*All archives*



アンデルシェフスキ ~ バッハ/イギリス組曲集(第1・3・5番)
アンデルシェフスキの新譜『バッハ:イギリス組曲集』が、amazonの当初の発売予定日よりも1週間遅れてやっと到着。
アンデルシェフスキが納得のいくまで何度も録り直したというだけあって、今まで聴いた彼のアルバムの中でも最も完成度が高く(と思う)、シマノフスキのピアノ作品集と並んで私のベスト盤。
それに、今まで聴いてきたイギリス組曲の録音のなかでも、(第1・3・5番に関しては)ケンプ、シフ、ペライアよりもはるかに好きで、やはりマイベスト。

English Suites ImportEnglish Suites Import
(2014/11/11)
Anderszewski

試聴ファイル(warnerclassics.com)


ステレオで聴くと、録音音質が良いせいか、アンデルシェフスキの音が本当に美しい。
残響は短かすぎず長すぎず。粒立ち良く芯がしっかりしたやや硬質の音なのに、響きに丸みがあってとても耳ざわりが良い。
温度感の低いしっとりとした潤いと、ややパステル調の淡さのある上品な色彩感がとても美しくて、密やかで品の良い雰囲気を醸し出している。
何より、アンデルシェフスキの精緻で洗練された多彩なタッチと、声部が鮮やかに聴き分けられる音色の色彩感が素晴らしくて。
さらに旋律の横の流れも滑らかで、絡み合う声部には立体感があり、細かな抑揚で表情豊か。さり気なく散りばめられた装飾音が格好良くてスタイリッシュ。
以前よりも、ノンレガートが柔らかくまろやかになり、レガートのように滑らかに流れる旋律がとても綺麗。
速めのテンポと歯切れの良いタッチで、軽快で生き生きとした躍動感が気持ちよく響く。
特に、縦線の和声の美しさと、横線の旋律の滑らかな流れとのバランスが絶妙。
どの声部も鮮やかに分離され、滑らかな流れに乗って互いに絡み合っていき、縦の線を全然強調していないのに、和声の響きも綺麗。
テンポは速すぎることなく、よくコントロールされているので、軽やかなタッチのわりに軽くなりすぎることなく、心落ち着くような明るさと躍動感が気持ちよい。
羽毛にくるまれているような質感の弱音には密やかで陰りがあって、微妙なニュアンスが漂う。
『フランス組曲』と比べて構築的な堅牢さのある『イギリス組曲』にしては、このソノリティと荘重・厳粛さを押し出さない演奏とが相まって、語りかけてくるようなパーソナルな音楽に聴こえる。
「本質的にコスモポリタン」とアンデルシェフスキの言葉どおり、現代的というよりも、「コスモポリタン」という言葉が良く似合うバッハ。

第1番は、アンデルシェフスキの明るく柔らかなソノリティがとても引き立っている。
この曲はあまり好きではなかったのに、かなり好きになってしまった。
特に、”Allemande”はペダルを使った響きの明るさと美しさにはうっとり。優しく包みこまれるような感覚がとても心地良い。
速いテンポのスタッカートで弾く”Courante II”の軽快さも鮮やか。

曲として一番好きなのは第5番だけれど、CDで聴いてみると、第3番の方が曲のつくり(声部の組み立て)が立体的に思えるせいか、アンデルシェフスキのピアニズムが際立って聴こえる。
"prelude”は速いテンポながら、タッチが精緻で音色の色彩感や響きのバリエーションが目まぐるしく移り変わる。
リズミカルなノンレガートであっても、カスケードのように流れる旋律が流麗。タッチの多彩な変化と細かな起伏がとても表情豊か。
哀感を帯びた”Allemande”も、情感過多になることなく、軽やかな音色で淡く透き通るような叙情がさらさらと流れていく。
抑制のきいた軽やかさとリズミカルなタッチの”Courante”は、強弱と音色を微妙に変えながら、柔らかさと力強さが交錯する。
”Sarabande”では、一転してタッチが力強く深くなり、陰翳が強く悲愴感漂う。
”Sarabande”の重苦しさから解放されたように、”Gavotte”ではスタッカートが軽やかで密やか。
終曲”Gigue”では力強いタッチと速いテンポながら、音色の色彩感の違いと(レガートような)滑らかなノンレガート。
勢い良い”Gigue”は曲としてはあまり面白いと思うことはなかったけれど、アンデルシェフスキで聴くと流麗なのに立体感があって、意外に面白く聴ける。
第5番の演奏も好きなのだけど、聴けば聴くほど第3番が好きになってしまったくらい。
でも、第5番を聴くと、やっぱりこの曲もとても好きなので、結局アンデルシェフスキの演奏を聴くと、どの曲も素晴らしく思えてしまう。
特に好きな第2番は今回は録音していないので、第4番・第6番と一緒に早く録音して欲しいなあ。


