*All archives*



メシアン/神の現存のための3つの小典礼
《鳥たちの目覚め》を収録したケント・ナガノとイヴォン・ロリオのエラート盤は、《神の現存のための3つの小典礼》をカップリング。
《神の現存のための3つの小典礼》に限らず、メシアンの合唱曲も、バロック~現代の宗教音楽も、一部の曲を曲を除いては、ほとんど聴くことがない。

この《神の現存のための3つの小典礼》は宗教曲、それも現代曲なので、とっつきにくくて合わないだろうと思っていたけれど、ピアノの音が冒頭から聴こえてきたせいか、この曲の敷居が一気に低くなってしまった。
意外なくらい、自然と耳に入ってくるのは、メシアンらしい旋律と和声の響きを聴き慣れていることもあるし、私の好きな女声合唱とピアノの両方の周波数の高い音が溶け合って、ソノリティそのものがとても美しい。
それに、音楽自体がとても面白い。
演奏時間は全3楽章で35分前後。3つの楽章がかなり異なる楽想で、それぞれ旋律・色彩感・リズム・ソノリティはやはりメシアン独特。
宗教音楽といえども、メシアンの曲とは、音楽的な部分ではなぜか波長の合うことが多いので、この曲も全く退屈しない。

メシアン:鳥たちの目覚めメシアン:鳥たちの目覚め
(1996/05/25)
ナガノ(ケント),フランス国立管弦楽団, ロリオ(イボンヌ), ロリオ(ジャンヌ), センドレズ(ミシェル), エリィ(ルック)

試聴する(amazon.de)


作品解説はメシアン自身のもの。
《神の現存のための3つの小典礼》は、従来の宗教音楽・典礼音楽のアカデミズムとは全く異なる音楽だったため、1945年の初演ではかなり攻撃的な批判が湧き起こり、「一部同業者の精神と一部批評家の記事の中にスキャンダルを呼び起こした」とメシアンは語っている。

この曲の色彩は、メシアンの言葉によれば「青、赤、赤い縞の入った青、オレンジの斑点炒りの薄紫色と灰色、緑がちりばめられ金色で縁取りされた青、緋色、ヒヤシンス色、紫色、宝石のきらめき」。
使われている楽器が多彩で、ソノリティも独特。弦楽器に加えて、オンドマルトノ、チェレスタ、ヴィヴラフォン、ピアノ、マラカス、タム・タム、中国のシンバルを使っている。
チェレスタ・ヴィヴラフォン・ピアノでは、打楽器的奏法を使うことで、バリの「ガムラン」的な響きも聴こえる。
それに、逆噴射するかのような旋律、単純なリズムと単旋律のオスティナートなど、「シュールレアリズム的な外観」を持っているけれど、主要理念は「神の現存」。


第1楽章:内なる対話のアンティフォナ(神は私たちの中に現存する……)
「私を目覚めさせないで下さい。小鳥の歌うときが来ました!」という言葉引用されている。
第1部と第3部では、《鳥のカタログ》を連想するような、「鳥の歌」の旋律をピアノが弾いている。
このピアノ伴奏(と弦楽伴奏)をバックに、やや無調風の女声合唱が、不気味さと神秘性とを漂わせて、なんとも言えない独特の美しさ。
中間部では、テンポが上がり、音も増える。女声合唱はまるでお経を唱えるような旋律とリズムになり、符点が付けられたリズム・カノンを弾くヴィヴラフォン・ピアノ・ピッツィカートの弦楽器・マラカスが加わり、それらが渾然一体となって、賑やかに。

Olivier Messiaen — Trois petites liturgies, I. Antienne de la conversation intérieure




第2楽章:御言葉のセクエンツィア、神のカンティクム(神は自らの中に現存する……)
冒頭の旋律は、まるでジョン・ラターの音楽のように明るく爽やかな旋律。
女声合唱の歓喜に満ちたと輝きに満ちた旋律と、それと一体となったように、宇宙的な不思議な響きが錯綜する伴奏には、豊満・豊饒感があり、《トゥランガリーラ交響曲》を連想する。
特に弦楽器以外の楽器の存在感が大きく、その旋律や響きがそれぞれ独特で一風変わっている。ピアノパートの動きがかなり目まぐるしく、旋律、リズム、奏法とも多彩。
時々逆噴射するような”ビュ~ン”という音が聴こえてくる。これがシンセサイザー風のテクノ的な響きで面白い。(楽器は何だろう?)

Olivier Messiaen — Trois petites liturgies, II. Séquence du Verbe, Cantique Divin




第3楽章:愛による偏在のプサルモディア(神は万物の中に現存する……)
第1部と第3部では、再び女声合唱がお経のように歌詞を唱えていて、これが得体の知れない超越的な何かが迫ってくるようなものを感じる。
何かを呼び起こそう、引寄せようとしている呪文みたいに聴こえるせいか、少しオカルトチック(?)なオドロオドロしさを感じないでもない。
中間部は緩徐部となり、「愛と畏敬の祈り」。第1楽章のような静謐さと神秘的な雰囲気は、主題部・再現部ととても鮮やかなコントラスト。
終盤になると、女声合唱が美しいアルペジオの旋律を歌い始める。その伴奏は、合唱に調和した旋律と不調和な旋律が混在して、全体的にかなり混沌としてくる。最後に、再び静寂さに回帰してエンディング。

Olivier Messiaen — Trois petites liturgies, III. Psalmodie de l'Ubiquité par amour



tag : メシアン ナガノ ロリオ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
Secret
(非公開コメント受付中)

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。