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武満徹/ピアノ作品集
武満徹のピアノ作品の録音で名盤とされているのは、ピーター・ゼルキン。
他にも、高橋悠治、藤井一興、高橋アキ、ロジャー・ウッドワード、ポール・クロスリーの録音は昔からあるし、比較的新しい録音では、小川典子(BIS盤へのデビュー盤)と若手の福間洸太朗(NAXOS)もそれぞれ違った個性がある。
意外なことに舘野泉が録音していたのは、最近初めて知った。

武満作品は聴き比べると、かなり演奏が違っているのがよくわかって、面白い。
音符が極度に少なく、音価の長短の違いが極端にあり、休止している時間も長い。タッチや音色、ディナーミクやフレージングのアーティキュレーションによって、表情が随分変わってくる。
特に、音符と音符の間にある「間」が、一つの音符のように意味を持っているように思えるので、「間」をどうとるか、どういう響きにするかなど、表現の違いによって分印象も変わる。



高橋アキ plays 武満(EMI)
既存録音の中では、収録曲数が多い。収録されていないのは、《コロナ》と《夢見る》くらい(これは高橋悠治とウッドワードが録音している)
ポール・マッカトニーの《ゴールデン・スランバー》を編曲したものは、このCDにしか収録されていない。
それに、珍しくも《ロマンス》と《こどものためのピアノ小品》を収録。
「Breeze」「Clouds」は、武満作品とは思えないような親しみやすさ。武満作品のなかでも、わかりやすい合唱曲と通じるものがある。
演奏自体は、強弱のコントラストが明瞭で、音響的に残響が長く厚みがあり、これが音響的に響き過ぎる気がして、もっとすっきりした響きで聴きたい。

高橋アキ plays 武満高橋アキ plays 武満
(2006/06/14)
高橋アキ

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武満徹 《微風》 / Toru Takemitsu 《Breeze》


武満徹・編 _高橋アキ・演奏「ゴールデン・スランバー」




福間洸太朗『武満徹:ピアノ作品集』(NAXOS)
武満徹:ピアノ作品集武満徹:ピアノ作品集
(2007/08/01)
福間洸太朗

試聴ファイル


24歳の若手ピアニスト福間洸太朗の録音は、定番・名盤とは全く違って、重苦しくも内省的ても瞑想的でもなく、かといって、強い感情が表出してくるというものでもない。
曲の表層に近いところに留まって、深層に潜っていかないような、さっぱりとした叙情感と重力感の軽さが、新しい感覚なのかも。(レビューを読んでも、似たような印象を持っている人が多いようだし)
音色も尖ったところがなくて、丸みがあり軽やかで透明感がある。残響が多めで、曲によっては、音響的な重なりが豊か。
聴きやすい気はするけれど、例えて言えば、深海の海へ潜っていくというよりは、海面近くの波間を漂っているような軽やかさと透明感があって、ゼルキンとは方向性がかなり違う。
これはこれで重たくなくて聴きやすくはあるのだけれど、さらさらと流れていくような淡白な叙情感が物足りなく思える。

収録曲は、武満のピアノ作品集の録音としてはかなり多い。(《ゴールデン・スランバー》を除けば、高橋アキと同じ収録曲)
特に滅多に録音されない《ロマンス》、《こどものためのピアノ小品》も収録。

ピティナのホームページに載っているインタビューを読むと、フランスでの武満人気がよくわかる。(多分日本よりも人気があるのではないかと思うけど)
第5回 福間洸太朗さん「武満徹へのオマージュ」
海外での武満作品人気の理由の一つに、「間」を上げている。
「西洋音楽における休符には"息継ぎ"や"次への準備"的な要素があると思いますが、武満さんの作品では「間」の中に言いたいことが入っている」。

どちらかというと、彼の録音を聴くと、その「間」のニュアンスが淡白で、深く内面へと沈潜するような奥行と深さはあまり感じない。
逆に、ゼルキンは「間」のなかに内省や瞑想を感じさせ、明晰ではなく曖昧模糊とした雰囲気が重苦しく息苦しい。



