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高橋悠治 ~ メシアン/カンテヨジャーヤ
新しく数枚入手した高橋悠治のCDのうち、数少ないベートーヴェン録音がピアノ・ソナタ題31番。この曲の演奏もやっぱり個性的。
カップリング曲がユニークで、メシアン《カンテヨジャーヤ》とストラヴィンスキー《イ調のセレナード》。
特に私には面白い曲だったのが、《カンテヨジャーヤ/Cantéyodjayâ》。
メシアンの《4つのリズムエチュード》のように、いろんなリズムが錯綜して、リズムが曲を支配しているような曲。
《カンテヨジャーヤ》を作曲した翌年に《4つのリズムのエチュード/Quatre Études de rythme》を作曲しているので、関連性はあるのだろう。
メシアンのピアノ作品には”鳥”にちなんだ作品が多いので、《カンテヨジャーヤ》も鳥の名前かと思っていたら、南インドか古代インドに関連する名前らしい。

ベートーヴェン:作品集(紙ジャケット仕様)ベートーヴェン:作品集(紙ジャケット仕様)
(2006/06/21)
高橋悠治

試聴ファイル


高橋悠治の《カンテヨジャーヤ》は、速いテンポで、刃物のように先鋭なタッチには強い力感がある。
この曲は、遅いテンポで弾くと、リズムによってはどんより鈍くて生気を失ってしまう。
リズムに応じてくるくる変化させる彼のテンポ設定は、リズミカルな躍動感が鮮やか。
それに、硬く金属的なピアノの音がこの曲の鋭く鮮烈なリズムを表現するのにぴったり。
メシアン作品を聴いているとよく出てくるリズム・旋律・和声が、この曲でもいろいろ入っているし、速いテンポと多彩なリズムと音色が多彩で、とっても賑やか。
もともとメシアンの音楽とはかなり相性が良いので、聴きにくいことは全然なくて、面白くて楽しめる。


メシアン自身の作品解説がライナーノートに載っている。(以下、引用)

「カンテヨジャーヤ」は、リズムのエチュードである。ここでは、リズムの大部分、8世紀インドの理論家サルンガデヴァの体系による120のデシ・ターラによっている。さらにリズムの構成法には、つぎのような原理が用いられている。すなわち、アナクルーズ(詩:行首余剰音)-アイサン(強勢)-デシナンス(屈折語尾)。リズムの「オスティナート」。音の半音階。リズムの直行と逆行の組み合わせ。最後に音価と音高と強度のモード。これは《音価と強度のモード》より数週間前に作曲された。
ハーモニーとメロディのスタイルは、《ハラウィ》、《トゥガンラリーラ交響曲》、《五つのルシャン》の和音と線をを要約したもので、そこに愛撫と粗暴が混ざり合っている。
ピアノの書法は多彩である。すなわち、極端に高いレゾナンス。極端に低い打楽器音。直接的に隣接して置かれた対照的な強度。鐘のソノリティ。ハーモニーの暈。からみ合う旋律線。高音から低音までの全鍵盤をかけめぐる大きな急速楽句。シロフォンの音色の挿入。和音の房。万力に締め付けられたようなせばまり。そして開かれた扉のように縦横に分裂させられる両手のダブルノート。



メシアンの解説を読むと、耳から聴いた音が、鍵盤上でどういう動きをしているのか、よくわかる。
楽譜は凄いことになっているに違いない。楽譜を見たら、さらに強烈なインパクトがありそう。

高橋悠治のベートーヴェンとバッハを聴いても、メカニック的にはあまり凄いとは思わなかったけれど、このメシアンを聴くと、(現代音楽を弾くのに必要な)”超絶技巧”を持っていると言われるのも納得。


この音源は演奏者不明。
高橋悠治の演奏だと、冒頭のリズムは一音一音がもっと短く、フレーズがもっと切り詰められた感じで、旋律もスリップするようだったり、面白くて鮮やか。

Olivier Messiaen - Cantéyodjayâ (1945)


tag : 高橋悠治 メシアン

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No title
わたしも、高橋悠治さんの『カンテヨジャーヤ』にはやられました。
キレ味鋭い冷たい弾き方が、この曲には合っていると思います。
現代音楽の弾き方というのも、ジャズの様に特殊なものなのでしょうか。
本当に楽譜はどうなっているのか見てみたいです。
見ても弾ける訳ではないのですが。(*^_^*)
譜面は難解でしょうね
Leaf Pie様、こんばんは。

《カンテヨジャーヤ》は、他に何人かのピアニストの演奏を聴きましたが、悠治さんが最もリズム感が鋭く躍動感があり、音も研ぎ澄まされた厳しさがあって、一番この曲にふさわしいように思いました。
現代音楽では、特殊奏法がいくつかありますが、それをこの曲で使っているかどうかは(私の耳では)わかりません。(変拍子が多いのではと思うのですが、楽譜を見てみないと定かではありません)

ちなみに、メシアンの《ニワムシクイ》の譜面をみると、2段/3段楽譜が混在し、数小節ごとに速度指定・拍子・音価が変化して、ややこしいことこの上ありません。
http://homepage1.nifty.com/iberia/score_fauvette.htm

