カッチェン ~ ブラームス/ピアノ協奏曲第1番&第2番(ディスコグラフィ)

カッチェンの《ブラームス/ピアノ協奏曲第1番&第2番》の録音は、ここ数年、新譜が何枚もリリースされているので、ディスコグラフィをまとめておきました。

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スタジオ録音(ステレオ) 
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ピアノ協奏曲第1番:モントゥー指揮ロンドン交響楽団(1959年)
ピアノ協奏曲第2番:フェレンチク指揮ロンドン交響楽団(1960年)



『ピアノ協奏曲第1番&第2番~The Art Of Julius Katchen, Vol. 3』
[豪DECCA盤](廃盤)
『ジュリアス・カッチェンの芸術』シリーズ(全18タイトル) (DECCA国内盤) 第1番と第2番の分売盤2枚。(廃盤)

The Art of Julius Katchen, Vol. 3The Art of Julius Katchen, Vol. 3
(2004/01/12)
Israel Philharmonic Orchestra,Pierre Monteaux, János Ferencsik, István Kertész

試聴する

私のステレオでは、輸入盤のリマスタリングは、薄いベールを1枚かぶった音に聴こえるし、残響に少しエコーがかかった様にも感じる。(聴き慣れると、最初に覚えた違和感はほとんど感じなくなったけれど)
当時、カッチェンは32歳、モントゥーは83歳。
演奏は、ルバートを多用し緩急の変化も細かく、陰影のある叙情と力強さが交錯するカッチェンらしいブラームス。
ライブ録音に比べると、強奏部はほんの少し力感やスピード感は穏やかになっているかも。
緩徐部分でも、澄んだ音色と柔らかくしなやかなタッチで、流麗さが増している気がする。

Brahms - Piano concerto n°1 - Katchen / LSO / Monteux


Brahms - Piano concerto n°2 - Katchen / LSO / Ferencsik




『ブラームス: ピアノ協奏曲 第1番&第2番』(“ヴィンテージ・コレクション+plus”特別編/没後50年 ピエール・モントゥーの芸術 Vol.2 シリーズ)(タワーレコード限定盤)

ブラームス: ピアノ協奏曲 第1番&第2番<タワーレコード限定>ブラームス: ピアノ協奏曲 第1番&第2番<タワーレコード限定>
(2014/10/15)
Julius Katchen,Pierre Monteux,Janos Ferencsik,London Symphony Orchestra

試聴ファイルなし
(ブックレットの解説は、ほとんどモントゥーに関する記述)

タワーレコードのCD紹介文によると、今回の復刻盤では、アナログマスターからハイビット・ハイサンプリングでデジタル化しているので、既発盤よりも鮮明できめ細やかな音質になっているという。
発売日より前に届いた新譜を早速聴いてみると、第1番の方は、まだピアノの音が篭っている時はあるし、オケより少し小さい音なので、協奏時はピアノが聴き取りにくい。
それでも、DECCA輸入盤の残響がもこもととしてエコー過剰気味なところが改善されて、音と残響がシャープでクリアになってすっきりとして瑞々しく感じられる。音に込められた繊細なニュアンスが聴きとりやすい。
音が良くなったせいで、タッチにきりりとした鋭さが加わり、清々しく繊細な叙情感が増して、演奏自体が引き締まって聴こえる。
カッチェン独特のルバートをかけたロマンティックな歌い回しが、この上なく私にはしっくりと馴染んでしまう。
特に好きなのが、第1楽章の中盤にあたる201小節から6小節にわたって、クロスリズムで叙情的な旋律が続くところ。
硬質の音で、左右の旋律がそれぞれくっきりと鮮やかに浮かびあがって交錯する。
なかでも、第202小節の後半部分のパッセージの弾き方がとても印象的。(Youtubeの音源(↑)の演奏時間では8:49のところ)。
連打するみたいに次々に弾く(アルペッジョの)A-A-F音が、アクセントをつけたように明瞭に響いて(こう弾く人はめったにいない。少し似たような弾き方をしていたのがゲルバー)、ロマンティシズムが薫り立つよう。
第2番の方は、DECCA輸入盤の残響が少なくてちょっと古めかしいゴツゴツした音質が改善され、残響が増えて聴きやすい。
2曲とも以前よりさらに魅力が増して、惚れ惚れしながら聴いてしまう。カッチェンのブラームスは本当に素敵。


