「天才たちの誤算―ドキュメントLTCM破綻」 

2006, 12. 17 (Sun) 18:42

「天才たちの誤算―ドキュメントLTCM破綻」は、LTCM破綻のノンフィクションとして、実に面白く、スリリング。
LTCMの内幕やトレーダーたちの行動や考え方の対立が良くわかる。
金融商品のトレードをしていると、なぜ彼らのトレーディング手法が巨額の損失につながったのが、理解できるはず。
オーソドックスな負け方で破綻したようなものだろう。
トレード面での破綻の原因とは、

1.ハイレバレッジ:損失が拡大するにつれ、自己資本が瞬く間に消えていった。

2.方向性取引:スワップスプレッドが縮小する方向に大半のポジションを傾けていた。
  市場を変えても方向性が一緒なので、ヘッジされていないのと同じ。

3.流動性の低下:巨大ポジションは一括売買もできず、分割して売ればそれだけで相場が
  崩れるため、結局ロスカットもできなかった。また、特殊な市場でのトレードは、売り
  手が限定されて、売り手側がLTCMの内部情報をキャッチしていれば、足元をみて売買に
  応じない。相場が極端に反対方向へ行けば、取引相手が消えるため、ポジションを決済
  できなくなる。

まさに教科書どおりの損失発生の原因ばかり。

ウォール街の投資銀行のトレーダーの行動原理も面白い。
LTCMのポジションデータを買収交渉時に合法的にダウンロードして、LTCMのポジションを売り
叩くように自己売買。
底値になったところで、LTCMのポジションを買い取る。
商取引上、こういうことが許されてしまうウォール街というのは勝てば官軍の世界。
トレーディングの世界は厳しい。無事生き残りさえすれば、それで良い。

「LTCM伝説―怪物ヘッジファンドの栄光と挫折」もLTCM破綻を扱ったノンフィクション。
こちらは、金融工学史などトレード手法の解説が充実している。
数学がわからなくても面白いが、数学がわかる人には数倍面白いかも。
一方、「天才たちの誤算」は、登場する人物の動き、争い、トレーダーの人間像の描き方が充実している。

LTCM伝説―怪物ヘッジファンドの栄光と挫折 LTCM伝説―怪物ヘッジファンドの栄光と挫折
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東洋経済新報社
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「天才たちの誤算―ドキュメントLTCM破綻」は、日経ビジネス文庫版になる際に改題されている。
タイトルは、「最強ヘッジファンド LTCMの興亡」
あやうく、単行本と文庫本は違うと誤解して、両方買いそうになった。
改題は混乱を招くので止めておいて欲しい。

天才たちの誤算―ドキュメントLTCM破綻 天才たちの誤算―ドキュメントLTCM破綻
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