松村禎三/ギリシヤに寄せる二つの子守唄,巡礼 

2014, 03. 13 (Thu) 13:00

もともと寡作な松村禎三の作品のなかでも、ピアノ独奏曲は数少なく、録音が残っているのは、《ギリシヤに寄せる二つの子守唄》と《巡礼 I、II ~ ピアノのための ~》。

1969年の若い頃に書かれた《ギリシヤに寄せる二つの子守唄》は、交響曲やピアノ協奏曲を書いた人と思えない透明感のある美しい作品。
まるでギリシャ彫刻のように端正で気品がある。

『松村禎三 作曲家の言葉』の作曲者自身の解説では、Ⅰの冒頭で使われている旋律は、古代ギリシャの旋律。
それに触発されて、行ったことのないエーゲ海の、風光豊かであろう午後を夢見ながら書き、2曲目はギリシャの旋律とは関係ない。
この曲は、在来の日本にある子守りが唄う唄といった発想ではなく、作曲者なりの”揺籃歌”。


Teizo Matsumura: Deux Berceuses à la grèce (1969)



晩年の1999年の作品《巡礼 I、II ~ ピアノのための ~》は、《ギリシヤに寄せる二つの子守唄》とは随分作風が変わっている。
『作曲家の言葉』の解説では、「一曲目はレント・アッサイ。ところどころ停滞する不規則な拍節で始まる。”雪の峡 初心の日輪 顕ちにけり”という上田五千石の句がイメージとしてあった。二曲目は短い導入部のあと、和賛の音階によるモティーフを繰り返し、その上に即興的な変奏がなされている。最後に一極目の冒頭を回想して終わる」。

冒頭の左手のオスティナートで伴奏されている主題は、どこかで聴いたことがあるような旋律。(何の曲だったか思い出せない)
《巡礼》というタイトルのごとく、冒頭の静寂な雰囲気はとても内省的。(最初はキリスト教的なものをイメージしたのかと思ったけれど、作曲者の解説を読むと、そうではなかった)
ゆったりとしたテンポでも、張りつめた緊張感が漂っている。
問いや不安といったもやもやしたものが、徐々に大きくなって葛藤が激しくなり、曲の終盤へ向けて徐々に盛り上がって、フォルテで激しく揺れ動くところがドラマティック。
「問い」に対する「答え」を見つけたときの高揚や浄化された精神的なものなのかも。
最後は、激しい荒波が引いて、凪のように冒頭の静寂さと旋律へと回帰。
この曲は意外と私が好きなタイプの曲。調性や雰囲気が違うのに、左手のオクターブのオスティナートとか、高揚する終盤とかを聴いていると、なぜかリストの《伝説》第2曲「波を渡るパオラの聖フランチェスコ」を思い出した。


MATSUMURA Teizo : Pilgrimage for piano I, II (1999)





《ギリシヤに寄せる二つの子守唄》の収録CDは数種類。
松村禎三作品集『松村禎三の世界』は、録音の少ない作品もいろいろ収録されていて価格も手頃。これはそのうち聴きたいな。

松村禎三の世界松村禎三の世界
(2007/09/05)
オムニバス

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《巡礼》の収録CDは1種類のみ。
松村禎三~巡礼~松村禎三~巡礼~
(2003/10/03)
渡邉康雄

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『松村禎三 作曲家の言葉』に、松村禎三が発表した文章が纏められている。
松村自身の作曲理論・作曲論と作品解説、音楽論、知己の作曲者・演奏者、趣味の俳句、映画などに関する小論・随筆が、7つのテーマに分けて掲載されている。

松村禎三 作曲家の言葉松村禎三 作曲家の言葉
(2012/07/27)
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