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アラウ ~ モーツァルト/ピアノ作品集
モーツァルトは好きな作曲家ではないので聴くことはほとんどないけれど、それでも好きな作品というのがいくつかあって、そのほとんどが短調。
ピアノ協奏曲第20番と第23番(第2楽章)、珍しい短調のピアノ・ソナタ第8番、幻想曲ハ短調、ロンドイ短調。長調なら、ピアノ協奏曲第23番の両端楽章とシンフォニックな第25番。

アラウの数ある録音のなかで、モーツァルトはもう一つ人気がないらしい。
アラウのモーツァルトは、古典派というよりはロマン派的、ウィーン風というよりはドイツ風かも。
ゴツゴツとしたマルカート気味のタッチと起伏の多いアーティキュレーション、遅く揺れの多いテンポが独特。
軽快で流麗というよりは、重た目のリズムで、骨格がしっかりした、いささか無骨なモーツァルト。
モーツァルトにしては、ちょっとどころか、随分変わったところがある。
それにしても、不思議な透明感と親密感が漂っているのは、アラウの晩年のデジタル録音に共通した特徴。(ベートーヴェンやブラームスと違って)モーツァルトにはほとんど拘りを持っていない私には、そういうアラウのモーツァルトに惹かれるものがある・


ピアノ・ソナタ第8番。モーツァルトのピアノ・ソナタのなかで唯一好きな曲。
アラウの第8番の録音は、1964年の放送用録画と1984年のスタジオ録音が残っている。
それに、最近、1964年のタングルウッド音楽祭のライブ録音(試聴ファイルはこちら)もリリースされた。
たしか高校時代に、この曲のピアノ練習のお手本にするCDを探していた時、ちょうど朝日新聞の小さなコラムに、アラウのモーツァルトの批評が載っていた。
”陽だまりのなかで泣いているような”とかいう文章(記憶が定かではないけれど)を読んだがために、アラウのCDを買ったのだった。
でも、イメージしていたモーツァルトの演奏とは随分違う気がして、あまり聴かないまま、ラックの中で長い間眠っていた。

1964年の放送用録音(とタングルウッドのライブ録音)は、テンポも速めで指回りも良く、ゴツゴツしたタッチは軽快で力強い。
晩年のスタジオ録音は、大半のピアノ・ソナタが1980年代(80歳以降)の録音なので、指がもつれ気味でちょっと危なっかしい。
ベートーヴェンを聴いている時ほどひどく気にはならないとしても、このテンポの遅さと揺れの大きさ、ぽこぽことアップダウンする強弱は、技巧的な問題がかなり影響しているように思える。
第8番は1984年の録音なので、さらに後年に録音したソナタよりは、安定感はある。
タッチが昔よりも弱くなっているため、特に弱音の力が抜けて、時々すっと消え入ってしまいそう。
アラウの晩年のデジタル録音は、どれも音がとても美しい。このモーツァルトでもそれは同じ。
若い頃の力強さは影を潜めた代わりに、音にも演奏にも柔らかみがあり、しっとりした儚げな憂いが漂っている。
ずっと聴いていると、ピアノの音がまるで語りかけたり、歌っているように、だんだん聴こえてくるのが、ちょっと不思議な感覚。

Arrau Mozart Sonata No. 8 K. 310
Telecast of March 5th, 1964 Toronto, Canada.


Mozart by Arrau - (1st mvt) Sonata No 8 in A minor, K. 310 - Allegro maestoso (1984)




幸いにして、好きな幻想曲ニ短調(とハ短調)、ロンドイ短調は1973年の録音なので、技巧的な問題は全くない。
モーツァルトらしいかどうかはどうでも良いくらいに、ピアノの音も叙情も美しい。


もの哀しいロンドイ短調。長調の部分でも、”顔で笑って心で泣いて”いるような...。
Mozart by Arrau - Rondo in A minor, K. 511



幻想曲ニ短調。ハ短調もあるけれど、好きなのはこのニ短調、
Mozart by Arrau - Fantasy in D minor, K. 397



ロンドニ長調も、長調なのに珍しくわりと好きな曲。(たぶん、子供の頃に練習したので馴染んでいるから)
Mozart by Arrau - Rondo in D, K. 485



