マリーノ・フォルメンティ 『Kurtag's Ghosts』 (2)

Kurtag's Ghosts (Dig)Kurtag's Ghosts (Dig)
(2009/06/09)
Marino Formenti

試聴ファイル

収録曲リスト(Naxos/NML)
ブックレット(英文/PDF)[naxosmusiclibrary.com]


パーセル:ラウンド O, Z. 684 (Z. 570による)
クルターク:Tears
クルターク:Les Adieux (in Janaceks Manier/Farewells in the Style of Janácek)
ヤナーチェク:草陰の小径にて 第2集 JW VIII/17 - 第12番 アレグレット
クルターク:Doina

《Tears》は、イギリスバロックの”Lachrymae”の伝統に言及しているのかもしれない。
(緑文字はブックレット解説の要約)

Kurtag's Ghosts part 1 - Marino Formenti
De Young Museum. San Francisco Performances. April 15, 2007
Henry Purcell, Gyorgy Kurtag, Leos Janacek


パーセルの《ラウンド》は曲名は覚えていなくても、ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」の主題だとすぐにわかるくらいに、一度聴けば忘れないくらいに美しい旋律。
《ラウンド》と全く違った作曲語法の《Tears》では、最初聴いたときは、あまり関連性はないように思えた。
続いてヤナーチェク風の《Les Adieux》を聴くと、 《Tears》が心奥深くで独り沈黙して涙を流しているのような心象風景が浮かんでくる。
”Doina”とはルーマニア音楽の一様式で、そのルーツは中央の民謡。《Les Adieux》でも出てくるトレモロを聴くと、より現代音楽的な色合いを濃くしたヤナーチェクのよう。


シューベルト:36のオリジナル舞曲(最初のワルツ)D. 365 - ワルツ第22番 嬰ト短調
クルターク:Hommage a Schubert
クルターク:Keringo 2 (Waltz 2) (revised version)
ショパン:マズルカ第28番 ロ長調 Op. 41 No. 2

《Keringo 2 (Waltz 2)》では、リズミックでメトリックな構造(ワルツの名残り)が、部分的に認識できる状態で残っている。

シューベルトのワルツと、続く《Hommage a Schubert》とは、これも初めて聴いたときは関連性が全くわからなかったけれど、《Hommage a Schubert》と《Keringo 2》とは違和感なくつながる。
最後は、4分の3拍子の舞曲ショパンの《マズルカ》。


クルターク:Hommage a Petrovics
クルターク:Hommage a Zenon

《Hommage a Petrovics》は、地域的に重要な作曲家へのオマージュ。そのモメンタム(運動性)とアグレッション(攻撃性)は、Petrovicsのパーソナリティの要素かもしれないものの肖像とも言える。


シューマン:子供の情景 Op. 15 ~No. 11. Furchtenmachen (Frightening)
クルターク:… meg egyszer: Arnyjatek (… and once again: Shadow-play)
クルターク:12 New Microludes: No. 2. Agitato
シューマン:子供の情景 Op. 15 ~No. 3. Hasche-Mann (Catch-as-catch-can)
クルターク: (… es forog a korong) (… and round and round it goes)
クルターク:Szemtol-szembe (Face to Face)

私(フォルメンティ)にとって、《Játékok》は、子供のための大人の音楽、ではなくて、大人のための子供の音楽。
大人の目を通して見た子供の音楽ではなく、この作品で現われてくる感情的な状態は、まさに子供が経験するのと同じ激しさ。
シューマンの《子供の情景》のように、クルタークの曲集は全体的にbelittlementやcuteness(可愛らしさ)をリフレインしている。


クルタークの曲は、《子供の情景》と同じく、子供の様子を表現したようなタイトルと曲想の曲を選んでいるらしい。
子供特有のむき出しの感情が噴出したり、ぶつぶつと呟いていたり、動き回る様子が音になっているみたいに聴こえる。


シューマン:ダヴィット同盟舞曲集 Op. 6~No. 8. Frisch,No. 9. Lebhaft,
クルターク:Nyuszicsokony (Stubbunny)
シューマン:ダヴィット同盟舞曲集 Op. 6~No. 4. Ungeduldig

