ヒナステラ/ピアノ協奏曲第2番

ヒナステラのピアノ協奏曲は、有名な第1番と第2番、それに、1937年に作曲した《アルゼンチン風協奏曲/Concierto argentinos》の3曲。
《アルゼンチン風協奏曲》は初期の客観的民族主義時代の作品なので、アルゼンチン民謡を援用した聴きやすい曲。

対照的に、《ピアノ協奏曲第2番 Op. 39》は、ヒナステラ第三期の新表現主義時代の作品なので、ピアノ協奏曲第1番よりも、はるかに無調の響きが強く、”現代音楽的”。
それでも、不協和的な和声は不快感を感じさせる歪んだ響きはなく、緩徐部の旋律と和声は神秘的で美しい。
第一楽章が変奏曲形式なので曲の構造がわかりにくいけれど、もともとこういう作風はかなり好きなので、最初から最初まで、それなりに楽しめた。
どちらかというと、重厚な和音がガンガン響きわたるバルトーク風の第1番よりも、ピアノパートが多彩に変化して独奏曲を聴いているように目立つ第2番の方が、私の好みに合っている。


第1楽章 32 variazioni sopra un accordo di Beethoven
冒頭のピアノソロは、まさに現代音楽といった感じがする不安感を呼び起こすような分散和音。(R.シュトラウスの《ツァラトゥストラはかく語りき》(?か何か)の曲みたいに聴こえる)
この楽章は、ピアノソロのパッセージが多彩に変化していくところが、とても印象的。
調性感は薄いけれど、スケールはメシアンみたいな錯綜感があり、華やかで波打つようなアルペジオがとってもファンタスティック。
主題はベートーヴェンの第9交響曲からとられているというのに、(第9はほとんど聴かないので)原曲の旋律がわからなかったし、32もある変奏パターンも構造が把握できず。
それでも、テンポ・リズム・曲想がころころ変化していくので、それなりに面白く聴ける。
終盤のクライマックスは、乱れるようなピアノの旋律とか、凪のように静かにフェードアウトするエンディングは、吉松隆の(私の好きな)《朱鷺によせる哀歌》にちょっと似ている。

Ginastera- Piano Concerto No. 2 (1/5)
Performed by Doris de Marinis



第2楽章 Scherzo per la mano sinistra
飛び跳ねるピアノのパッセージがリズムカルで面白く、オケの楽器の音色が多彩でカラフル。
まるでジャングルのような森のなかで動物たちが蠢いているようなイメージ。
旋律とリズムと色彩感から、メシアンの鳥シリーズの曲を連想してしまった。

Ginastera- Piano Concerto No. 2 (3/5)



第3楽章 Quasi una fantasia
無調の世界のロマンティシズム(とでもいうのか)が漂うようなピアノパートの旋律や和声がとってもファンタスティックで美しい。




第4楽章 Cadenza - V. Finale prestissimo
ロマン派的なメロディアスさは全くないけれど、ピアノがとてもパワフルなカデンツァ。
打楽器のようにバンバンと鍵盤上をあちこち飛び跳ねているピアノパッセージが面白い。
ピアノが弾く速く細かい旋律は、風雲急を告げるかのような切迫感に満ちている。
それにしては、あっけないエンディングだったけど。




ピアノ協奏曲第2番を録音したCDは数種類あり、オンラインで(全部ではないけれど)聴いたのはバーバラ・ニスマンとドーラ・デ・マリニス。
バルトーク風な第1番なら、スピードと力強さで押すニスマンのピアニズムに似合っているけれど、無調の現代音楽的な第2番になると少し単調さを感じる。
マリニスの第一番はテンポが遅くてもうひとつテンションが上がらなかったけれど、第2番の方はニスマンよりもずっと良い感じ。
第2番もテンポは遅めだけれど打鍵は丁寧で、無調のとりとめもないようなパッセージでも、強弱の起伏やリズムの付け方にペダリングなど、マリニスのアーティキュレーションの方が、私にはより音楽的に聴こえる。
ということは、第1番を聴くならニスマン、第2番を聴くならマリニス。第2番の方が好きなので、マリニスのNAXOS盤を先に買いたい。

Piano Concertos 1 & 2Piano Concertos 1 & 2
(2001/04/17)
Dora De Marinis, Julio Malaval, Slovak Radio Symphony Orchestra

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