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ドイツをめぐる本あれこれ
昔からドイツ小説が好きで、ヘッセはほとんど読んだ。
「車輪の下」から始って、「デミアン」、「春の嵐」、「荒野のおおかみ」、「ガラス玉演技」、etc。
「車輪の下」は10回以上読んだと思う。
でも、一番好きだったのは「デミアン」。結局は、自分は自分は自分にしか戻れず、自己肯定に行き着くのだが、そこへ行き着くまでに試行錯誤を重ねて、”本来”の自分になっていく。
このテーマは、ヘッセの後の作品でいろいろな形で展開されているが、原点は「デミアン」だと思う。
「シッダールタ」も珍しく東洋をテーマにした作品だったが、短いけれど良い作品だ。

ヘッセはたしか第2次世界大戦中、平和なスイスへ亡命していたので、ドイツ国民にはあまり尊敬されていないという話を聞いたことがある。
最近は、ギュンターグラスがナチス親衛隊にいたことを告白して、直後は各方面からかなりの批判を浴びたらしい。
しかし、それでもドイツ人はグラスを信頼しているそうだ。
ベルンハルト・シュリンクの 「朗読者」もナチス時代の出来事をテーマにしている。
ドイツ人にとってナチスの時代は永遠に近いほど、忘れ去ることでできない悪夢なんだろう。
過去を忘れ去ることを欧州やイスラエルの人々は許さない。
日本とは歴史的な事情も違うとはいえ、過去の都合の悪い”歴史的事実”を解釈を塗り替えることによって、正当化しようとする日本人が多いこととは対照的だ。
それだけでも、ドイツ人は日本人よりも”偉い”人々だと思ってしまう。
もちろんネオナチはいるけれど、それでも大多数のドイツ人はネオナチを支持してはいない。

ハイネ、リルケもちょこっと読んだが、どうも性に合わなかった。
ハイネの詩で一つだけすきな詩があった。
三原順「はみだしっ子」で引用されていたのだが、あまりに読んだ時の自分の心情に近かったので忘れられなかった。
この詩のために、ハイネの詩集を買ったようなもの。

  死は 涼しい夜
  生は 蒸し暑い昼間
  はや 黄昏そめて
  わたしは 眠い
  昼間の疲れは
  わたしに 重い

他にカフカの「変身」や「短編集」、レマルクのセ「西部戦線異常なし」。
ステファン・ツヴィイクも面白かった。
特に「ジョゼフ・フーシェ」は傑作。1回だけしか読まなかったが、権謀術数の中で生き残っていくフーシェの身の軽さは一種爽快なところがある。
「マリー・アントワネット」も面白かった思うが、フーシェほど印象に残っていない。

戦争ものでは、戦艦ティルピッツやUボートのノンフィクション。
ノンフィクションはその重厚さやルポールタージュの冷静な語り口が好きだった。
ちょうど戦争物に凝っていた頃の話。
ドイツ紀行もあれこれ読んだが、印象に残るものはない。
不思議と旅行をしたいとは強くは思わなかったからだろう。
それより文化論や社会論の方がずっと面白かった。

社会学が専攻だったので、ドイツ社会哲学や社会学専門書もかなり読んだ。
ウェーバー、ジンメル、カール・マンハイム、デュルケーム、ハーバーマス、マルクーゼ、ブロッホ、アドルノ、ピカート、etc.
ウェーバーの客観性論文は短いが、社会学的な視点で考える価値判断とは何かを勉強させてもらった。
人は自分の生きてきた社会と時代を超えることはできないし、いかなる価値観からも自由になって”客観的”であることはできない。
結局、どの価値を選びとるかという決断のもとに、事実として切り取ったものを再構築していくしかないように思えた。

カール・マンハイムは、”自由に浮動するインテリゲンチア”という考え方に大学時代は魅かれたが、後でそんなことは可能ではないと思うようになった。
マルクーゼは、ゼミのレポートで取り上げたことがあるが、そのテクノロジー・オプティミスムはどうかと思ったが、それでも学生運動時代のバイブルでもあったらしい。

ハンナ・アレントの「人間の条件」は、大学時代のゼミ購読で読んだ。
その時は何とも感じなかったが、社会人になりたての頃にもう一度読み直すとその素晴らしさがわかったような気がする。
普通の哲学書とはかなり違う用語だし、世界の捉え方をしている。
ゼミの時に先生がいろいろ説明してくれたが、もう一つピンと来なかった。
それは、理論書を読んで覚えたばかりの借り物の思考の枠の中でしか、考えられなかったから。
自分の思考の枠組みを多少なりとも持ち始めれば、違った見方ができてくるように感じる。

マルティン・ブーバーの「我と汝」は初めて読んだときは、とても衝撃的だったように覚えている。
世界が自分に対して開かれていると感じれる幸福感がその時にはあったからだろう。
彼は宗教的な感性、感覚、信仰から、書いた本なんだと思うが、宗教的な部分は全然わからず自分なりに読んでしまった。
今読めば、どう感じるだろうか。

カントやマルクス、ヘーゲルもいくつか読んだが、やはり哲学は難しい。
でも、骨のある哲学書なので、もう一度読んでみたい気がする。
学生の頃よりは、少しはわかるようになっているだろうか?

今考えると、何でも読もうとして、難しくてもわからないまま読み進めていた学生時代は本当になつかしい。
でも学生時代はたくさん本を読んでいたが、その中に今の自分につながっているものは何かというと、そのうちのほんの少しだろうと思う。
でも、そのほんの少しの部分で、今の自分が決まってしまったと思う。
三つ子の魂百までというわけではないが、20歳前後で今の性格・思想・行動の基礎が固められていって、これは何とも頑強なものだと思う。

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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