バックハウスのショパン録音 

2014, 10. 21 (Tue) 18:00

バックハウスのライブ録音で聴いたショパンのエチュードやワルツは、ショパンらしくない(と思われる)ところが面白い。
あまり(ほとんど)ルバートをかけず、情感たっぷりな歌い回しもしないので、感傷的なところがなく、ほのかな叙情感が後口爽やか。

バックハウスのエチュード録音は、ライブ録音以外では、SP時代の復刻盤とDECCAのスタジオ録音の2種類。
復刻盤は、1928年録音にしてはかなり音が良い。
44歳頃の演奏なので、68歳のときの1952年録音より、かなりテンポが速く、タッチも軽やかで、指回りがずっと良い。
表現も後年よりいくぶんロマンティックというか、起伏がいろいろついていて情感は濃い。
昔はこういうショパンを弾いていたのかというのがわかるので、試聴してるだけでも面白い。
なかにはテンポが速すぎると感じる曲も結構あり、選曲もエチュードばかり聴くよりも、ピアノ・ソナタにバラードやワルツなどが入っている方が良いので、今買うのはパス。


Chopin EtudesChopin Etudes
(2011/01/25)
F. Chopin

試聴ファイル



DECCAのスタジオ録音は、1950年と1952年の録音なので、音はそこそこ良い。
すでにパブリックドメインになっているので、2000年以降に数種類のCDが発売されている。
DECCAの国内盤は、今は在庫切れ状態らしい。
すぐに入手できて安いのが、Archipel盤。音質は国内盤とほぼ同じ。音の線が細くて少しキンキンして、やや奥の方から聴こえてくるので、あまり好きな音質ではない。
Youtubeで聴いた音源では、やや篭り気味ながら、もっと柔らかく丸みのある音質だった。これはTestament盤の音質とよく似ている。
米国amazonのレビューでは、”LP録音の音に近いのはArchipel盤だが、Testament盤の方が音は良い”と書かれていた。
また、同じ音源のはずなのに、録音年と場所の情報に少し違うところがある。
DECCAのライセンス盤であるTestament盤の紹介文には、「1950年~1952年、ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホールにおけるモノラル録音」とある。
Archipel盤は、1950年、1952年(CDジャケットには”1950/53”とプリントされている)のロンドンでの録音。
録音場所に関しては、DECCAはロンドンにAbbey Studioがある。でも、バックハウスの場合は、ベートーヴェンのモノラル盤全集はヴィクトリア・ホールで録音している。
この2枚は、違う音源なのだろうか?曲目は全て一緒だし、録音年から考えても、スタジオ録音をすぐに再録音するとは思えない。
結局、両方の試聴ファイルを聴いて、Testament盤の音が近くて、まろやかで残響も適度にあるので、こちらを購入することに。

<DECCA国内盤>
ショパン:ピアノ・ソナタ第2番 他ショパン:ピアノ・ソナタ第2番 他
(2009/11/25)
バックハウス(ヴィルヘルム)

試聴ファイル


<Archipel盤>
Chopin: Piano WorksChopin: Piano Works
(2005/11/09)
Wilhelm Backhaus

試聴ファイル


<Testament盤>
Piano WorksPiano Works
(2004/05/11)
Wilhelm Backhaus

試聴ファイル


68歳頃のバックハウスのショパンは、テンポはそれほど速くはなく、昔と変わらずとても軽やかなタッチ。
(いかにも難曲を弾いている風に)技巧がぎらぎらと前面に出るようなことはなく、技巧的な余裕を感じさせるくらいに、力みのない落ち着いた弾き振り。

たぶんベーゼンドルファーを弾いているのだろう。少し丸みのある柔らかで明るい音が綺麗で品良く、フォルテでも打鍵が力任せになることなく、音がまろやか。
情感たっぷりなルバートはなく、一音一音きっちりとした打鍵と明晰なフレージングなので、いかにも練習曲風に淡々と弾いているような印象をうける。
一見素っ気なさはあるけれど、このくらいにべたつきのない叙情感の方が練習曲らしくて聴きやすい。
Op.25の第1番の優しさとか、第9番のほのかに滲むユーモアとか、音の隙間からいろんな表情がちらちらと垣間見えるように感じられるし、さらりとしたタッチで弾く「別れの曲」は、逆にしみじみとした味わいがあったりする。
古い録音ゆえのいささかレトロな薫りが漂うピアノの音とさっぱりとした叙情感がとても心地よく、このエチュードは何度聴いてももたれることなく、食傷しないのが不思議。

[Wilhelm Backhaus,1952] Chopin: Etudes (selection) (1952)



これはカップリングされている"Valse brillante" Op.34。
ワルツにしてはちょっと硬いリズムかもしれないけれど、バックハウスにしては華やかできらきらと煌くようなショパン。
0:55くらいで弾くスケールはちょっとお洒落で甘い感じのするフレージング。このワルツを弾いている姿を見てみたくなる。

Wilhelm Backhaus plays Chopin Waltz Op. 34 No. 1 in A flat



「ショパン弾きの系譜」(NHK〈スーパーピアノレッスン〉テキスト 2005年8月〜11月)[青柳いづみこ]
バックハウスのショパンは「むっつり系」なんだそう。1953年の録音が「クソ真面目な顔をしながら、ときどき口もとをにっとゆるめたり、なにげにすごく興奮したり、珍しいショパンです。」という文章を読むと、やっぱりそういうショパンなんだ~と納得。

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