新垣隆&吉田隆一/野生の夢 ~水見稜に~ 

2015, 04. 03 (Fri) 18:00

新垣隆&吉田隆一のデュオアルバム『N/Y』に収録されている《野生の夢~水見稜に~》は、ミニマル風で都会の黄昏を連想させるような曲。
この曲は、SF愛好家の吉田がSF作家・水見稜の『マインド・イーター』に捧げたもので、曲名の「野生の夢」は同書に収録されている最初のストーリーのタイトル。
現代を超えて近未来の都市(「ブレードランナー」みたいな)の風景や空気を感じる。

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(2011/11/19)
水見 稜

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バリトンサックスの低く重たい音色と息の長い旋律を聴くと、都会の黄昏のような情景が浮かんでくる。
それと対照的に、柔らかく軽やかな音色のピアノが弾くミニマル的なパッセージは、コツコツと正確に時を刻むようにメカニカルでもあり、淀みなく流れる水のようでもあり、表情が移り変わっていく。
メロディやリズム自体はとてもシンプル。それが微妙に移り変わっていく姿はミニマル風なのだけど、旋律も和声も美しくて、サックスとピアノが溶け合うように絡み合っている気がする。
ジャズと現代音楽のクロスオーバーのようなちょっと不思議な世界。
最後には、きたるべき明日(未来)への漠然とした期待...みたいなものを感じる。


『野生の夢~水見稜に~』の収録風景が映っているメイキング映像。

Making of 『N/Y』Part3



N/YN/Y
(2015/02/11)
新垣隆 吉田隆一

試聴ファイル


このアルバムは、作風が異なる曲が収録されていて、バラエティ豊か。
オリジナル曲とインプロヴィゼーションに加えて、カバー曲としてムーディなガーシュウィンに、ポップな合唱曲と武満の合唱曲。
不協和音や調性感のない旋律がいろいろ出てきたりして、現代音楽的な尖ったところもあり、馴染みやすい旋律のスタンダードやオリジナル曲ばかりを集めたジャズアルバムとは、趣きが全然違う。
オリジナルとインピンプロヴィゼーションは曲想も旋律も色とりどりで面白く、ガーシュウィンはピアノがあまりスウィングしないので品が良い。合唱曲は原曲よりもずっと好き。

ジャジーで時々奇想天外な音と旋律を吹くサックスと、ほとんどスウィングせずにどこまでもクラシカルでクールな叙情感と品の良さが漂うピアノは、どこかアンバランスで、それが妙に合ってたりする。
私には、2つの楽器が(普通のジャズのように)溶け合うことなく、異質なものがつかず離れず、それぞれの世界がパラレルに進んでいくように聴こえる。
でも、現代音楽的な曲(「秋刀魚」や「野生の夢」とか、インプロ)になると、サックスとピアノがかなり溶け合っていて、特にピアノが(本領発揮して)生き生きしているように思える。
ポップな曲やジャジーな曲になると、とってもノリのよいサックスに比べると、ピアノは少し品良い感じ。(ベヒシュタインの音色が上品だし、ピアノの音量が少し小さいせいかも)


<オリジナル曲>
「野生の夢~水見稜に~」
「秋刀魚」 現代音楽風な調性感のあいまいな旋律とまったり妖艶な響き。
「皆勤の徒~酉島伝法に~」 どこかバカバカしくおちゃらけた感じのする旋律とリズム。

<インプロヴィゼーション>
「Vertigo」 とても短い曲で旋律が印象的。
「Spellbound」「Topaz」 現代音楽的な音がまとまりなく散らばっていくような静的な曲。といっても、調性感があり旋律と和声が美しく、どこかしら妖しげな美しさがあり、聴き難さはなし。
「Stage Fright」 「怪獣のバラード」の後に入っているので、続けて聴くと、まるで怪獣の雄叫び。
「The Birds」 メシアンの鳥シリーズをもじったのか(?)、サックスとピアノで表現している鳥たちの鳴き声や様子が面白い。特に変幻自在なサックスが絶妙。(ピアノはあまり鳥っぽくないけど)

<ジャズ>
「Embraceable You」 
「Sophisticated Lady」
 タイトルどおり優雅で洗練されたレディのようなピアノがとても素敵。

<合唱曲>
「怪獣のバラード」  何度聴いても、ポップで颯爽として楽しい曲。ジャズ風の中間部がとってもかっこいい。
ピアノパートの旋律やリズムが多彩に変化し、ポリフォニックな多層感があるし、盛り上がるところでシンフォニックな響きがしたりと、ピアノに集中して聴くだけでも楽しめる。
「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」  可愛らしい女の子を連想するような、軽やかでお洒落な曲。

タグ:新垣隆 吉田隆一

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2 Comments

ken  

これはとても気に入っているアルバムです。ピアノがクラシックの奏者なので響きが綺麗ですね。特に野生の夢を繰り返し聴いています。
(久しぶりです。いろいろ見ていたら、欲しくなるアルバムが沢山出ていますね!)

2015/10/10 (Sat) 06:24 | REPLY |   

yoshimi  

 

ken様、こんにちは。

最近はCDも厳選して買っていますが、ようやく秋になって涼しくなったので、購買意欲が増してきました。

このアルバム、私もとても気に入ってます。
現代的なクロスオーバーな音楽なので、どれを聴いても面白いです。
残念ながら、クラシックの世界では、ほとんど話題になっていないような気がしますが...。

ベヒシュタインのピアノの音が、硬質で澄んでいて綺麗ですね。
「野生の夢」はミニマル風ですが単調さは全然ないですし、クラシック風のピアノとジャジーなサックスが絡みあって、SFの近未来世界の雰囲気を感じます。
早く2枚目のアルバムも録音して欲しいですね。

2015/10/10 (Sat) 11:23 | EDIT | REPLY |   

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