ブゾーニのバッハ・ピアノ編曲 

2015, 11. 08 (Sun) 19:00

来年に生誕150年のメモリアルイヤーを迎えるブゾーニは、オリジナル作品もいろいろ書いているけれど、やはり有名なのはバッハのピアノ編曲作品。

シャコンヌ
ブゾーニ(に限らず)のバッハのピアノ編曲もののなかでも、最も有名で録音も多いのは《シャコンヌ》。

初めてこの曲を聴いたのは、ミケランジェリのEMI盤スタジオ録音。
ミケランジェリの《シャコンヌ》録音は、この他に1955年のワルシャワライブなどのライブ録音がいくつか出ている。
EMI盤は録音が1948年とかなり古く、CDの録音音質は全然良くないけれど、余計なものを全てそぎ落としたように、研ぎ澄まされた集中力・凝集力が漲り、全編にストイシズムが漂い、エンディングも荘重・厳粛。
録音音質の悪さが逆に、モノクロ写真のような”迫力”や”迫真性”に似たものを感じさせる。

BACH/BUSONI - CIACCONA - Piano: Arturo Benedetti MICHELANGELI



キーシンの《シャコンヌ》のスタジオ録音(1997年、ソニー盤)を初めて聴いた時、冒頭から視界が急に開けたように新鮮だった。
冒頭や緩徐部分は、テンポが遅くタッチや表現がやや粘着的な感じはするけれど、内省的な静謐さが漂っている。
緩急・静動の対比が鮮やかで、急速部では速いテンポで一気に弾きこみ、音の粒が揃った切れの良い精密なメカニックが際立つ。
芯のしっかりした充実した深みと重みのある和声の響きも美しく、骨格の堅牢さと情感の豊かさが融合し、エンディングは荘重・華麗な響きに包まれて、高揚感と開放感が感動的。

Bach-Busoni: Chaconne in D Minor (Kissin)



トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
バッハのオルガン曲で最も有名な(と思う)《トッカータとフーガ ニ短調 BWV565》。
冒頭のドラマティックでかなりオドロオドロしい旋律は、まるで悲劇の幕開けを告げるような趣き。
あまり好きな曲ではなかったけれど、たまたまYoutubeで見ていたガヴリリュクのブゾーニ編曲版を聴いて、印象がすっかり変わった。
オルガンと違ってピアノの音だとオドロオドロしさが薄くなって、さらに生気と迫力のあるガヴリリュクの演奏が素晴らしく、全然イメージが違う曲に聴こえる。
冒頭のトッカータの力強いピアノの響きがドラマティック。その後に続くフーガが美しい。
力強く深い響きのフォルテは大聖堂のように聳え立つように荘重堅牢で重厚。
ガヴリリュクらしいピアニッシモの響きの瑞々しい美しさが静寂で厳粛な雰囲気によく映えている。


ALEXANDER GAVRYLYUK BACH-BUSONI TOCCATA / FUGUE D MINOR



前奏曲とフーガニ長調BWV 532
この曲を初めて聴いたのが、レーゼルが旧東ドイツ時代に録音した作品を集めたBOXセットのバッハ=ブゾーニ編曲集。
レーゼルの明るくクリアな音質と、力強くも軽やかで躍動感のある切れの良いタッチがとてもよく映えて、いつ聴いても惚れ惚れするような鮮やかさ。
清々しく心弾むような気分になるので、クリスマスが近づくといつも聴きたくなってくる。

Bach / Busoni - Prelude & Fugue in D major BWV 532 - Rösel



ブゾーニが編曲したバッハの《コラール前奏曲集》にも好きな曲が多い。
コラール前奏曲「Wachet auf, ruft uns die Stimme/目覚めよ、と呼ぶ声あり BWV 645」

この曲もクリスマスに近づくと聴きたくなる。
現代曲を主なレパーリーにする(オルガニストではない方の)ポール・ジェイコブスは、ブゾーニのバッハ編曲《10のコラール前奏曲 KiV B27》も録音している。
軽やかなタッチとさらりとした叙情感がクリスマスの朝の清々しさに良く似合う。

