【新譜情報】 アニー・フィッシャー 『ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ全集』(再発売)
2014-09-26(Fri)
HMVの新譜情報では、アニー・フィッシャーが1977~78年にかけて録音した唯一の『ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ全集』がHungarotonから10月末に再発売予定。
2002年に発売されて、長らく在庫切れ状態だったらしい。
CDコレクターをするほど好きな女流ピアニストはほとんどいないので、CDも滅多に買わない。(例外的にマリア・ユーディナはBOXセットなど数種類持っているし、バッカウアーのブラームスも大好き)
フィッシャーというと、リリー・クラウスやクララ・ハスキルと同世代のピアニストというイメージがある。
ハスキルのベートーヴェンはいくつか聴いたことがあり(CDは買わなかったけど)、フィッシャーとクラウスは聴いた記憶がほとんどない。
HMVにあるフィッシャーのベートーヴェン全集のカスタマーレビューがあまりに良いので、いくつか聴いてみたくなってきた。
調べてみると、フィッシャーは録音ぎらいだったために、残されているスタジオ録音はわずか。ライブ録音も数は少ないけれど、いくつか出ている。
数少ないスタジオ録音のなかでは、1957~1961年に録音したベートーヴェンのピアノ・ソナタの抜粋盤(第8, 14, 18, 24, 21, 30, 32番)が4月にEMIからリリース済み。
10月末に再発売予定の全集。2002年盤と違って、モノクロでシックなジャケット写真がとても素敵。
試聴ファイルは、amazonが分売盤7枚分、NAXOSのNMLに分売盤ごとに載っている。(NMLは15分間しか試聴できないのが不便)
Hungarotonの9枚組なので、HMVとタワーレコードでは1万数千円とかなり高い。amazonではまだ情報がないので、しばらく新譜情報待ち。
2002年に発売された全集盤。
EMIから半年前にリリースされた8枚組の廉価盤BOX。
収録曲は、ベートーヴェンの7曲のピアノ・ソナタ(第8, 14, 18, 24, 21, 30, 32番)のほか、モーツァルトの ピアノ協奏曲6曲、シューベルトの即興曲2曲とピアノ・ソナタD960、シューマンの幻想曲・謝肉祭・子供の情景・クライスレリアーナ、シューマン・リスト・バルトークのピアノ協奏曲と名曲ぞろい。
ベートーヴェン以外は、好きな曲が半分くらい。音質はあまり良くないものが多い。
モーツァルトなら聴いても良い気はするけれど、それよりもいくつかCD化されているベートーヴェンのピアノ協奏曲を先に聴きたい。
調べてみると、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ集(抜粋盤)と《ピアノ協奏曲第3番》が、両方ともタワーレコード限定盤で出ていたので、この2枚を早速注文。(翌日には到着)

Youtubeでは、Hungaroton盤とEMI盤の両方のピアノ・ソナタの音源が登録されているので、聴き比べると違いがわかって面白い。
好きな「悲愴」と「月光」を聴いてみた。40歳代のEMI盤は古い録音なので、音質はややデッド。
ペダルも少なく、タッチは骨太で力感が強く、鋭く激しいフォルテは厳しい。
テンポは全体的に速く、ほぼインテンポ。(微妙にテンポが変化する部分もある)
女流ピアニストの演奏に多い(と思う)柔らかでしなやかな繊細さというものは稀薄で、男性的な力強いタッチで、強弱も起伏も激しく、クレッシェンドも急勾配で、テンション高くパッショネイト。
そのわりに骨格がしっかりした演奏なので、揺るぎなく堅牢な構築感があり、さらに躍動感豊か。さばさばとした叙情感がとても爽快。
特に、「月光」の終楽章は、一気呵成に弾き込んでいくスピード感と鋭いフォルテで迫力満点。
こういうベートーヴェンを弾く人は男性でも少ないかも。
63歳頃のHungaroton盤も力強く毅然とした演奏ではあるけれど、ペダルをかなり細かく使っているので、和声の響きの厚みや色彩感がいろいろ変化し、テンポの伸縮や強弱の起伏も細かく、若い頃よりも膨らみのある表現で、即興的な自由さも感じる。
フレージングも、一気に弾き込んでいく直線的なところがあるEMI盤よりも、Hungaroton盤は細かなテンポの変化・強弱の起伏・アクセントがさらに強くなり、フォルテは感情をぶつけるような激しさがある。(あまりにタッチが強すぎて、耳が痛くなりそう..)