アンデルシェフスキに関する記事[水戸芸術館,「VIVO」2009年5月&6月号]
アンデルシェフスキが住んでいるのは、ポルトガルのリスボン。
欧州大陸の辺境(?)の国みたいなポルトガルは「コスモポリタン」なのだそうで、「本質的なコスモポリタン」のアンデルシェフスキとは肌が合うらしい。


tag : バッハ アンデルシェフスキ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
Secret
(非公開コメント受付中)

yoshimi様
おはようございます。ブログの更新をいつも楽しみにしています。禁止ワードの件了解しました。
私は古楽器の演奏が好きなので、ピアノ演奏はあまり聴かないのですが、アンデルシェフスキのイギリス組曲の試聴ファイルを聴いて、レガートで軽やかなタッチの演奏に興味を持ち、Youtubeでパルティータを聞きました。特に第1番は素晴らしい演奏だと思いました。こういう演奏でしたら、ピアノでバッハが楽しめます。
「チケットぴあ」で調べたところ、アンデルシェフスキが来年2月に来日するようですね。演奏会ではバッハを必ず演奏するようです。聴きに行けるといいのですが。
軽やかなレガートのバッハ
okimideiko様、おはようございます。

いつもブログをお読みくださって、ありがとうございます。
度々コメントを書いていただいて恐縮です。
okimideiko様のブログは、私の興味のあるテーマの情報が多いのでとても勉強になります。

私は逆に古楽器の方はあまり聴かないのですが、「パルティータ」ならピノックの新盤とスコット・ロス、「イギリス組曲」はルセ(特に第2番)が好きです。

アンデルシェフスキの「イギリス組曲」は、以前よりもレガートの強いフレージングになっているように思いました。
彼のパルティータ集もいいですね。おっしゃる通り、私も第1番が一番気に入っています。

アンデルシェフスキは親日家なので、よく来日してます。
彼のバッハなら期待を外すことはないでしょうし、プログラムにあるシューマンとヤナーチェクもよく弾いている作曲家です。
特に、ヤナーチェクのピアノ曲は、映画「存在の耐えられない軽さ」でも使われていて、とても叙情美しい曲です。
関西でのリサイタルがないので私は聴きに行けないのですが、ご都合がつけばぜひお聴きになってくださいね。
No title
恋愛物が苦手なわたしですが、「存在の耐えられない軽さ」は何度も観てしまった映画です。
この映画はわたしの中で、かなり大きな位置を占めているというのに
バックがヤナーチェクのピアノ曲というのははじめて知りました。
お恥ずかしい。
いつも下地がないのに感動して、あとから知識を得ています。(笑)
今回もありがとうごさいます。

イギリス組曲。これは購入して聴くしかないですね。(*^^*)
わたしもはやく聴きたいです。
映画と音楽、両方ともいいですね
Leaf様、こんにちは。

「存在の耐えられない軽さ」、いい映画でしたね~。
劇場公開のときに映画館で何回か見ました。
特によく覚えているのは、終盤の愛犬カレニンが亡くなるシーンで、ここは泣けてしまいます。

映画があまりに良かったので、クンデラ原作の文庫本とサントラ(当時はカセットテープだけしかなくて)も買いました。
サントラは、クラシックCD並みに、弦楽オケに室内楽、ピアノ曲とヤナーチェクの音楽がほとんどです。
”プラハの春”のシーンで流れていた「ヘイジュード」も入ってます。

アンデルシェフスキの「イギリス組曲」、絶対オススメです。
ぜひ聴いてくださいね!
期待以上です!
アマゾンのポイントがたまるのを待っていたので(笑)、購入が遅れて今日ようやく聴きました。

私も注目してなかった1番に驚きました!こんな美しい曲だったのか!?と。
私も中でも”Allemande”の極上の音色に目から鱗!でした。

5番はとても情熱的というか、パワフルで聴きごたえがあるし、3番は曲の表情の移り変わりが楽しく、ほんと多彩な音色が溢れだしていて、どちらも甲乙つけがたいです。結果全部良し(笑)!

彼のバッハはあまり宗教的な薫りがしてこないし、聴きやすいです。バッハっぽくない!という人もいそうに思いますが、アンデルシェフスキのバッハとして聴けば最高だと思います!
素晴らしいの一言です
Tea316さん、こんばんは。

やっぱり第1番は、アンデルシェフスキが弾くと、意外にも(?)美しい曲だったのだと気づきますよね!
”Allemande”の素晴らしく美しい音色には、ほんとに聴き惚れてしまいます。
第3番も、第5番ほどに好きではなかったのですが、第1番と同じく、印象がすっかり変わりました。
まさにアンデルシェフスキ、恐るべし!です。

アンデルシェフスキのバッハは好みがかなり分かれるかもしれませんね。
”精神性”云々という重たさを感じないせいか、曲との距離感が縮まって、とても身近な音楽に感じられます。
”バッハらしい”かどうかはともかく、現代ならこういうバッハもあって良いですよね。
私にとっては、こんなに素晴らしいイギリス組曲は、そうそう聴けない気がします。
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。