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メシアン/ヴァイオリンとピアノのための《主題と変奏》、《幻想曲》
DGのメシアン全集BOX『Oliver Messiaen Complete Edition』が早速届いたので、ピアノソロ、室内楽曲、歌曲を少しずつ聴いている。
スリムでコンパクトなBOXセットは、真っ白な外装箱が綺麗。
CDの紙ケースはペラペラで薄いけれど、ブックレットは全部で400頁近くと大部。
ブックレットは、フランス語と英語表記なので、索引・トラックリスト・歌詞を除けば、英語の作品解説は実質的に110頁ほど。
作品解説の筆者は、メシアン、ロリオ、その他の研究者/評論家(らしき人)。
メシアンの解説は、その作品を発想したときの様子など、作者自身にしか語れないことが書かれていたりするので、一番興味を惹かれる。

Oliver Messiaen Complete EditionOliver Messiaen Complete Edition
(2013/06/06)
Various Artists

試聴ファイル(allmusic.com)
収録曲リスト(HMV)

メシアンの数少ない室内楽曲のなかで一番有名なのは、《世の終わりのための四重奏曲》。
第二次世界大戦中、ドイツ軍の捕虜収容所で作曲・初演されたエピソードは有名。
その他に演奏機会が比較的多い曲のひとつらしいのが、ヴァイオリンとピアノのための《主題と変奏/Theme and Variation》と最近発見された《幻想曲/Fantaisie》。
いずれも1930年代初めに書かれたメシアン初期の作品。
メシアンは1932年にピアノ独奏曲《おどけた幻想曲(ファンタジー・ブルレスク)/Fantaisie burlesque》という曲も書いている。
BOXセットの収録音源の奏者は、《主題と変奏》がクレーメル&アルゲリッチ、《幻想曲》がホープ&ヴェルムーラン、《おどけた幻想曲》はムラロ。


《主題と変奏》(1932年)
メシアンが最初に結婚したヴァイオリニスト、クレール・デルボスへの結婚の贈り物。
作品解説によると、7+7+14小節で主題が提示され、第3旋法を使っているので、全音から半音へ交代しながら上昇する。どの曲も展開部がなく最初の4つの変奏は徐々にテンポが加速し装飾されていき、最後の第5・第6変奏でオクターブで跳躍して高揚する。

実際聴いてみると、主題は不安げな憂いを帯びて静謐。ミステリアスな雰囲気もする。
変奏に入ると、テンポが上がって、音が増えて(特にピアノ伴奏)、動きも多くなっていく。
(たぶん)第5・第6変奏に入ると、元のゆったりしたテンポに戻り、静寂さではあっても力強いタッチで主題を回想する。ピアノ伴奏のオクターブ(らしき)の和音が荘重感を出している。最後は、リタルダンドしながらフェードアウト。
主題もどの変奏も調性感があるのでとても聴きやすい。
もうこの初期作品からピアノパートがかなり凝っている。
時々、フランクやヤナーチェクの音楽に似たようなものを感じる。


Messiaen : Theme and Variation for Violin and Piano (Janine Jansen)
Violin : Janine Jansen,Piano : Itamar Golan(Live on May13,2011,Paris)



《幻想曲》(1933年)
デルボスと演奏することを念頭に作曲し、1935年にメシアンとデルボスがパリで初演。
なぜか楽譜が出版されたのが2007年。イヴォンヌ・ロリオが楽譜を発見したという。

《主題と変奏》よりも躍動的で、モチーフの旋律はどれも印象的。
ピアノ伴奏が《主題と変奏》よりもずっと凝っていて、音色・ソノリティも書法も多彩。
後年の作品を連想するようなメシアン独特の旋律や和声が出てくるけれど、全体的に調性感が強くロマンティックな叙情感もあるのでとても聴きやすい。
冒頭主題はいかにもメシアン風の、威圧的というか、力強く何かが押し寄せてくるような畏怖感を感じる主題。
続いて、まるでフランクのヴァイオリンソナタのような叙情的な旋律に変わる。
海の波がさざめくように煌く音色のピアノ伴奏がとても綺麗でファンタジック。
この2つのモチーフが何度か交代していきながら、展開していく。
展開部では、ピアノ伴奏がオーケストラ伴奏風にシンフォニックになるところがあり、まるでメシアンの管弦楽曲を聴いているような気がしてくる。
最後は、ヴィルトオーソ的に華やかなCodaでエンディング。

