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バーバー/ピアノ・ソナタ ~ キーシンとジャッドのライブ録音 
サミュエル・バーバーで最も有名な曲は《弦楽のためのアダージョ》。
曲名は知らなくても、お葬式のときに使われる定番の曲なので、メロディを聴いたことがある人は多いはず。
現代曲にしては、ロマンティックな《ヴァイオリン協奏曲》も人気があるらしい。
でも、《ピアノ協奏曲》や独奏曲は、現代音楽的な書法で書かれた曲も多く、それも小品がほとんどなので、あまり聴かれていないに違いない。
バーバーのピアノ作品では、《ピアノ・ソナタ 変ホ短調》(作品26,1949年)が最も有名らしい。
数年前にピアノ作品は一通り聴いたことがあるけれど、ほとんど思い出せない。

アムランが《ピアノ・ソナタ》を録音しているので、音源を探していたら、偶然キーシンのライブ映像を発見。
2011年と最近のリサイタル。キーシンが現代音楽を弾くのはあまり聴いたことがないし、CDにも入っていないので、バーバーを弾いているのはかなり珍しい。
テレンス・ジャッドのコンクールのライブ録音は、CDが出ているので購入ずみ。
CDの購入目的は、世評高いヒナステラの《ピアノ・ソナタ》を聴きたかったため。
でも、カップリングされていたバーバーの《ピアノ・ソナタ》もそれに劣らないくらい素晴らしい曲と演奏。
キーシンとジャッドの両方のライブ演奏を聴くと、叙情美しく(わりと)端正なキーシンと、攻撃的で峻厳なジャッドのピアニズムの違いがわかり、曲の印象もかなり変わる。

この《ピアノ・ソナタ》の攻撃性と屈折した妖艶さで私が連想したのは、プロコフィエフ。
<ハインの好きなクラシック>の作品解説によると、スクリャービンやラフマニノフの音楽に傾倒したというバーバー。
確かに聴き直してみると、ミステリアスな妖艶さは、プロコフィエフよりもスクリャービン風に思えてきた。
私はラフマニノフはほとんど聴かないので、「鐘」との類似性はわからない。

Evgeny Kissin - Samuel Barber Sonata for Piano, Op. 26 (Live in Tel Aviv, Israel (2011))




Samuel Barber - Piano Sonata (Terence Judd.1977)


第1楽章 Allegro energico
プロコフィエフのミリタリー調というか、バーバリズム(野蛮性)を感じさせる主題で始まり、次に妖艶な情感漂う和声の旋律が次々と現われる。
キーシンの演奏は、力強くはあるけれど尖っていないタッチなので、それほど強いバーバリスティックは感じない。
屈折した妖艶さはプロコフィエフを聴いているような気がする。
テレンス・ジャッドで聴くと、低音の響きが厳しく、不気味に黒光りする戦車みたいな威圧感。妖艶な和声の響きがかなりミスティリアスティックで、スクリャービンに近く感じられる。

第2楽章 Allegro vivace e leggiero
人形が踊っているような情景を連想した曲。
キーシンは、小さな人形が軽やかに目まぐるしくステップしているような面白さがあるけれど、ジャッドは狂気をおびた人形が乱舞しているようなイメージ。

第3楽章 Adagio mesto
叙情的な第3楽章では、キーシンにはややまとわりつくような情感が内面的に感じるのに、ジャッドはちょっとミステリアスティックな響きと峻厳さがあり、何かと闘っているかのような近寄り難さがある。

第4楽章 Fuga: Allegro con spirito
曲自体は、時折モダンジャズを聴いているような気もするしせいか、前衛的というよりも現代的に感じる。
ジャッドの起伏の激しく鋭いタッチと妖艶なピアノの響きが融合し、強い推進力とダイナミズムは爆走する機関車みたい。
ジャッドの演奏は、ヒナステラの《ピアノ・ソナタ》同様素晴らしく、圧巻。

叙情美しく聴きやすいキーシンのバーバーも好きだけれど、激しく厳しいジャッドの印象はがかなり強烈。
刃物のように鋭利で峻厳なバーバリズムと、妖艶な神秘性が交錯し、神がかったような気魄と集中力が怖ろしいくらい。演奏が終わった後の拍手の凄さも納得。
20歳でこういうバーバーを弾いていたジャッドの神経は、恐ろしいほど研ぎ澄まされて鋭敏だったのではないかと想像してしまう。


<関連記事>
テレンス・ジャッド ~ ヒナステラ/ピアノ・ソナタ第1番
バーバー/ピアノ協奏曲
パーキン ~ バーバー/ピアノ作品全集

tag : バーバー ジャッド キーシン

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お久しぶりです
こんばんは、随分お久しぶりです。
もう3年半ほど前でしょうか、私のヤフーブログで「ジュゼッペ・シノーポリ」の記事に頂いたコメントから、yoshimiさんのブログをリンクさせて頂きました。
最近ヤフーを閉鎖して、すべての記事をFC2に移転したばかりです。

おお、バーバーのピアノ・ソナタを、あのキーシンや、テレンス・ジャッドが録音しているのですね!
私の手元には、この曲のCDが4種類ありますが、キーシンでもジャッドでもありませんでした。
・SOLSTICE SOCD-145 Lilia Boyadjieva (p)
・VIRGIN CLASSICS 72435-4527029 Leon McCawley (p)
・CENTAUR CRC-3090 David Northington (p)
・NAXOS 83550992 Daniel Pollack (p)
面白く聴けました
cora様、こんにちは。

随分昔のことなので、詳しくは思い出せないのですが(すみません)、私がシノーポリでコメントしたのは、たぶんシューマンの交響曲第2番についてですね。
私はドリコムブログから移ってきたのですが、FC2は機能も豊富で使いやすいと思います。

バーバーのピアノ・ソナタは、意外と録音がたくさんあるんですね。
昔聴いたときと違って、キーシンとジャッドの演奏を比較すると、とても面白く聴けました。
他の録音もいろいろ聴き比べると違いがあって面白いように思いますが、ジャッドを聴いてしまったので、それが私のスタンダード(基準)になってしまいました。
アムランの録音は、機会があれば聴いてみたいと思ってます。
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