Bach / Busoni / Paul Jacobs, 1979: Wachet auf, ruft uns die Stimme



コラール前奏曲「Nun freut euch, liebe Christen gmein/今ぞ喜べ、愛するキリストのともがらよ BWV 734」

随分速いテンポで、ちょっとコミカルな感じの曲。
ソコロフらしく声部のそれぞれが色彩感も表情も豊かで、立体的にクリアに聴こえてくる。
特にスタッカート気味の細かいパッセージの音が軽やかで、粒も綺麗に揃っているところが気持ちよい。

Sokolov plays Bach Nun freut euch



コラール前奏曲「Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ/主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる, BWV 639 」

珍しいブレンデルのバッハ録音。軽やかで線の細い響きが儚げで美しい。

BRENDEL, J.S.Bach "Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ", BWV 639


ブレンデルはもともとバッハ録音が少ない。
”バッハをピアノで弾くべきか”という昔からある命題について、ブレンデルもアラウと同じく、やはり長年バッハはピアノ演奏には向かないと考えていたという。
しかし、「古楽器でのバッハの演奏をたくさん聴きましてから、私はこれだけがバッハの音楽をよみがえらせる唯一の方法じゃない」という結論に達して、ピアノによるバッハ演奏・録音を始めた。
「スカルラッティはハープシコードの音に結びついているのに対して、バッハについては、音色は二次的なものだと考えてきたというわけです」。(デュバル著『ピアニストとのひととき(上)』より)

<過去記事>
ミケランジェリ ~ バッハ=ブゾーニ編/シャコンヌ
キーシン ~ バッハ=ブゾーニ編/シャコンヌ
ガヴリリュク ~ バッハ=ブゾーニ/トッカータとフーガ ニ短調
レーゼル ~ バッハ=ブゾーニ編曲/前奏曲とフーガ BWV532
ポール・ジェイコブス 『Busoni ;the Legendary Recording』 (2) バッハ=ブゾーニ編曲/10のコラール前奏曲

2 Comments

passo  

プゾーニのバッハ

ここにあげられたものは、全て大好きすぎるものです。
ミケランジェリやキーシンは聴いていますが、
(わたしの中ではこれが、ピアノのシャコンヌベスト2だと思っています)
ブレンデルのバッハははじめてですね。
でも、バッハに向いていないピアニストとは思えませんから、ピアノでの
演奏に疑問をいだいていたのでしょう。
バッハをピアノで弾くべきか悩むところはわかりますが、
現代で生きるわたしにとっては、ピアノの方が心に響いてきます。
これからのシーズン、またバッハ漬けになりそうです。

追伸…ブログ、引っ越しばかりですいません

2015/11/09 (Mon) 21:10 | EDIT | REPLY |   

yoshimi  

原曲よりも編曲版の方が好きです

passoさん、こんばんは。

ミケランジェリもキーシンも、ライブ録音などを含めると複数の録音がありますが、個人的にはブログに載せたスタジオ録音が一番好きなものです。
確かに私のシャコンヌ・ベスト2もこの2人です。

ブゾーニとケンプの編曲版がある曲もありますが、ケンプ編曲版の方は、ケンプ自身の演奏で聴くのが一番です。

ブレンデルのバッハはCDが1枚しか出ていませんので、珍しいですね。線が細くて端正な感じがします。
古楽ブームも一段落して、今ではピアノでバッハを弾くのも当たり前になりましたし、楽器の種類に関わらず、心に響くような演奏を聴きたいですね。

ブログの移行は一度したことがありますが、結構面倒でした。
記事の方は、無事移行できたようで良かったです。
いろんなコメントがありますから、いちいち深刻に考えない方が精神的には良いですね。

2015/11/09 (Mon) 21:23 | EDIT | REPLY |   

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