ソコロフ ~ ブラームス/ピアノ協奏曲第2番

2013.12.26 13:00| ♪ グレゴリー・ソコロフ
スティーブン・ハフの最新アルバムのブラームスを聴いていて、ソコロフのライブ録音の音源がYoutubeにあるのを思い出した。
あのソコロフなら、このピアノ協奏曲第2番をどう弾くのだろう?

Brahms Piano Concerto#2 1st Mvt (1) Grigorij Sokolov, Hungarian National Symphony Orchestra, Lu Jia


Youtubeにあったのは、2種類。サロネン指揮フィンランド響とのライブ音源の方は、外見から判断すると、このハンガリー国立響との演奏よりも、もっと若い頃のもの。
さっと聴いた限り、どちらも解釈に大きな違いはないみたい。

ソコロフのエネルギッシュで気合と感情を込めてピアノを弾く姿はかなりの迫力。
思わずじ~っと画面を凝視してしまう。
指は鋼のように強靭なタッチで、フラットな形の指は、飛び跳ねるように鍵盤から離れる動きがとても俊敏。
鍵盤を打鍵する位置もかなり高いし、そのわりにミスタッチはそれほど多くは無く、鞭のようにしなやかにしなる指のタッチは多彩で色彩感が豊か。
ソコロフの音は線は太い方ではないけれど、シャープで研ぎ澄まされた鋭角的なところがあるので、フォルテやスフォルツァンドは芯のしっかりした力感があり、線の細さは感じない。
この技巧的難曲でも、色彩感の多彩な音色がとても綺麗。
強奏部分のタッチはかなり強いけれど、バンバンと鍵盤を叩く人とは違って音が濁らず、デリカシーに欠けないのが良いところ。
引き締まって張りのある響きは美しく、音のもつ力に引き寄せられてしまう。

ハフの録音でもかなり緩急の変化が大きいと思ったけれど、ソコロフはさらにそれに輪をかけたように、緩徐部分はとても遅いテンポで、緩急の変化が柔軟でメリハリがよくつき、たっぷりと細かな起伏をつけた濃密な表現。
ここまで極端(?)というか、ねっとりと弾く人はいないのではないかと思うくらい。
他のピアニストが同じような弾き方をすれば、極めて情緒的で感情移入過剰に聴こえるところが、ソコロフが弾くと、淀まず粘らず重たくならず、(少なくとも私には)さほど不自然に感じずに、すっと聴けてしまう。

スケール感のある大きな音楽の流れの一部として聴くことができるからか、強奏部の鋭く力強い打鍵とのコントラストがとても強いので極端なくらいの表現でも違和感がなくなるからか、それともソコロフの演奏に対してはかなりプラスのバイアスがかかっているからか、その全部なのか自分でもよくわからないけど..。
理由はともかく、ソコロフの演奏なら、たいていの曲は、自分の好みとかオーソドックスな解釈との違いも気にせずに、その個性的な演奏解釈に惹き込まれてしまう。

若い頃からソコロフのピアニズムはしっかり確立されているように思える。
急速部の力強い急迫感、波がうねるように立ち上がっていくクレッシェンド、きらきらと煌きのある高音、キビキビとした軽快なリズム感、しっとりと水気を帯びた流麗な叙情感。
個性的なアーティキュレーションで、繊細さとダイナミックさを兼ね備えたスケール感のある演奏は、昔もいまもソコロフならでは。

ソコロフの極めて大胆で個性的な演奏を聴いてしまうと、他のピアニストの演奏が個性的なものであっても、それほど抵抗なく普通に聴けるようになってくるのが、思わぬ効用だった。

タグ:ブラームス ソコロフ

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コメント

これは凄いです。

こんばんは!

ほんと、随分高い位置から打鍵して、ダイナミックな演奏をする方なんですね。ピアノ壊れそう!と思うほどだけど(笑)、荒っぽくなならないのが、凄いなあ。

私、とても感動しました!今まで聴いた中で、ソコロフの演奏が一番気に入ったかも!そして2番はやはり男性が演奏する方が良いと思った。思わず続きを探して聴きました!1993年の演奏ですか?でもちっとも古臭くないですね。

かなり濃密な表現の演奏部分もあるけど、粘らず濁らず、す~っと胸に旋律が溶けていきます。ダイナミックさと繊細さが共存しているのが良いです。

やっぱりソコロフは凄いですね!

Tea316さん、こんばんは。

ハフのブラームスがかなり重たそうだったので、さらにその上を行くソコロフにそれほど感動されるとは、全く予想外でしたー。
でも、ソコロフの演奏には、有無を言わせないような迫力と魅力がありますよね!
第2番は、”血と汗”を要求する曲と言われるくらいですから、技術とパワーのある人が弾くべき曲ですね。(そうでないと、よたよたと頼りなさげなので..)