アラウのモーツァルトBOXは廉価盤(6枚組)は、2012年にリリース。
以前に発売されたBOXセット(7枚組・廃盤)と違うのは、CD枚数を1枚減らした分、アダージョと幻想曲ハ短調が未収録。
モーツァルトのピアノ・ソナタ全集のCDは全然持っていないし、抜粋盤も滅多に買わないのは、試聴ファイルをきいた段階で、聴きたくなくなってしまうので。
なぜかこのアラウのモーツァルトではそういうことが全くなく、全曲聴いてみても良いかも...と初めて思えた録音だった。
特に1973年に録音した4曲(ソナタ第14番、幻想曲2曲とロンドイ短調)は、技巧的に安定してタッチの切れもよく、”遅くて重たい”モーツァルトとは違う。これが60年代の全盛期に弾いていたアラウのモーツァルトに近いのでは。


モーツァルト作品集BOX(6枚組・廉価盤)
Die Klaviersonaten Claudio Arrau Spielt MozartDie Klaviersonaten Claudio Arrau Spielt Mozart
(2012/03/13)
Claudio Arrau

試聴ファイルなし



モーツァルト作品集BOX(7枚組・廃盤)
Mozart: Works for PianoMozart: Works for Piano
(2006/06/27)
Claudio Arrau

試聴ファイル


<録音年>
Piano Sonata in C: KV 279 / 189 d [No. 1](1988)
Piano Sonata in F: KV 280 / 189 e [No. 2(1988)
Piano Sonata in B flat: KV 281 / 189 f [No. 3](1988)
Piano Sonata in E flat: KV 282 / 189 g [No. 4](1985)
Piano Sonata in G major: KV 283 / 189 h e [No. 5] (1985)
Piano Sonata in D - Dürnitz: KV 284 / 195 b [No. 6](1987)
Piano Sonata in C: KV 309 / 184 b [No. 7](1986)
Piano Sonata in A minor: KV 310 / 300 d [No. 8](1984)
Piano Sonata in D: KV 311 / 284 c [No. 9](1986)
Piano Sonata in C: KV 330 / 300 h [No.10](1984)
Piano Sonata in A: KV 331 / 300 i [No.11](1986)
Piano Sonata in F: KV 332 / 300 k [No.12](1985)
Piano Sonata in B flat: KV 333 / 315 c [No.13](1985)
Piano Sonata in C minor: KV 457 [No.14](1973)
Piano Sonata in F: KV 533 & 494 [No.15](1987)
Piano Sonata in C - For beginners: KV 545 [No.16](1985)
Piano Sonata in B flat: KV 570 [No.17](1983)
Piano Sonata in D: KV 576 [No.18] (1983)
Adagio in B minor: KV 540(1983)
Fantasy in D minor: KV 397(1973)
Fantasy in C minor: KV 475(1973)
Rondo in D: KV 485(1984)
Rondo in A minor: KV 511(1973)

tag : モーツァルト アラウ

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はじめまして
アラウさんのモーツァルトは、初めて聴きました。
わたしはモーツァルトのソナタを弾くのが好きなのですが、一番好きなのは8番です。
(8番は弾けませんが…)
リパッティ、ピリス、グールド、ハイドシェックさんのを持っていますが、
アラウさんの8番はちょっと間違っているところもあるような、波打つような危なげな感じが聴き入ってしまいました。
いろんな演奏の仕方があって、それぞれ素敵ですね。
教えていただいてありがとうございます。
アラウ独特のモーツァルトです
LeafPie様、はじめまして。
ご訪問、コメントどうもありがとうございます。

モーツァルトは中学・高校時代に何曲か弾きましたが、第8番だけは好きでしたね。左手の練習にもなりました。
アラウは、かなり高齢の時の録音なので、タッチが不安定なために”波打つような危なげな感じ”になっているではないかと思います。
好みは分かれるでしょうが、アラウの場合は、テクニカルなところではなく、独特のソノリティと透明感・叙情感といったところを聴くのが良いでしょうね。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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