ピーター・ゼルキン『武満徹:ピアノ作品集』(RCA)
武満徹:ピアノ作品集武満徹:ピアノ作品集
(1996/11/21)
ゼルキン(ピーター)

試聴ファイル

昔からの定番。柔らかいタッチで余韻漂う響き、強弱の弱いコントラスト、一音一音を噛み含めていくようなゆったりとしたテンポ感。
これが、たばこの煙をくゆらしているような曖昧模糊とした、まとわりつくような雰囲気を漂わせ、内省的で瞑想的なニュアンスが強い。モノトーン的な色調で、陰鬱さと重苦しさを感じる。

Tōru Takemitsu: For Away (1973) (Peter Serkin, piano)





小川典子『武満徹:ピアノ作品集』(BIS)

武満 徹:ピアノ作品集武満 徹:ピアノ作品集
(2000/01/01)
Bis

試聴ファイル(amazon.uk)

私が好きな小川典子の録音は、音色は、太くて硬質で、冷たく澄んだ冬の水のような温度感と透明感。
鋭く力感のあるタッチと、強弱のコントラストが明瞭で、強い感を感じさせる明晰さがある。
青白い炎のような冷たく燃えるような情感があり、クールな妖艶さも漂ったりする。

全体的に硬質で線の太い響きと、骨格がかっちりと描かれた曖昧さのない演奏は、理知的で見通しが良い。
芯のしっかりした重みのある線の太い音なので、それほど神経にキリキリと触るような圧迫感や重圧感は感じないので、意外に聴きやすい。
結局、異聴盤をあれこれ聴いてみたところ、今の私が最も聴きやすく、曲のイメージと演奏とがぴったり合ったのが、小川典子(それに高橋悠治)の録音だった。


Takemitsu - Rain Tree Sketch II: In Memory of Olivier Messiaen [w/ score]





高橋悠治『武満徹:フォー・アウェイ』(BIS)
武満徹:フォー・アウェイ武満徹:フォー・アウェイ
(2010/10/06)
高橋悠治

試聴する

収録作品は少ないけれど、異聴盤にはほとんど録音されていない《ピアニストのためのコロナ》が、他の曲とは作風が違う。
グラフィックデザイナーの杉浦康平との共作で、4つのパートに若ているので、4人で引くような曲。
以前には2人で弾いたそうだけれど、今回は多重録音で1人で弾いている。(ヘッドフォンで聴くと、左右から異なるパートの旋律が交錯して聴こえてくるので、奇妙な感覚がする)
奏者の言葉によれば、「演奏者から作曲者への贈り物」なのだと言う。

《フォー・アウェイ》と《遮られない休息I》は、硬質でシャープなタッチと響きは、明晰で曖昧さを感じさせないし、響きの厚みは薄く、静謐で、どこか求道的なストイックさがある。
でも、どこかしら音に柔らかさと丸みがあって、時々艶やかさも覚えるし、余韻が消えていく響きと間がとても自然な感じがする。
何度も聴いていると、これはかなり(一番かも)好きな音色だと思えてきた。

Takemitsu - Piano Distance [w/ score]



上記以外の録音では、藤井一興『武満徹 鍵盤作品集成』、ロジャー・ウッドワード『武満徹:ピアニストのためのコロナ』、舘野泉『ピアノ・ディスタンス〜武満徹作品集』。

藤井一興の武満録音は2種類あり、旧盤は《2つのレント》、新盤は《リタニ》を収録。《夢みる雨》は異聴盤には収録されていない。(試聴ファイルがないので、どういう演奏なのかわからない)

藤井一興:武満徹/鍵盤作品集成(フォンテック、新盤)

舘野泉/ピアノ・ディスタンス〜武満徹作品集

ロジャー・ウッドワード:武満徹/ピアニストのためのコロナ

tag : 武満徹 小川典子 高橋悠治 舘野泉

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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