《幻想曲》は、濃密な情念を稀薄にしたフランクのヴァイオリンソナタのような曲に思えたけれど、時に民族色を稀薄にしたフランス風(?)ヤナーチェクのようにも聴こえる。
歌曲《ハラウィ》では、ピアノ伴奏がほとんど独奏的(歌曲とデュエットしているような)なのに比べると、《主題と変奏》も《幻想曲》も、ピアノパートは華やかで装飾的ではあっても伴奏らしく聴こえる。

Tedi Papavrami violon, Momo Kodama piano, Messiaen Fantaisie


《幻想曲》のライブ映像のピアニストは、日本のメシアン奏者として有名な児玉桃さん。
第2主題のピアノパートがとても美しいし、他の部分も力強くて、印象的。
私にしては、珍しくも”女性ピアニスト”でソロ演奏を聴いてみたいと思った人。
『impressions - ドビュッシー作品集』を試聴すると、ドビュッシーとしては、音やタッチに独特のものがあり、音色とソノリティがとっても魅力的。
表現も、パッセージごとに起伏が明瞭につき、個性的で主張がはっきりしているように感じる。
ドビュッシー録音は全集盤をいろいろ集めてきたけれど、これは久しぶり惹かれるものを感じるドビュッシー。
メシアンの《みどり児イエスに注ぐ20のまなざし》も試聴してみると、クリアでシャープなタッチとソノリティで、力強くも明晰さを感じるところが私の好みに合っているかも。
ドビュッシーもメシアンも、両方ともCDで聴いてみたくなってきた。


<参考情報>
作曲家オリヴィエ・メシアン生誕100年ウェブサイト[Sony Music Foundation]
メシアンのメモリアルイヤー2008年に制作された記念サイト。
メシアンのバイオグラフィ、人物像、作曲技法、主な作品(一部)の紹介。わかりやすくて、入門編としてはわりと詳しい。
『メシアンってどんな人?』は、「作曲家」「オルガニスト」「鳥類学者」「カトリック信者」「教育者」という側面から、簡潔に説明したもの。
一番興味があるのが、「鳥類学者」としてのメシアン。
メシアンが来日した時に訪れた軽井沢で、4日間で26種の鳥の歌を採譜し、帰国して作曲したのが《7つの俳諧》(1962)。序奏、「奈良公園と石灯籠」「山中湖-カデンツァ」「雅楽」「宮島と海中の鳥居」「軽井沢の鳥たち」、コーダの7曲で構成され、ウグイス、ホトトギス、キビタキ、オオルリ、アオジ、サンコウチョウ、クロツグミ、ヒバリ、ビンズイ、オオヨシキリなどが登場する..という曲なので、これはCDで聴いてみなければ。
「カトリック信者」の項は、もともと理解しがたい側面だけに、やっぱりよくわからない。
『メシアンの音楽世界』で解説されている「音階とその色彩」の解説が面白い。リズムの話も基礎知識があれば、曲を聴くときの参考になりそう。
『メシアンの言葉、そしてメシアンへのメッセージ』には、メシアン奏者のピエール=ローラン・エマール、児玉桃、原田節、それに、ヴァイオリニスト堀米ゆず子のメシアンを廻るインタビューが聴ける。(動画とテキストの両方あり)

「WorksⅠ」の作品リストは、ピアノ作品とその紹介文が1~2行程度と貧弱。
『代表作でみる、メシアン音楽のテーマ性』は、《幼子イエスに注ぐ20のまなざし》と《トゥーランガリラ交響曲》のテーマ解説。
『メシアンゆかりの土地マップ』は、フランスとパリ、日本の地図に地名がいくつか載っている。それをクリックしたら解説が出るのかと思っていたら、タイトルどおり単なるマップだった。


Regards sur Olivier Messiaen オリヴィエ・メシアンに注ぐまなざし
外科医でアマチュア・ピアニストの方が個人的に運営されているメシアン情報サイト。
「メシアンの生涯」「年表」「作品のカタログ」「メシアンの音楽語法」「作品解説」「「二十のまなざし」の解析」「ディスコグラフィー」「参考文献」など、メシアンに関する詳細で膨大な情報が載っている。
メシアンのことを深く知りたい人には、とても役立つ情報源。


tag : メシアン 児玉桃

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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