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塩の製法とミネラル
<シニフィアン シニフィエ>の高加水パンのレシピでは、ミネラル分が多いと生地が引き締まるので、硬度1550mg/lレベルの「コントレックス」を冷水に混ぜ、マグネシウム・カルシウムの含有量が多い塩「シママース」が使われている。

たしかに、中硬水(硬度300mg/l前後)のエヴィアンを使って高加水パンを焼いてみると、生地がドロドロにならない。
塩の方は、ミネラル分が少ない湖塩を使っていたので、そろそろ塩もなくなりそうだし、ミネラルの多いも塩を買おうかと思い立って、塩について情報収集。
ネット上の情報をいろいろ読んでいると、これが結構面白い。
塩業界は、日本独自の製法であるイオン交換膜方式 vs それ以外の製法..という図式になっているらしい。
どの製法を支持するのかという立場の違いで、製法と製品に対する評価が180℃違う。


<塩の製造方法・製品に関する技術情報>

ミネラル含有量が少ないといわれるイオン膜交換法で製造した塩でも、その他の製法(日本の伝統的製法や海外の大規模な天日塩など)よりもミネラル分が多い製品もある。
※食用塩公正取引協議会で定めている工程用語を見ると、塩の工程と手法の特徴の簡単なポイントがわかる。

塩に関する情報はネット上で多数あるけれど、そのなかで技術情報が豊富なサイトは2つ。
「塩の情報室」
日本塩工業会技術部長で工学博士の尾方昇氏が情報提供者。
日本塩工業会は「イオン交換膜電気透析方式」の塩製造業者団体なので、製品・製法に対する優劣の評価は割り引いて考えるとしても、科学的な客観的事実と技術情報は詳細なので、参考になる情報も多く、読み物としても面白い。

「橋本壽夫のホームページ」
(財)ソルト・サイエンス研究財団専務理事だった橋本壽夫氏が新聞・雑誌などに投稿した記事が多数載っている。
この財団も、塩を専売していた日本たばこ産業が中心となって設立されたので、イオン交換膜製法を支持する立場。
面白かった記事は、東京の消費者生活センターの実験の紹介。(元々の実験データを探したけれど、ネット上では確認できなかった。)
ミネラル含有量が異なる塩を使って食味検査したところ、塩の違いがわからなかったり、ミネラルの少ない塩でも美味しいと思う人が少なくはないこと。
一方で、塩の違いを区別できる人もかなりいるのだから、個人の味覚の感受性や好みの問題がかなりあるのだと思う。
塩の違いによる味への影響は?!
市販塩のキャッチフレーズと成分組成との相関関係は?!-東京都消費生活総合センターの調査結果から-

コンパクトにまとまった塩・にがりの製法と品質に関する論文。
塩の作り方と製品の品質((有)サンエス研究所 代表取締役 工学博士 杉田静雄)[「そるえんす」2004年12月号No.63,公益財団法人ソルト・サイエンス]
塩の作り方とにがりの品質(日本塩工業会理事 緒方昇技術部長)[同上]




<塩の製品表示>

市販されている塩製品の表示は業界自主基準が定められている。

食用塩の表示ルールの改定ポイント解説[食用塩公正取引協議会]
以前から業界内で製法を巡って対立していたらしく、イオン交換膜法で作った塩は極度に精製しているので、ミネラルが少なく品質が悪いとか、身体に良くないとか批判をしていた業者も結構多かった模様。
イオン交換膜法で作っていない塩は、ミネラルたっぷり、自然塩、天然塩...など健康に良い、自然でオーガニックみたいなイメージをアピールした製品が多く、製法の表記もばらばらだったらしい。
平成16年に、公正取引委員会が食塩の表示に関し9社に警告し、その後、業界で製品表示に関する自主ルールを制定。

公正競争規約
1)店頭販売される塩には原材料名と製造方法が表示されます。
2)「自然塩」、「天然塩」という言葉は使えません。
3)ミネラルたっぷり、健康・美容に良いなどの表示は使えません。
4)地名の付いた商品名の場合、その地名以外の場所の原材料を使用したり、違う場所で製造している場合は、「他の場所で原材料が作られている」または「違うところで作られている」旨を商品名と同一視野内に記載しなければなりません。国内の原料(海水)を使用し国内で製造されている製品は「国産塩」と表示できます。
海外の原料(輸入塩)を使用し、国内で製造(原料を一旦溶かして再結晶させた)した商品は、「国内製造」と表示することにしました。
5)6)(省略)
7)この規約を満たした適正表示の会員の商品には「しお公正マーク」が付けられ、消費者をごまかすものではないことを示しています。しかし、食品としての安全性や虚偽表示がないことを保証するものではありません。

東京都でも、「食塩の表示に関する業界自主基準策定に向けた指針」を公表。
- 「自然」「天然」の表示は使用しないこと
- ミネラルによる品質等の優良性を表示しないこと(「ミネラルたっぷり」「ミネラルいっぱい」「ミネラル豊富」「ミネラル
バランスが良い」など)
- 「最高」「究極」などの最上級を示す表示は客観的根拠がなければ使用しないこと
- 無意味な無添加表示はしないこと
- 一括表記枠外に原材料、製法を表記すること
「各業界における表示に関する自主基準の現状と問題点に関する調査報告書」(77~79頁)[東京都生活局]



