツィンマーマン&パーチェのヒンデミット演奏の音源がYoutubeでは見つからなかったけれど、(珍しく面白いデュオの)クレーメルとガヴリーロフが、ヒンデミットのヴァイオリンソナタ第1番を弾いている音源を発見。

HINDEMITH Violin Sonata No.1 Op.11 - G.Kremer, A.Gavrilov, 1979



ヴァイオリン・ソナタ ホ調 (1935)
第3楽章の馬が疾走するような旋律とリズムは、ラフマニノフの《パガニーニ狂詩曲の第20変奏に少し似ている。

Paul Hindemith: Sonata per violino e pianoforte No.3 (1935)




ヴァイオリン・ソナタ ハ調 (1939)

第3楽章に出てくる旋律(9:45~)は、ブロッホの新古典風な 《コンチェルトグロッソ第1番》に出てくる旋律とそっくり。
Hindemith-Violin Sonata in C (1939) (Complete)



<ツィンマーマンのインタビュー>
レコード芸術(2014年4月号)に載っていたツィンマーマンのインタビューのなかに、この『ヒンデミット作品集』のことが触れられている。

- ディスクの選曲について
1918年に書かれた変ホ長調のソナタには、ドビュッシーの影響が見られます。
その後、24年作の無伴奏ソナタの頃になると、だいぶ新しい要素が入ってきます。ヒンデミットは、その後、新しい作風を追求する姿勢を捨ててしまい、ロマンティックな方向へと戻っていきます。そうした作風の変遷がこのディスクから見てとることができると思います。

39年作のヴァイオリン協奏曲は、オイストラフ、フックスの素晴らしい録音は、ステレオLP初期のもので、最近は取り上げる人が少ないので、残念に思っていました。

ヘッセンのhr響は、ヒンデミットは私たちの音楽だという気持ちが強いと思います。ヒンデミットの作品を好んでいて、得意としています。

(もともとヒンデミットのアルバムを構想していのもので)協奏曲を収録した2009年が出発点で、「どういう風にまとめようか。」とヤルヴィとも話をしました。セールスのことを考えるとバルトークの作品を入れようという話も出ましたが、プロデューサーサイトから、「ヒンデミットだけに絞りたい」という話になり、最終的にこの形に落ち着きました。没後50年の年にリリースすることができて嬉しく思っています。



- ヒンデミットのヴァイオリン作品について
ヒンデミットは、ヴァイオリンも演奏しましたし、楽器のことをとてもよく理解していたと思います。ヴァイオリンやヴィオラだけでなく、いろいろな楽器を上手く演奏できた人ですから、つねに演奏者のことをよく考えて書かれていると思います。ヒンデミットの作品については、健康的で新鮮なイメージを持っています。

ヒンデミットは、1930年代にドイツを去り、その後戦争が始まり、戦後、ドイツで忘れられた存在になってしまいました。さらに悪いことには、あのアドルノがヒンデミットについて、とても悪い批評を書きました。「非常に古臭い作風で今日の音楽ではない」。その後、ドイツでヒンデミットがあまり演奏されなくなりました。ドイツの人々がヒンデミットの音楽にである機会がとても少ないことが残念でなりません。


- 演奏会のプログラムについて
日本では、あまり知られていない作品を紹介したいと思っています。実は、日本サイトの事情として、それを許してくれないところがあります。「ドイツの有名なヴァイオリニストは、ドイツの有名な曲を弾くべきだ」という固定観念を日本サイドが持っているように感じることがあります。できれば、そうした固定観念を破って、日本の音楽ファンに、まだ知られていない佳曲を紹介できたらと思っています。


<関連記事>
ヒンデミット/ピアノ・ソナタ第3番

<作品解説(五嶋みどり/みどり通信)>
ソナタ 変ホ長調 作品11-1(1918年作曲)
ソナタ ホ長調  (1935年作曲)
ソナタ ハ長調  (1939年作曲)

tag : ヒンデミット ツィンマーマン パーチェ

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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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