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オリヴァー・サックス『音楽嗜好症 - 脳神経科医と音楽に憑かれた人々』 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
『妻を帽子とまちがえた男』などの医学ノンフィクションで有名な脳神経科医オリヴァー・サックスの著作『音楽嗜好症 - 脳神経科医と音楽に憑かれた人々』(2010年)の文庫版が、8月にハヤカワ・ノンフィクション文庫から発売されていた。

先日本屋さんで本棚を眺めていて、文庫版を発見。
私は数年間、単行本発売時にすぐに購入した。
文庫化されても1000円以上と結構高いけれど、価格に見合っただけの充実した内容。
音楽が関わっている脳神経障害の症例が詳しく説明されていて、当時耳鳴りに関する情報をいろいろ調べていたところだったので、本当に役に立った本だった。
医学もの自体に興味がなくとも、音楽好きの人なら、音楽と脳神経の予想もつかない奇妙な関係に驚くのではなかろうかと。

サックスの著作のなかで、私が一番興味を引かれた症例がたくさん載っていたのが、本書と『火星の人類学者』(これもハヤカワ文庫)。
昔からハヤカワ文庫は、SF・NV・NF文庫をよく読んでいたけれど、特に最近はノンフィクションのなかでも科学ものが充実しているような気がする。

音楽嗜好症: 脳神経科医と音楽に憑かれた人々 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)音楽嗜好症: 脳神経科医と音楽に憑かれた人々 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
(2014/08/22)
オリヴァー・サックス

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「第1部 音楽に憑かれて」
音楽がもたらす病的な症例:突発性音楽嗜好症、音楽発作、音楽誘発性癲癇、脳の中の音楽、脳の中の虫、音楽幻聴

音楽が耳鳴りのように耳や頭のなかで鳴り続ける”音楽幻聴”。


「第2部 さまざまな音楽の才能」
音楽を知覚する機能や他の感覚との関係:失音楽症、絶対音感、蝸牛失音楽症、片耳による立体知覚、音楽サヴァン症候群、音楽と視覚障害、共感覚と音楽

”音楽サヴァン症候群”の驚異的な症例は、2000曲のオペラを記憶している「生き字引き」のマーティン。

「第3部 記憶、行動、そして音楽」
音楽の持つ治癒力と音楽療法:音楽と記憶喪失、失語症と音楽療法、運動障害と朗唱、音楽とトゥレット症候群、リズムと動き、パーキンソン病と音楽療法、幻の指(片腕のピアニスト)、音楽家のジストニー(筋失調症)

”音楽と記憶喪失”の症例は、脳損傷の後遺症のために7秒しか記憶がもたなくなった音楽学者で合唱指揮者のクライヴ。

「第4部 感情、アイデンティティ、そして音楽」
音楽と精神・神経性疾患との関係:音楽の夢、音楽に対する無関心、音楽と狂気と憂鬱、音楽と感情、音楽と側頭葉、ウィリアムズ症候群、認知症と音楽療法

”第22章 小筋肉のアスリート-音楽家のジストニー”は、ピアニストのレオン・フライシャーのお話。
1960年代前半に、右手の指がジストニー(ジストニア)で動かなくなってしまったので、ピアニスト活動を断念。
その後左手だけで演奏するようになったけれど、1980年代に新しい治療法であるボトックス治療(ボツリヌウ毒素をごく少量投与する)によって、再び両手でピアノが弾けるようになるまでに回復した。


<サックスの著作に関する過去記事>
”脳の虫”と”音楽幻聴” ~ オリヴァー・サックス著『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)- 脳神経科医と音楽に憑かれた人々』より
”音楽家のジストニー”&”認知症と音楽療法” ~ オリヴァー・サックス著『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)- 脳神経科医と音楽に憑かれた人々』より
オリヴァー・サックス著『音楽嗜好症』 ~ 「音楽と記憶喪失」
音楽サヴァン症候群 ~ 2000曲のオペラを記憶している「生き字引き」

オリヴァー・サックス著 『火星の人類学者-脳神経科医と7人の奇妙な患者』

オリヴァー・サックス著『妻を帽子とまちがえた男』 ~ 「ただよう船乗り」

tag : オリヴァー・サックス

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オリバー・サックスの著書では意外だと思いました
こんにちは。
自分も先月にその本人を見つけて少しずつ読んでいるとこです。
まだ失音楽症のところですが、最初に書店で手にとり斜め読みした際に、音楽と感情、音楽と記憶について触れていることにとても興味が湧き、図書館にはまだ置いておりませんでしたので、そのまま購入しました。
購入後、ゆっくりと読んでいくと、耳鳴りや音楽鳴りついて、具体的にどのよな時にどのような音楽が鳴るのか、発作を抑える薬の処方で一時的に改善したなど自分知らなかった内容が多く興味深いと思います。
オリバー・サックスの著書では、以前に火星の人類学者のを教えて頂き、早々読んだことを思い出しました。
Hiroshi
知らなかった世界を知ることができました
Hiroshi様、こんにちは。

「音楽嗜好症」は、音楽好きな人にとって、思いがけない音楽と脳との関係をいろいろな症例を通じて知ることができる良書ですね。
それに、従来の日本語研究論文では精神医療分野の”幻聴”とされていた「音楽耳鳴り」について、脳神経との関係で説明されていたので、大変勉強になりました。
この本を読んだことがきっかけで、音楽耳鳴りに関する論文を調べて、自分なりにまとめることができましたので、まさにタイムリーに出会えた本です。

音楽耳鳴りに関しては、「”脳の虫”と”音楽幻聴”」という記事を昔書きましたので、よろしければご参考にしてください。
http://kimamalove.blog94.fc2.com/blog-entry-1865.html

「火星の人類学者」も、症例数は少ないのですが、本書と並んで好きな本です。
特に、アスペルガー型症候群の動物学者テンプル・グランディンの話は、忘れることがないくらいに印象的でした。
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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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