エッシェンバッハの弾くモーツァルト 

2014, 07. 19 (Sat) 10:00

エッシェンバッハのベートーヴェンとシューマンに引き寄せられてしまったので、珍しくもモーツァルトの試聴ファイルをいくつか聴いてみた。

ピアノ協奏曲第23番の緩徐楽章の寂寥感や、陰翳の濃いピアノ・ソナタK331(トルコ行進曲付)とか、やはりベートーヴェンやシューマンと同じく、エッシェンバッハのモーツァルトは普通に聴くような軽快で明るく優美なモーツァルトとは違っている。

長調の明るく軽快な曲でも、静けさが漂い、どこかしら陰りや孤独感も底流に流れているようなところもある。
特に弱音部や緩徐楽章は、沈み込んで消え入るような繊細な響きを聴くと、どうしてモーツァルトがこうなるんだろう?
もともとモーツァルトは好きではないせいか、曲や楽章によっては、今まで聴いてきたモーツァルトとはいささか隔絶した世界の音楽のように(私には)聴こえるエッシェンバッハのピアノなら、逆にもっと聴いてみたくなる。

Eschenbach - Mozart, Piano Sonata K.331 in A Major - I Andante Grazioso. Thema. Variations I_VI (1/2)



K310の第1楽章は、速いテンポとシャープなタッチでそれほど特異なところはなかったけれど、第2楽章の中間部(5:00~)になると、トリルやオスティナートの響きには痛々しくもあり。
一瞬の間をおいてから、全く何事もなかったかのように始まる平和的な再現部との隔絶感には、何とも言い難いものがある.。

Eschenbach - Mozart, Piano Sonata K.310 in A minor - II Andante cantabile



これは、珍しい(たぶん)最近のエッシェンバッハのライブ演奏によるピアノ協奏曲第23番第2楽章。
若い頃の録音よりは多少陰翳が薄くなった気がしないでもないけれど、沈み込んでいく繊細な弱音の響きは若い頃とは変わっていない。
諦めて悟ったような静けさはやはりエッシェンバッハ独特。
でも、5:47~の流れるような旋律は情感深くてとても美しいけれど、哀しそう。
こういう演奏を聴くと、ピアニストとしての今のエッシェンバッハをもっと聴きたい。

Mozart. Piano Concerto N 23. Adagio. Christoph Eschenbach.



<エッシェンバッハのモーツァルト録音>

Mozart: The Piano SonatasMozart: The Piano Sonatas
(2000/10/10)
Christoph Eschenbach

試聴ファイル



モーツァルトのピアノ独奏のCDは集める対象ではないので、(他の作曲家とカップリングで一緒に入入っていたのは別とすれば)持っているのはアラウとロンクウィッヒなど数枚。
エッシェンバッハのピアノ・ソナタ全集を買うほどではないけれど、(例外的に好きな)第8番が入っている抜粋盤なら買ってもよさそう。

モーツァルト:ピアノソナタ第8番&第10番&第11番&第15番モーツァルト:ピアノソナタ第8番&第10番&第11番&第15番
(2006/11/08)
エッシェンバッハ(クリストフ)

試聴ファイル



モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番&第19番&第21番&第23番&第27番モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番&第19番&第21番&第23番&第27番
(2012/08/22)
エッシェンバッハ(クリストフ)

試聴ファイル

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6 Comments

Kaz  

ここでコンチェルトを全曲

70歳の誕生日にパリ管と演奏したコンサートではないでしょうか。
http://www.christoph-eschenbach.com/concertos/

2014/07/19 (Sat) 16:32 | REPLY |   

yoshimi  

素敵なコンサートでした

Kaz様、こんばんは。

教えてくださってありがとうございます。
エッシェンバッハの70歳の記念コンサートが2010年ということは、今年で74歳になるんですね。
弾き振りするのがとても楽しそうです。

両端楽章は明るく優しく軽やかで、若いころとは違って、憑き物が落ちたような演奏なのかもしれません。
今のエッシェンバッハの演奏の方が、ずっと好きになれる気がします。

2014/07/20 (Sun) 00:04 | EDIT | REPLY |   

Kaz  

No title

My pleasure.
BSOのオーボエ奏者の方もブログでエッシェンバッハさんを絶賛されています。
http://wkboston.exblog.jp/21348864/

2014/07/20 (Sun) 17:22 | REPLY |   

yoshimi  

エッシェンバッハのモーツァルト

Kaz様、こんばんは。

情報ありがとうございます。
モーツァルト苦手の私といえど、ピアノ協奏曲第23番(とりわけ第2楽章)は、古今東西多数あるコンチェルトのなかでも、一番好きな曲の一つです。

お年を召したエッシェンバッハが弾き振りするモーツァルトはいいですね。
長年指揮してきたパリ管なので、お互い気心もわかりあって、信頼し合って演奏しているのでしょう。

若尾さんの文章に「天国に行き着いて....」という一節がありますが、幼少期の辛い苦境を乗り越えてようやく天国への入り口にたどり着いた人が弾くような音楽....とも言えるかもしれません。

2014/07/21 (Mon) 00:01 | EDIT | REPLY |   

ポンコツスクーター  

エッシェンバッハ

こんにちは。
エッシェンバッハにしろアシュケナージにしろ、ピアノ奏者が指揮者に転向して成功を収めるケースは少なくありませんね。しかしこの両者については、ピアノに専念してほしかった気がします。

ご紹介のモーツァルトのソナタ集はもっています。「どこかしら陰りや孤独感も底流に流れている」感じがわかります。モーツァルトの音楽のひとつの本質を掬いあげた演奏かもしれません。

2014/07/21 (Mon) 12:43 | EDIT | REPLY |   

yoshimi  

もし指揮者にならなかったら

ポンコツスクーター様、こんばんは。

エッシェンバッハの自伝によると、ピアニストとしてデビューする前から指揮者になりたかったそうです。
指揮者としての録音はほとんど聴いたことがないのですが、彼としては念願がかなった上に、ピアニストとしても弾き続けているので、とても満足しているのでしょう。
70歳のモーツァルト演奏会の様子を見ると、とても幸せそうです。

モーツァルトのソナタは、繊細で叙情美しくて模範的演奏...という定評があるようですが、ショパン、シューベルト、ベートーヴェンと同じく、暗い陰りが聴こえてきますね。
モーツァルトの場合は、彼の内面にある何かが、ずっとさりげなく現われているように思えてしまいます。
ショパン録音を聴いた音楽評論家が、こんなピアノを弾いていたらそのうちピアノが弾けなくなってしまう..とか言ったらしいです。
もし指揮者に転向しなかったとしたら、どういうピアニストになっていたのか、ちょっと考えてしまいました。

2014/07/22 (Tue) 00:36 | EDIT | REPLY |   

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