そのわりに、”健康的”(とでも言うのか)な音色と硬質で明瞭なタッチ、骨格のしっかり造詣感と相まって、剛毅な迫力がありながら、明晰ですっきり爽やか。
それに、デジタル録音にしてはピアノの音がリアルで、目の前で演奏を聴いているような生き生きとした息遣いや躍動感を感じる。
もともとカラフルな音色ではないけれど、ペダルを短く細かに入れているせいか、ソノリティの厚みや色彩感にいろいろ変化があって、音響的に単調な感じはしない。
弱音や緩徐部分でも、タッチは硬質で強く、微妙なニュアンスで表現しているというわけではないので、最近の音色の美しく細部まで繊細さを追求したような演奏と比べれば、ディテールに拘った繊細さやしっとりとした叙情感は薄い。
逆に、しなしなベタベタしたところはないので、語り口はさっぱりして、後味が爽やか。
最初はEMI盤の方がテンション高く感じたけれど、それから20年あまり後のHungaroton盤の方がさらにダイナミックに激しくなっている気がしてきた。
どちらかというと、私が好きなのは、緩徐楽章ではなく、速いテンポで力強い急速楽章の演奏(「悲愴」の第1楽章、「月光」「熱情」の終楽章、第12番と第30番の第2楽章など)。
でも、急速楽章を聴いた後に緩徐楽章と聴くと、この落ち着きのあるさっぱりした叙情感が心地良く感じる。
60歳代の録音。全集盤を試聴するときにいつもチェックするのが、悲愴、葬送、月光、テンペスト、ワルトシュタイン、第31番。
経験上、この6曲で私の波長とぴたっと合えば、CDを買って外れることはない。
最初はかなり全集盤を買う気になっていたけれど、急速楽章を聴き続けるとあまりの力強さとテンション高さに聴き疲れしてくる。
強奏部のタッチと表現は、耳に響かない程度にもう少し抑えた方が好きなんだけど...。
(最近の円安の影響で)かなり高い価格設定なので、買うかどうかはちょっと悩ましいところ。
Beethoven - Piano sonata n°8 op.13 - A. Fischer
Beethoven - Piano sonata n°14 op 27 n°2 - Annie Fischer
珍しいベートーヴェンのソナタのライブ映像。
演奏する姿がとてもリズミカル。タッチも力強いわりにきびきびと軽やか。
オーバーアクションとか、(女性ピアニストに多い)過剰な感情移入や気疲れのする繊細を感じさせることもなく、こういう弾き方は好きなタイプ。
スタジオ録音を聴いていて、感情が自然にほとばしるような即興性や有機的な生々しさを感じたのがなぜか、わかるような気がする。
Annie Fischer plays Beethoven: Sonate in c (Pathétique)
2002年に発売されて、長らく在庫切れ状態だったらしい。
CDコレクターをするほど好きな女流ピアニストはほとんどいないので、CDも滅多に買わない。(例外的にマリア・ユーディナはBOXセットなど数種類持っているし、バッカウアーのブラームスも大好き)
フィッシャーというと、リリー・クラウスやクララ・ハスキルと同世代のピアニストというイメージがある。
ハスキルのベートーヴェンはいくつか聴いたことがあり(CDは買わなかったけど)、フィッシャーとクラウスは聴いた記憶がほとんどない。
HMVにあるフィッシャーのベートーヴェン全集のカスタマーレビューがあまりに良いので、いくつか聴いてみたくなってきた。
調べてみると、フィッシャーは録音ぎらいだったために、残されているスタジオ録音はわずか。ライブ録音も数は少ないけれど、いくつか出ている。
数少ないスタジオ録音のなかでは、1957~1961年に録音したベートーヴェンのピアノ・ソナタの抜粋盤(第8, 14, 18, 24, 21, 30, 32番)が4月にEMIからリリース済み。
10月末に再発売予定の全集。2002年盤と違って、モノクロでシックなジャケット写真がとても素敵。
![]() | Piano Sonatas Complete (2014年10月31日) Annie Fischer 商品詳細を見る(HMV) |
試聴ファイルは、amazonが分売盤7枚分、NAXOSのNMLに分売盤ごとに載っている。(NMLは15分間しか試聴できないのが不便)
Hungarotonの9枚組なので、HMVとタワーレコードでは1万数千円とかなり高い。amazonではまだ情報がないので、しばらく新譜情報待ち。
2002年に発売された全集盤。
![]() | Piano Sonatas Complete (2002/01/29) Annie Fischer 商品詳細を見る |
EMIから半年前にリリースされた8枚組の廉価盤BOX。
収録曲は、ベートーヴェンの7曲のピアノ・ソナタ(第8, 14, 18, 24, 21, 30, 32番)のほか、モーツァルトの ピアノ協奏曲6曲、シューベルトの即興曲2曲とピアノ・ソナタD960、シューマンの幻想曲・謝肉祭・子供の情景・クライスレリアーナ、シューマン・リスト・バルトークのピアノ協奏曲と名曲ぞろい。
ベートーヴェン以外は、好きな曲が半分くらい。音質はあまり良くないものが多い。
モーツァルトなら聴いても良い気はするけれど、それよりもいくつかCD化されているベートーヴェンのピアノ協奏曲を先に聴きたい。