どの曲を聴いても、繊細でダイナミックなところは、ソコロフのトレードマークです。音の色彩感や美しさはハフを上回っているかも。
それにしても、あの打鍵方法にしてはミスタッチが少なく、音も綺麗なのは、ほんとに驚きです。
第1楽章の有名な難所も、テンポを落とさず、一本調子になることもなく、美しく弾いてます。
ソコロフは、今はコンチェルトは弾かないそうです。昔から実演の完成度がとても高い人なので、今弾いたとしても、演奏解釈は大きく変わらないと思います。
つくづく残念なのは、正規録音のCDで聴けないことです。

ライブだからかな

こんばんは!

予想外でしたか(笑)?
もしかしたらしばらくこの曲は全く聴かないようにしていて、久々に聴いたから良かったのかも(笑)。

ハフの演奏もついでに聴いたら、良かったです(笑)。

ライブというのも、良かったのかもしれません。ハフのは、アルバムだから自分の理想通りきっちりと綿密に作った感があるから、ちょっと窮屈に感じちゃうのかもしれません。

ソコロフの何とも言えない音の力感が、気に入ってしまいました。重いんだけど、良んですよ。不思議だなあ。

ソコロフの凄いところは

Tea316さん、こんばんは。

ソコロフのブラームスを聴いてしまうと、私もハフのブラームス(や他の個性的な演奏)がそんなに極端な表現に思えなくなりましたから、強烈な刺激を体験した”ソコロフ効果”(?)があるのかもしれませんね。
ソコロフに比べると、ハフはある枠からはみ出さないように節度があるというか、コントロールされているような感じはします。
ソコロフは型破りというか枠を壊して、自分の音楽を作る人ですが、音楽的に破綻しないところが凄いです。
それに演奏する姿も迫力ありますよね。見ているだけでも面白いです。

ソコロフの音は、芯がしっかりして、シャープで弾力があって、力感が強いのに美しくて...と何とも表現しつくせないものがあります。
ソコロフの持つ”音の力”というのは、凄い吸引力があるので、初めてバッハを聴いた時から、すっかり惹き込まれてしまいました。
ああいう音を出せる人は、他には誰もいないような気がします。

ソコロフのブラームス

こんにちは。

1993年のイタリアでの演奏ですか。
サロネンとの方は音が悪くて良く分かりませんでしたが、こちらの方は映像が古めかしいわりに音が良いです。ソコロフの良さが充分聴き取れますね。全体的に濃厚な表現もとても好みに合います。

ハンガリー国立響は昔、生で聴きましたが良いオーケストラです。
この演奏でも素晴らしいです。こういうのが正規盤で出てくれると嬉しいのですがねぇ。

いつかCD化されるかも

ハルくん様、こんばんは。

ソコロフのライブ音源はYoutubeに多数ありますが、ブラームスに限らずコンチェルトは最近は弾かない主義らしく、このライブ映像はとても貴重ですね。
こういう濃厚で粘着的な表現は、私の好みとは全然違う方向の演奏ですが、ピアニストの情緒性は感じさせませんし、ソコロフの演奏は好みという次元を超えてしまうので、やはり素晴らしいです。

naiveレーベルは、ソコロフの演奏会をせっせと録音し続けているらしいです。
ソコロフは、「私が死んだ後なら、どうぞお好きに」と言っていますので、この音源をレーべルが録音している可能性はありますね。
もしかしたら、いつか正規音源としてCDが出てくるのかも...。
まあ、ソコロフにはもっとピアノを弾き続けて欲しいので、そんなに早く出てこない方が良いですけど。

No title

こんばんは。お久しぶりです。
ソコロフのCDがDGから出るようですね。
楽しみです。

ビッグニュースですね

くま様、こんばんは。
お久しぶりです。

ソコロフがDGと専属契約を結んだことは、HMVの新譜情報に載っていましたね。
今回のアルバムには好きな曲があまりなかったので買わないと思いますが、今後どういうCDが出てくるか、興味津々です。

DGは、録音のリリースを全然OKしてくれない完璧主義者のツィメルマンとの契約を切りたがっているという話もあるらしく(真偽不明ですが)、ソコロフがドル箱アーティストになるのは確実なので、大喜びでしょう。
でも、ソコロフに一体どういう心境の変化があったのか、知りたいところではあります。

No title

ツィメルマンとDGがずいぶん前から揉めてるという話は、ツイッターかミクシィかで読んだような気がするのですが、なるほど・・・

やっぱり本当だったんですね

くま様、こんにちは。

CDが出せないと、レコード会社は儲かりませんからね。
ソコロフのライブは完成度が高いので、スタジオ録音でなくてもいいですね。
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yoshimi

Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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