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ライブ録音(モノラル) 
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カッチェンのブラームスの《ピアノ協奏曲第1番》のライブ録音は、Youtubeの音源も含めて4種類。
ライブ録音の場合は、総じてスタジオ録音よりもテンポが速めで、しなやかさは薄くなり、力感とスピード感が増している。
特に第3楽章は、ライブ録音の方が時々テンポが加速が強いせいか勢いが良く、スタジオ録音にも増してカッチェンの熱気が伝わってくる。
第2番の方は、LP/CD化の有無を問わず、ライブ録音が全然見当たらない。

ブール指揮南西ドイツ放送交響楽団(1951年)[Urania盤](廃盤)

Brahms: Piano Concerto No. 1Brahms: Piano Concerto No. 1
(2001/01/01)
Julius Katchen, Sdwestfunk Sinfonieorchester, Ernest Bour

試聴する

このライブ録音は、テープノイズらしき雑音とフォルテの音割れがひどいのが難点。
音はクリアで分離も悪くなく、高音はわりに綺麗だけど、奥の方から聴こえてくる。
カッチェンが25歳の時の演奏なので、若々しい激情と力強さのあるブラームス。
肩に力が入り過ぎて、タッチが強く荒っぽいところが多々あり(特にフォルテ)、ミスタッチも結構目立つ。
表現は直線的なところがあってやや深みに欠け、タッチの丁寧さと弱音の繊細さは後年の演奏に比べて不足気味。
全体的にあちこちでオケが遅れそうになっていて、ソリストに合わすのが大変そう。(これは他のライブ録音でもよくあることだけど)



コンヴィチュニー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(1960年)[Weitblick盤]

Brahms, Mozart: Piano ConcertosBrahms, Mozart: Piano Concertos
(2006/05/30)
Katchen(P), Konwitschny / Lgo

試聴ファイルなし

少し篭ったような音で高音がいくぶん痩せ気味な感じはするけれど、演奏は速いテンポで音量豊かで力強さもあって雄渾。
あまりペダルを使っていないせいか、音像がくっきりと立ち上がってくるので、骨格もしっかり。
テンポが上がっても力感・量感とも落ちることはなく、ライブならではの一気呵成の勢いと白熱感がある。
力強さと感情の間で揺れ動くような叙情的な表現が強いので、疾風怒涛のなかを駆け巡るようにロマンティック。
伴奏は地鳴りのような響きのする重厚さと迫力があって、骨太でがっちりとした安定感がある。
このライブ録音でも、時々ピアノが”突進”して加速しているのは、カッチェンらしいところ。

収録されているアンコール曲は、モーツァルトの《ピアノ協奏曲第20番第2楽章》。
ブラームスとは打って変わって、儚げで美しいモーツァルト。



ケンペ指揮BBC交響楽団(1967年)[ica盤]

Ica Classics Legacy/Brahms Piano Concerto No.1 Ica Classics Legacy/Brahms Piano Concerto No.1
(2011/11/15)
Katchen(Piano), Kempe(Conductor), BBC Symphony Orchestra

試聴する

ロンドンのBBCマイダ・ヴァレ・スタジオでのライブ録音(放送用録音?)。
音がクリアで聴きとりやすいけれど、ピアノ・オケとも若干遠めから聴こえるし、低音の重厚感やゴツゴツとした骨太感がやや薄めで、全体的に音が少し高く感じられる。
ホールではなく、スタジオで公開録音しているらしく、狭い空間で残響が短く、ピアノの音が中空から聴こえてくる。
それに、他のライブ録音よりもピアノの音の線が細く、量感・力感も弱く(上ずったように)感じられる。
ica盤は、ライブ録音のなかでは一番新しくて期待していたわりに、音質が悪くてなかなか聴く気が起こらない。

カップリングは、ショパン《バラード第3番》、リスト《メフィスト・ワルツ第1番》(以上、1965年)、シューマン《森の情景》から「予言の鳥」、アルベニス《イベリア第2集》から「トゥリアーナ」(以上、1958年)。
シューマンとアルベニスは過去の録音が全く残っていないので、とても珍しいレパートリー。音も鮮明でコンチェルトよりも聴きやすい。
ボーナストラックが収録されていて、これも貴重なカッチェンのインタビュー。
モーツァルトの《ピアノ協奏曲第20番》とブラームスの《ピアノ協奏曲第1番》について、カッチェンが語ったもの。
少し早口でエネルギッシュな話し方は、カッチェンのピアノ演奏に通じるものがあるかも。