![]() | Complete London Studio Re (2014/04/15) Annie Fischer 試聴ファイルなし |
調べてみると、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ集(抜粋盤)と《ピアノ協奏曲第3番》が、両方ともタワーレコード限定盤で出ていたので、この2枚を早速注文。(翌日には到着)
![]() | ベートーヴェン: ピアノソナタ集 - 第8番「悲愴」, 第14番「月光」, 第18番, 第24番, 第21番「ワルトシュタイン」, 第30番, 第32番<タワーレコード限定> (2013/03/27) Annie Fischer |
![]() | ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第3番, 他<タワーレコード限定> (2011/12/02) Annie Fischer |



Youtubeでは、Hungaroton盤とEMI盤の両方のピアノ・ソナタの音源が登録されているので、聴き比べると違いがわかって面白い。
好きな「悲愴」と「月光」を聴いてみた。40歳代のEMI盤は古い録音なので、音質はややデッド。
ペダルも少なく、タッチは骨太で力感が強く、鋭く激しいフォルテは厳しい。
テンポは全体的に速く、ほぼインテンポ。(微妙にテンポが変化する部分もある)
女流ピアニストの演奏に多い(と思う)柔らかでしなやかな繊細さというものは稀薄で、男性的な力強いタッチで、強弱も起伏も激しく、クレッシェンドも急勾配で、テンション高くパッショネイト。
そのわりに骨格がしっかりした演奏なので、揺るぎなく堅牢な構築感があり、さらに躍動感豊か。さばさばとした叙情感がとても爽快。
特に、「月光」の終楽章は、一気呵成に弾き込んでいくスピード感と鋭いフォルテで迫力満点。
こういうベートーヴェンを弾く人は男性でも少ないかも。
63歳頃のHungaroton盤も力強く毅然とした演奏ではあるけれど、ペダルをかなり細かく使っているので、和声の響きの厚みや色彩感がいろいろ変化し、テンポの伸縮や強弱の起伏も細かく、若い頃よりも膨らみのある表現で、即興的な自由さも感じる。
フレージングも、一気に弾き込んでいく直線的なところがあるEMI盤よりも、Hungaroton盤は細かなテンポの変化・強弱の起伏・アクセントがさらに強くなり、フォルテは感情をぶつけるような激しさがある。(あまりにタッチが強すぎて、耳が痛くなりそう..)
そのわりに、”健康的”(とでも言うのか)な音色と硬質で明瞭なタッチ、骨格のしっかり造詣感と相まって、剛毅な迫力がありながら、明晰ですっきり爽やか。
それに、デジタル録音にしてはピアノの音がリアルで、目の前で演奏を聴いているような生き生きとした息遣いや躍動感を感じる。
もともとカラフルな音色ではないけれど、ペダルを短く細かに入れているせいか、ソノリティの厚みや色彩感にいろいろ変化があって、音響的に単調な感じはしない。
弱音や緩徐部分でも、タッチは硬質で強く、微妙なニュアンスで表現しているというわけではないので、最近の音色の美しく細部まで繊細さを追求したような演奏と比べれば、ディテールに拘った繊細さやしっとりとした叙情感は薄い。
逆に、しなしなベタベタしたところはないので、語り口はさっぱりして、後味が爽やか。
最初はEMI盤の方がテンション高く感じたけれど、それから20年あまり後のHungaroton盤の方がさらにダイナミックに激しくなっている気がしてきた。
どちらかというと、私が好きなのは、緩徐楽章ではなく、速いテンポで力強い急速楽章の演奏(「悲愴」の第1楽章、「月光」「熱情」の終楽章、第12番と第30番の第2楽章など)。
でも、急速楽章を聴いた後に緩徐楽章と聴くと、この落ち着きのあるさっぱりした叙情感が心地良く感じる。
60歳代の録音。全集盤を試聴するときにいつもチェックするのが、悲愴、葬送、月光、テンペスト、ワルトシュタイン、第31番。
経験上、この6曲で私の波長とぴたっと合えば、CDを買って外れることはない。
最初はかなり全集盤を買う気になっていたけれど、急速楽章を聴き続けるとあまりの力強さとテンション高さに聴き疲れしてくる。
強奏部のタッチと表現は、耳に響かない程度にもう少し抑えた方が好きなんだけど...。
(最近の円安の影響で)かなり高い価格設定なので、買うかどうかはちょっと悩ましいところ。
Beethoven - Piano sonata n°8 op.13 - A. Fischer
Beethoven - Piano sonata n°14 op 27 n°2 - Annie Fischer
珍しいベートーヴェンのソナタのライブ映像。
演奏する姿がとてもリズミカル。タッチも力強いわりにきびきびと軽やか。
オーバーアクションとか、(女性ピアニストに多い)過剰な感情移入や気疲れのする繊細を感じさせることもなく、こういう弾き方は好きなタイプ。
スタジオ録音を聴いていて、感情が自然にほとばしるような即興性や有機的な生々しさを感じたのがなぜか、わかるような気がする。
Annie Fischer plays Beethoven: Sonate in c (Pathétique)
tag : ベートーヴェンアニー・フィッシャー
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