スホーンデルヴルト&アンサンブル・クリストフォリ ~ ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番&第5番「皇帝」(古楽器による試演版) 

2013, 09. 26 (Thu) 12:00

私は全然知らなかったアルテュール・スホーンデルヴルトは、オランダ出身のフォルテピアノ奏者。
古楽器アンサンブルのクリストフォリとベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を録音している。
<音のタイル張り舗道。>ブログの記事「息衝く「皇帝」。スホーンデルヴルトによる驚くべき試演版...[2005]」で、「皇帝」と第4番の録音が紹介されていて、とても興味を引かれたので、フォルテピアノの演奏とはいえ、珍しく試聴ファイルを聴いてみた。

Piano Concerto 4&5Piano Concerto 4&5
(2005/06/02)
Arthur Schoonderwoerd (fortepiano & musical direction),Cristofori

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outereレーベルの試聴音源(こちらの方が試聴時間が長い)
ピアノ協奏曲全集は分売盤で3枚。それぞれのジャケットに肖像画が書かれている。
一番印象的なのが、この第4番&第5番の絵。男装の麗人のような人物(もともと男性かも?)と構図は、瞬間を切り取った写真のようでもあり、絵の人物がこちらをじっと見つめているような気になってくる。

昔、ガーディナー&レヴィンが古楽オケとフォルテピアノで演奏した「皇帝」のCDを買って聴いたことがある。
これは全く好きになれずに、やっぱりベートーヴェンは現代楽器で聴くのが一番...と思ったものだった。
でも、このスホーンデルヴルトのベートーヴェンを聴くと、それとは全く違っている。
タッチが強すぎず、音がとても綺麗だし、滑らかで細やかな起伏で自然な流れを感じさせる表現のせいか、全く抵抗無く聴けるし、何度でも聴きたくなる。
現代ピアノとはまた違った雰囲気がするので、同じ曲なのにまるで違う曲のようにも聴こえてくる。
この古楽アンサンブルの響きは、フレットワークがヴィオラ・ダ・ガンバで演奏したバッハの《フーガの技法》を聴いた時と同じように、昔懐かしい田舎風景や草いきれの匂いを感じさせる。この音の感触はかなり好き。

全体的に軽やかで透明感のある明るい色調の演奏なので、第4番の第2楽章は軽すぎる気がする。
この楽章だけは、瞑想的な静寂さと深みが強い現代ピアノの響きと演奏で聴きたくなる。

スホーンデルヴルト(何度書いても、彼の名前はなかなか覚えられない...)のベートーヴェン全集のユニークな特徴は、ベートーヴェンのパトロンであったロブコヴィッツ侯爵邸のサロンで行われたという1807年の「試演」時の演奏環境と楽器編成を再現している点。J.フリッツ製作(1810年頃)のフォルテピアノを使い、小規模編成の古楽オケで各パートの奏者は管楽器・弦楽器も1人らしい。(詳しい情報はブックレットを見ていないでよくわからない)

第4番のピアノパートの楽譜については、私が知っている限り2種類のバージョンがある。
普通演奏されるのは、1806年に書かれた楽譜。
もう一つは、1808年の公開演奏としての初演時にベートーヴェンが弾いたもので、写譜師が書いた楽譜にベートーヴェンの直筆注釈が書き込まれている。
これをベートーヴェン研究家のバリー・クーパーがまとめ、「改訂版」として最近出版された。
この改訂版の演奏は、ロナルド・ブラウティハムがBISに2009年に録音している。
ブラウティハムは、ベートーヴェンのピアノソナタ全集ではフォルテピアノを弾いていたが、このピアノ協奏曲全集ではコンサートグランドを弾いている。
楽譜を見なくても聴いただけで、通常の演奏よりフレーズの装飾が多いのがわかる。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第4番 他 (Beethoven : Piano Concertos / Ronald Brautigam) (SACD Hybrid)]ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第4番 他 (Beethoven : Piano Concertos / Ronald Brautigam) (SACD Hybrid)
(2009/12/08)
ブラウティハム、パロット&ノールショピング響

試聴する(amaozon.uk)
<過去記事>ブラウティハム~ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番(1808年改訂版)、ピアノ協奏曲ニ長調(ヴァイオリン協奏曲のピアノ編曲版)


スホーンデルヴルトの「試演版」は、1807年にロブコヴィッツ侯爵邸宅で行われた内輪(privately)の演奏会。
一方、ブラウティハムが弾いた「改訂版」は、1808年の初演に使われた楽譜を元にしているので、おそらく同じものではない。そのうちスホーンデルヴルトのCDを手に入れれば、それを確認できるはず。


これは、「皇帝」の第1楽章。試聴ファイルで聴く以上に、古楽器とは思えないほどシンフォニックで力強い感じがする。
Beethoven - Piano Concerto No. 5 in E-Flat Major, Op. 73, "Emperor": I. Allegro


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2 Comments

Tea316  

「試演版」なのですね…

いや~、これは古楽といえども、かなり個性的な部類の(?)古楽ではないでしょうか?
「試演版」ということで、さらに編成がこじんまりしている…20人くらいですか?

モダンを聴きなれているので(日本ではベートーヴェンのピアノ協奏曲、特に皇帝は頻繁に演奏されてますものね)、かなり新鮮に響いてきて面白いです。即興性と華麗さと典雅さとが交じり合って、とっても楽しいベートーヴェンです。

う~ん、フォルテピアノって良い演奏家が演奏すると、やっぱり素敵です!!

2013/09/27 (Fri) 15:02 | EDIT | REPLY |   

yoshimi  

ユニークで斬新なベートーヴェンでした

Tea316様、こんにちは。

古楽演奏はチェンバロを少し聴いているくらいで、全然詳しくないのですが、いろいろ情報を集めてみると、おっしゃる通り、これは極めつきユニークでオリジナリティがある演奏のようです。

試聴ファイルだけ聴いていても、古楽オケとフォルテピアノの響きのバランスも良くて、シンフォニックで力強く聴こえます。
ソノリティと雰囲気も、モダン楽器とは違った優雅さと軽やかさに透明感が加わって、ほんとに面白いですよね!
Youtubeで「皇帝」の音源を聴いてみると、この演奏の面白さと新鮮さがずっとよくわかりました。

演奏環境と古楽オケの編成(20人くらいです)を、ベートーヴェンの試演時の状況と同等になるように設定したらしく、室内楽的な空間で交響曲を聴いているような響きになっているのかもしれません。
フォルテピアノは元々好きな楽器ではないのですが、この演奏なら何度も聴きたくなってきますね。
ようやく”音楽の秋”になりつつあるので、CDの購買意欲が増しているので困ってしまいますが、やっぱりこのCDも買うことになりそうです。

2013/09/27 (Fri) 19:59 | EDIT | REPLY |   

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