《Nyuszicsokony (Stubbunny)》は、”rabbit’s obstinacy”(うさぎの頑固さ)。楽しげでアイロニーな作品。この作品のドラマは本当のドラマ。

ほとんど聴いたことがない『ダヴィッド同盟舞曲集』。
「動」の曲ばかりだったせいか、苦手なシューマンにしては、意外なくらいにすんなりと面白く聴けた。これなら、全曲聴いてみたくなる。

Schumann - Claudio Arrau - Davidsbündlertänze op. 6



クルターク:In memoriam Edison Denisov
リゲティ :ムジカ・リチェルカータ - 第9番 アダージョ - メスト

《In memoriam Edison Denisov》以降のクルターク作品では、”死”が唯一の残されたテーマ。

このアルバムに収録されているクルタークが書いたオマージュのなかでも、《In memoriam Edison Denisov》はとりわけ重苦しく沈鬱。
続く、バルトークへのオマージュであるリゲティ《ムジカ・リチェルカータ》 第9番も、同じ曲想。(リゲティとクルタークは、生涯にわたる友人だそう)
《In memoriam Edison Denisov》以降の選曲は、ほとんど静寂で沈鬱な曲想のもの。

クルターク:Mihaly Andras emlekere (In memoriam Andras Mihaly)
クルタークと深い親交のあった作曲家へのオマージュ。
この曲は、このプロジェクトで中心的な作品であり、私(フォルメンティ)にとっては、クルターク音楽の最も魅惑的なriiddler(謎をかけるもの)の一つ。


《Mihaly Andras emlekere》の旋律とその不可思議な雰囲気は、ベートーヴェンの《ディアベリ変奏曲》の謎めいた「第
20変奏」をすぐに連想した。(ディアベリの方は、クルタークのような暗い重苦しさはなく、白っぽくもやもやした感じ)


リスト:悲しみのゴンドラ S200/ R81 (第1稿)

華やかなリストのイメージとは全く違う晩年の作品。やがて訪れる無調の時代を垣間見るような不安で不気味な調性感。

Liszt - Sergio Fiorentino (1962) Lugubre gondole version N°1 et N° 2


クルターク:Teoke Marianne-nak (For Marianne Teoke)
クルターク:Vass Lajos emlekere (In memoriam Lajos Vass)
リスト:リヒャルト・ワーグナーの墓に S202/R85

リストの後期作品を取り上げたきっかけは、リストのワーグナーへのオマージュと同じ、墓碑銘(gravestone inscription)のアイデア。
リゲティはバルトークの音楽的石碑であり、リストはバルトークに形式面で影響を与えているのがわかる。


初めて聴いた《リヒャルト・ワーグナーの墓に》。
冒頭は陰鬱なトーンで始まるけれど、やがて鐘が清らかになるような美しい旋律に代わる。生前のワーグナー自身のイメージではなく、タイトルどおり、ワーグナーが静かに眠っているお墓の姿が浮かんでくる。

Kurtag's Ghosts part 6 - Marino Formenti
Franz Liszt, Gyorgy Kurtag, Robert Schumann.



クルターク:Egy igaz ember emlekere - Szunyogh Istvan in memoriam
クルターク:Marina Tsvetayeva: It's Time
Marina Tsvetayevaは、クルタークに《Játékok》の作曲を思いつかせたピアノ教師。

シューマン:子供の情景 Op. 15 ~No. 13. Der Dichter spricht (The Poet Speaks)
《子供の情景》の終曲「詩人は語る」。別れを告げるような静けさと淋しげな雰囲気。

クルターク:… de mar elfelejtettem … - Hommage a Rozsnyai Maria
クルターク:Lendvai Erno in memoriam
クルターク:Jardanyi Pal emlekere (In memoriam Pal Jardanyi)

Lendvai Ernoは、ハンガリーの音楽学者。
このプロジェクト最後の曲は、クルタークがFarkas Ferenc以前に師事した教師へのオマージュ。耳で聴いてわかるほどに冒頭から”graveestone”(墓碑)風のタッチ。


《Jardanyi Pal emlekere》は、冒頭の高音の旋律が水滴のようにしっとりとして美しく、叙情的。
すぐにそれも消え去り、最後は低音の重苦しい響きでフェードアウト。


マリーノ・フォルメンティ 『Kurtag's Ghosts』 (1)

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