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佐藤優 『紳士協定-私のイギリス物語』
本屋さんで平積みになっていたのでたまたま見かけたのが、佐藤優の新潮文庫新刊『紳士協定―私のイギリス物語』
少し読んでみると、これがとっても面白くて早速購入。

紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫)紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫)
(2014/10/28)
佐藤 優

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紳士協定―私のイギリス物語紳士協定―私のイギリス物語
(2012/03)
佐藤 優

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単行本の表紙の写真にある犬は、グレン少年の愛犬で友達でもある”ジェシー”をイメージしたもの。
文庫本の表紙は、ロンドンの建物の写真。私には単行本の表紙の方がグレン少年を連想させるし、雰囲気的にも好き。

【佐藤 優『紳士協定―私のイギリス物語―』刊行記念対談】日本からは見えないイギリス(林 望×佐藤 優)[新潮社ウェブサイト]


佐藤優の政治論や組織論とかはあまり興味がないので、持っている本は主に自伝的ノンフィクションと読書論・書評集で、『獄中記』、『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』、『自壊する帝国』、『甦るロシア帝国』、『私のマルクス』、『インテリジェンス人間論』、『読書の技法』。

『紳士協定―私のイギリス物語』は、外務省時代のイギリス研修生活をつづったもの。
この本のメインは、研修そのものよりも、ホームステイしたごく普通のイギリス労働者階級の家族との交流と、イギリス社会を巡る同僚外交官との対話。
特に、その家族の次男グレン少年との対話を通じて、イギリスのグラマースクールでの教育や階級社会の現実が伝わってくる。
『紳士協定』というのは、佐藤氏とグレン少年との”取引”-佐藤氏がグレン少年のラテン語の勉強を見てあげるのと交換に、グレン少年は佐藤氏に正しい英語の使い方を教えてあげる-をしたので、それを”紳士協定”と表現したもの。

淡々とした筆致ながら、英国での英語研修所とロシア語研修をうけた陸軍学校の様子や、ホームステイ先の家庭(中流階級の下クラス)の様子を通して、英国の階級社会や食生活、英国人の日本人観など、興味を引かれる内容がたくさん。
同じく研修生のキャリア外交官・武藤氏との会話からも、英国の階級社会論や外務省内のルールとかが垣間見える。

英国の家庭料理やレストラン・パブで出される料理のなかでは、ヨークシャープディングとライスプディングはとっても美味しそう。これは自分でも作れるはず。でも、キドニーパイは私もパスしたい。
本書の大半を占めるグレン少年との会話やロンドンめぐりの様子は、ドラマティックなところは全然ないのに印象の残る場面が多い。
たぶん、グラマースクールの学生のグレン少年が、日本の大学生並みに知性的で利発なので、会話にも単なる雑談を超えた奥行きがあるのと、友達のいないグレン少年が佐藤氏がとても好きで一緒にいるのがとても楽しそうで微笑ましいから。
なぜグレン少年が母親の作ったヨークシャープディングが嫌いなのか、佐藤氏が語った”耳なし芳一”がとても恐くて英語版の本を買ったこと、中華料理よりも韓国料理が気に入ったとか、etc.。
ロンドンの本屋さんめぐりも面白い。海外に行ったときは、私も地元のスーパーマーケットと本屋さんを探検してみるので、佐藤氏が本屋さんで原書を探すシーンは私も共感。

『戦場のメリークリスマス』をグレン少年と一緒に見た部分は、かなりページを割いている。
この映画は見ていないのであまり興味を引かれることがなく、それよりも印象に残ったのは、グレン少年が付き合っている彼女との交際の悩みごとを打ちあけたときに、佐藤氏が語ったゴールズワージーの『林檎の木(The Apple Tree)』の解釈。
この小説は高校時代に読んだし、『サマーストーリー』という映画にもなっている。
林檎の樹 ジョン・ゴールズワージー著 [基礎科学研究所]

エウリピデスの悲劇が引用されているこの小説は、佐藤氏によると、「ギリシア人の運命観を現代のイギリス人にわかりやすく伝えている」ものだという。
昔読んだときは、単に田舎の少女と都会の若者のひと夏の恋物語とその残酷な結末...としか思っていなかったので、ギリシア悲劇的な「運命のめぐり合わせ」を語ったものだとは全然わからなかった。
佐藤優のノンフィクションでは、彼が読んだ本のことがたびたび出てきて、なるほどこういう読み方があるのか~と思うことが度々。読書論や読書案内のなかでは、立花隆と同じくらいに私にはいろいろ知ることが多い。

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yoshimi

Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

愛聴するのはベートーヴェンとブラームス、それにバッハ。ロマン派ならリスト。​さらに現代(20​世紀)の音楽を探検中。特に好きなのはピアノ音楽(ソロ、コンチェルトに室内楽)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなピアノ曲:ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第30・31・32番,ピアノ協奏曲第3番&第4番。ブラームス/ピアノ協奏曲第1番&第2番、ヘンデル変奏曲、後期ピアノ作品集。バッハ:パルティータ、フランス組曲、イギリス組曲

好きなヴァイオリン曲:バッハ・ベートーヴェン・ブラームスのヴァイオリンソナタ(ピアノ&ヴァイオリン)、シベリウス/ヴァイオリン協奏曲

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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