<塩製品と成分>

塩 各社成分比較表(能登製塩)
日本のメーカー製品は少ないが、輸入塩のデータは多い。

市販食塩の品質(日本調理科学合誌 Vol.32 No.2,1999)
国内で市販されている家庭用の塩67種類の成分比較。

自然塩の研究
市販されている天然塩のリスト。メジャーな製品以外の塩もある。
製品パッケージの画像入りが親切。ミネラル含有量が%表示なので、mg表示に比べて、直感的にわかりにくい。

お塩の選び方[kanaの栄養ノート]
製品数は少ないが、市販の塩のミネラル成分と価格の比較表(単価あり)がわかりやすい。


【カリウム含有量が多い塩】
味の素が販売している「瀬戸のほんじお」(製造:ナイカイ塩業)と、セブンアイプレミアム「にがり塩」は、イオン交換膜で製造した塩なのに、カリウムが異常に多い。
「瀬戸のほんじお」が800mg/100g、「にがり塩」が1000mg/100g。
それ以上にカリウムが多いのは、減塩タイプの塩。味の素「やさしお」、トップバリュ「塩分50%カット 減塩しお」は、100g当たりナトリウム18gくらいと通常のほぼ半分、カリウムは約27~28g(27000~28000mg)。
カリウムが多いのは、減塩目的で添加されているため。

59 食塩の代替として塩化カリウムの利用(広島県ホームページ)
- 食塩と健康との関係は食塩そのものではなくナトリウム(Na)の過剰摂取が問題
- 食塩の一部を塩化カリウムに置き換え,Naの摂取量を少なくする食品がある
- 腎臓が悪くて血圧があがっている人には,カリウムの摂取が制限されている

「塩の情報室」/ユーザーのための塩学入門より)
- カリウムをにがりとして添加した場合は0.3%程度が限界。これ以上のカリウムは固形塩の形で塩化カリウムとして添加することが多い。
- 瀬戸のほんじお、低納塩の場合は、製塩でにがりから副成する塩類を含有させている。

低ナトリウム塩で減塩生活[塩なび.com]
7種類の低ナトリウム塩の試食調査結果が掲載されている。
被験者が6人と少なすぎるのはともかく、塩っ辛いのが好きな人なら、辛味の強いところが美味しく感じるかも。
普通の塩との違いがわからない人もいたので、やっぱり人間の舌はあまり当てにならない。



<パンづくりに使う塩>

パン作りの材料と選び方[allabout]
- パン作りに人気の塩は、「ゲランドの塩(あら塩)」と「シママース」。粉の2%までが使用量の目安。

塩による酵素の影響について(塩のミネラルと硬度と酵素)[アルーチパン教室]
塩の話だけでなく、「製パンの教科書」のカテゴリーに、パン作りに関する知識や理論がたくさん載っている。
知識を増やすだけでなく、実際にパンを作るときに役立つことも多そうだし、読み物としても面白い。

パン製造における優位性[パラダイスプラン]
- パン作りにおけるミネラルの主な働きとして「生地を引き締める」作用をするのは、主にマグネシウム。
- 「雪塩」は結晶中に多くのマグネシウムを含む。 グルテンを引き締め、たんぱく質の分解酵素に作用し、伸展性に富んだ生地になるため、弾力のある焼きあがり。


志賀勝栄『パンの世界 基本から最前線まで』 <第5章 水と塩の役割> 塩は発酵を遅らせる
- 塩はグルテンの網目構造を強化する。塩を入れることで炭酸ガスやアルコールを逃さない強いグルテンになる。
- さらに塩はパンに味をつける。どのパンでも2%程度しか入れない。塩そのものの味にこだわったとしても、パンにいれてしまうと、その影響は微小では。味の面よりミネラルのバランスのほうが重要な気がする。
- 使っているのはベトナムのカンホアの塩。天日製法で作られた塩で、ミネラルが豊富。粒子が粗く、なかなか溶けないという意味では、フランスのブルターニュの塩によく似ている。
- すべてのパンにミネラルが求められているわけではない。ミネラルが入りすぎてもおいしくない。
- 宮古島の雪塩は、18種類のミネラルを含み、含有ミネラルの種類の多さでギネスの認定を受けたという塩。ミネラル分が豊富ですごく体にいい塩。それでパゲットを作ると、ニガリを食べているような味。塩としておいしいかどうかと、パンにしたときにおいしかどうかは、全く別の問題。
- 硬水が発酵を促進するのと同じ理由で、ミネラル入りの塩は発酵を助ける。しかし、その一方で、塩には殺菌作用があるし、水を引き寄せる声質があるので、酵母から水を奪ってしまう。トータルで考えると、発酵を抑制する面の方が強いように思う。
- 中種法では2回目のミキシングまで塩を入れない。最初から塩を入れるストレート法に比べて、発酵がかなり早くなる。
- 塩を入れたパン生地は発酵が進みにくいため、糖分の消費が少ない。生地には糖分が多く残ることになる。皮に焦げ目をつけるのは糖分。きれいな焦げ目をつけるためにも塩は有効。

tag : ホームベーカリー 志賀勝栄

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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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