悠治さんが”超絶技巧の持ち主”と言われるのは、現代音楽特有の難解な譜面を読みこなし、それが表現しようとしている通りにスラスラと弾きこなしてしまうからのようです。
現代音楽では、武満徹の《アステリズム》の演奏も聴きましたが、これも素晴らしい曲と演奏ですね。
高橋悠治さんの事
「高橋悠治、古典から現代」の一曲でした。演奏された頃のメシアンは、ソビエトでは演奏禁止でした。社会主義リアリズムの範疇外と言う事です。パリ音楽院で、音楽史、ソルフェージュ、ピアノ、和声、対位法、作曲など、殆どの教科で一番を取った、大秀才でした。
彼のオーケストラの作品は、ベートーベンやブラームスの曲を演奏する前にする、チューニング程度の音程の正しさではきちんと鳴りません。特別な耳の弁別力の指揮者が必要でした。
ロスバウト、ギーレン、シェルヘンなどです。彼らのソルフェージュ能力でも、不満足な人間がいました。ブーレーズです。当時のオーケストラの連中の能力の低さに、怒り心頭。放送オケを長時間相手をしながら、少し下、少し上。リズムに関しても同じ事ですが、本当の現在のコンピューター系の打ち込みとは違って、人間的なニュアンスを含んでいますが、未だに恨みに思っている人はいるでしょう。
ウイーンフィルやクリーヴランド、ニューヨークフィルは、出演料も高く、練習時間が放送オケより短い。オシロスコープを持ち込んで、チューニングするように指示をしたと聞きました。
メシアンの作品も、本来メシアンが頭の中で聴いたであろう音で、聴衆の耳に届き、一流オーケストラの連中もメディアなどで放送オケの名演を聴き、真価が理解されてきて、今があります。
メシアンの次の、パリ音楽院での大秀才は、ブーレーズです。第二番のソナタは、ピアニスティックでありながら、美しく響きます。ポリーニが弾く前に、高橋さんはコンサートツアーで弾いていました。ブーレーズがピアノを弾くと、超上手だったと想像しますが、録音はありません。メシアンの録音は、多数あります。
高橋さんは、ブーレーズのソナタとクセナキスのヘルマを、同じ日のステージで弾いていたらしいですね。
メシアンやブーレーズやクセナキスが、彼に託した訳ですから、当時としては悪かろうはず無いです。
事実、自分が中学時代に聴いた高橋さんには、知的な何物かの爆発のような感じがありました。
大学時代に、鹿児島県民ホールにやって来ました。県の金なので採算度外視です。曲名は忘れましたが、ピアノの響板から音の粒が、大量に流れ出して来て、ホールの中を走り回り、壁に吸い込まれて行きました。
幻のピアニスト、リヒテルはさすがでしたが、どんなコンクール荒らしも、あんな空間を使う音楽は出来ませんでした。リリークラウスは、若い感性には、何の学びにもなりませんでした。
柴田南雄という高橋さんの師匠筋の方は、「西洋音楽史上の特異点」と、高橋さんの事を評されていました。日本人が西洋音楽を演奏する意味に対する、明快な答えであって、演奏がどうだったこうだった。そういう評価は無意味です。
広島で、シェーンベルクとショパンと題した演奏会がありました。こう聞くと、多少でも知識があれば、月に恋をしたピエロの中の一曲「ショパンの響きで」を思い出すでしょう。しかし、彼が言ったのは、シェーンベルクのピアノ曲とショパンのノクターンを交互に弾くと言う事だけで・・・。と誤魔化しながら演奏を始めました。シェーンベルクは、ピアノの響板から音が出てきて、空間的な音楽でした。ノクターンは、平凡です。観客は、思わずため息をつくほどの、緊張感の無さと言うのか、肩の力が抜けた日本音楽的な自然さです。
ハ短調の、五番目のバラードと呼ばれる、あの曲の終わりには、単純なフレーズがあります。殆どのピアニストは、深刻に抒情的に悲劇的に、如何にも意味が籠っていそうに、弾くし伝統的です。
彼はあっさり弾いて、あまつさえ最後の辺り間違えるのです。和音はきちんと弾きましたが・・・。横を向き、観客に笑顔を見せて、照れ笑いと言うよりも、わざと間違えたんだよと言う意味に自分には思えました。
ジョンケージ的な偶然性も、本当の偶然じゃなくて、仕込んで置かないと上手く行かない・・・。

その自在さは、カンテヨジャーヤでも感じます。超絶技巧の持ち主と言う評価も、マスコミ的、ジャーナリズム的には、多く存在します。家にピアノの無い彼にとっては、簡単な事で、こんな感じになっちゃった。邦楽の方々と同じような感覚なのだと思っています。

 
kansojin様、こんばんは。

関西方面であまりリサイタルを開かれていないようですので、残念ながら高橋さんの演奏会を聴きに行ったことはありません。
シェーンベルクとショパンを並べたプログラムというのは、現代と過去が交錯するみたいで面白い企画ですね。
肩の力が抜けた演奏といえば、ゴルトベルク変奏曲の再録音を思い出しました。
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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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