アルトゥール・ローター(Arthur Rother)指揮バイエルン放送交響楽団(1961年)

Toutubeで見つけた音源。カッチェンのディスコグラフィには載っていないライブ音源で、正規盤(それにCD-R盤も)のCDでは発売されていない。
1951年と1960年のライブ録音に比べると、かなり良い音質で、ピアノの音も近めで明瞭。放送用音源かも。
硬質でシャープなタッチと力感・量感のある線のしっかりしたクリアな音も、かなり速めのテンポなのについつい加速してしまうのも、いつものカッチェンらしいところ。
特に、第3楽章はテンポがすこぶる速くて勢いが良く、第2楽章はスタジオ録音並のゆったりしたテンポで叙情深く。
モノラル盤のなかでは、これが一番聴きやすい音質なので、CDで聴けないのはとっても残念。

Julius Katchen " Piano Concerto" No 1" Brahms (1.Mov.)
Symphony Orchestra of the Bavarian Radio、Arthur Rother, conductor、München 1961


Julius Katchen " Piano Concerto" No 1" Brahms (2.Mov.)
Julius Katchen " Piano Concerto" No 1" Brahms (3.Mov.)



<録音時間>
DECCA盤が少し遅く感じられる以外は、ライブ録音で体感するテンポ感はどれも同じくらいに速い。(特に第3楽章)
1961年のライブ録音は、第2楽章のテンポがスタジオ録音並みにかなりゆったり。

      第1楽章/第2楽章/第3楽章
1951年 21:08 / 13:28 / 11:13 (ブール指揮/Live/Mono) [Urania]
1958年 21:06 / 14:00 / 11:46 (モントゥー指揮/Stadio/Stereo)[Towerrecord]  
1960年 21:03 / 13:03 / 11:12 (コンヴィチュニー指揮/Live/Mono)[Weitblick]   
1961年 21:18 / 13:56 / 11:19 (ローター指揮/Live/Mono)[Youtube]
1967年 21:04 / 12:58 / 11:07 (ケンペ指揮/Live/Mono)[ica]
※余白部分が長い部分と、第3楽章の拍手以降は除外。

CDのトラック別録音時間をチェックしていたら、スタジオ録音のDECCA輸入盤とタワーレコード限定盤では、(余白部分を除いた実際の)演奏時間が違っているのに気が付いた。
なぜかタワーレコード盤の方が、各トラックとも10秒前後短い。(10秒程度の差なら、体感的にはほとんど差がないとは思うけど)
両盤とも同じアナログのマスターテープからリマスタリングしているはずなのに、オーディオに詳しくない私には、どうして録音時間に差があるのか不思議。(販売元のタワーレコードに問い合わせてみたけれど、全く回答なし)
テンポの速い方が好きなので、それほど気にはならないとはいえ、実際の演奏時間と同じなのは一体どちら?



<参考映像>
クリストフ・ドホナーニ指揮ベルリンフィルとのリハーサル映像(1967年)
ライブ映像も録音も残っていない演奏会の珍しいリハーサル風景。

Julius Katchen - Brahms 1967
Rehearsing in Berlin under Christoph von Dohnányi and Berlin Philharmonic Orchestra.



<過去記事>
 『ジュリアス・カッチェンにまつわるお話』

タグ:ブラームス カッチェン

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コメント

Rotherのyoutube音源なかなか良いですね。情報ありがとうございました。私は元々Konwitschnyが好きでKonwitschny盤ばかり聴いていましたが。Katchenが好きな人もなかなかいないので、今後ちょくちょく覗かせていただきます。ドイツ・レクイエムとかの声楽作品はお好きですか?

 

「ブルックナーも好きですが」様
初めまして。コメントありがとうございます。

Konwitschny盤はもう少し音質が良いと聴きやすかったのですが、それでも勢いが良く臨場感があるのがいいですね。
Rotherの音源は確かに残っているようなので、CD化されたら嬉しいです。

ブラームスに限らず、合唱曲はほとんど聴きませんが、リートなら作曲家にかかわらず、たまに聴くことはあります。
ピアノメインで聴けるものが好きなので、声楽の原曲よりも、リストやブゾーニなどのピアノ編曲ものを聴くことが多いですね。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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