ブラームス/後期ピアノ曲集~インテルメッツォとロマンス、ハンガリー舞曲集(ピアノ独奏版)

秋だというのに全然寒くならないので、ブラームスを聴きそびれていたら、突然真冬なみの寒さになってしまった。
と思ったら、また暖かくなって、今年は秋という季節がほとんどなかったような...。

(あったかなかったかわからない)秋に聴いたブラームスは、例年のごとく、後期ピアノ小品集。
そのなかでも、最も有名な”Intermezzo”は子守歌のようなOp.118第2番。
Op.117第1番も子守歌風の優しい雰囲気で始まる。

それと対照的な”Intermezzo”は、暗い翳りと哀感に満ちたOp.117第2番。
それに、陰鬱だけれど感情の高ぶりがドラマティックなOp.119の第1番。

細かなルバートとほの暗い音色のカッチェンは、明暗のコントラストが強く、内面を吐露するような語り口と陰翳のある彫りの深い表情で、憂愁と夢想が交錯する。
それでも、速めのテンポとルバートを多用しつつも滑らかな歌い回しで、旋律は滑らかに流れていくので、足を引き摺るように鬱々した重苦しさはない。


Julius Katchen - Brahms, Intermezzo op.117 n.2 - Intermezzo op.118 n.2
(Op.118No.2は4:41~)



Op.119の第2番の中間部は、長調から短調に転調してから、煌くように流れる旋律の淡い哀感が美しい。
この曲に限らず、ブラームスの曲は、冒頭の主題提示部だけでなく、長調から短調またはその逆に転調した中間部でも、ハッっと心ときめくような短いフレーズがあちこちに散りばめられている。
カッチェンは、速いテンポでルバートを多用するので、さらりとした口の中に濃密な情感が篭り、感情の高ぶるようなドラマティックな展開。

Brahms - 4 Klavierstücke, Op. 119



カッチェンに比べると、音色の明るく起伏の緩やかなレーゼルは陰翳が薄くて、まるで夢想しているようなメルヘンの世界。
それがとても映えているのは、Op.117第1番とOp.118第2番の”インテルメッツォ”。それに、Op.118第5番”ロマンス”。


Johannes Brahms 3 Intermezzi, Op 117 SD

※演奏時間と内容から判断して、レーゼルの音源だと思う。


Peter Rosel plays Brahms 6 Klavierstücke Op.118



おまけは、《ハンガリー舞曲集》のブラームス自身編曲によるピアノソロ版。
低音・中音・高音部それぞれの色彩感が違っていて、低音部のくぐもった響きに載せて、中音部が歌う主旋律とその間を煌くように流れる高音部の旋律のハーモニーが絶妙。
今まで聴いたピアノソロ版でまともに聴けたのは、カッチェンとキーシンの演奏。
キーシンは技巧的に精密で華やか。カッチェンはほの暗いムードが漂っている。

JULIUS KATCHEN on piano '' BRAHMS HUNGARIAN DANCES no 1''.wmv


Brahms Hungarian Dance No.1 - Evgeny Kissin


JULIUS KATCHEN on piano''BRAHMS HUNGARIAN DANCES no 5.wmv


Hungarian Dances Nos. 4 & 5

タグ:ブラームス カッチェン レーゼル キーシン

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コメント

ブラームスの季節が過ぎてしまいました

ハンガリー舞曲集ブラームス編曲によるピアノソロ版。
キーシンの演奏をはじめて聴きました。
カッチェンの重く暗いところからくる力強さが好きですが、
キーシンの演奏は本当に華やか。美しいですね。とっても素敵です。

そういえば、今年はわたしも『ひとりブラームス祭り』を決行せずに
冬に突入してしまいました。昨年は確か、ブラ4祭りをしていたような。
秋を通りこしてあっという間に、バッハやベートヴェンの似合う季節になってしまいましたね。

こんばんは。
確かに今年は、寒いような暖かいようなで、秋の佇まいは香らなかったような気がします。近所の護国寺には銀杏並木がありますが、ぎんなんの匂いもあまりせず。
先日購入したカッチェンのボックスにはハンガリー舞曲入っているようです。ふふふ、楽しみ!

もうバッハとベートーヴェンの季節ですね

passoさん、こんばんは。

キーシンのハンガリー舞曲、さすが冴えていますよね!
この2人の演奏を聴いてしまうと、他のピアニストの演奏がイマイチに思えてくるので、困ります。

例年、クリスマスに近づくとバッハを聴くことが多いですね。
ピアノ編曲で素敵なものがいろいろあるので、近々バッハがらみの記事をアップロードする予定です。
ベートーヴェンの方は、年末年始に聴きたくなってきます。

 

芳野様、こんばんは。

大阪市の御堂筋もイチョウ並木が連なってますが、よく銀杏拾っている人がいます。
今年の秋には行っていないので、銀杏の落ち具合はどうだったんでしょうね~。

ハンガリー舞曲は、前半の曲だけソロバージョンになってます。
カッチェンらしく速いテンポで勢いある演奏です。低・中・高音別に色彩感が違い、線の太い低音もよく効いてます。
ピアノソロで聴く面白さを知ったがために、オケ版を聴くことがなくなってしまいました。

カッチェンに魅せられて

yoshimiさま
こんにちは。毎回楽しく拝読させていただいております。
最近レコードから遠ざかっていたので、久し振りにカッチェン コーナーから2枚のLPを取り出し聴きました。
ブラームスP三重奏曲1番と、グリーグP協奏曲です。この2曲を聴くと カッチェンのソリストとしての、室内楽奏者としての才能が良く現れていることが解ります。

ブラームスは大好きな作曲家のひとりですが、yoshimiさんと同意見で この季節に聴くブラームスは最高です。ブラームスP三重奏曲1番ではカッチェンは出過ぎることなく、チェロとヴァイオリンをサポートしながら、バランスの良い演奏になっていると思います。

そしてこれからの時期はやはりベートーヴェン。なるほど!同感です!それに加えさせていただくと、グリーグP協奏曲も華やかでXmas時期にはピッタリだと思います。カッチェンのグリーグP協奏曲は何と素晴らしい演奏でしょう!胸がすうっとしました。リストの演奏に求められる同等のテクニックを駆使して速いテンポで進行していくパッセージ、低音から高音に向かって あっという間に立ち上がっていくあざやかなグリッサンド。カッチェンの魅力が十分に味わえる名演です。今風に云うと" 超カッコイイ!"です。

ちなみにP三重奏曲に対して ある評論家は、
"カッチェンがその晩年期に取り組んでいた室内楽作品の代表盤。清冽なスークと剛直なシュタルケルとの仲をバランスよく取りもって、ブラームス特有のロマン的な情感を もたれることなく歌い上げている。"
と評しています。

また、以前来日したイスラエル生まれのチェリスト オーフラ・ハーノイは、新聞の取材に対して、
"シュタルケル・スーク・カッチェンのトリオによる演奏は、私の最も好きなもので、私のお手本です。"
と述べています。

クリスマスはカッチェンのピアノで

youai様、こんにちは。

いろいろ教えてくださってありがとうございます。
ブラームスのピアノトリオは、冒頭から優しく誘うように入ってくるカッチェンのピアノがとても素敵です。
室内楽では、ピアニストとしての我を強く主張することなく、溶け込むようにパートナーたちに合わせることができるという、カッチェンの意外な(?)面がわかりますね。
それに、「清冽なスークと剛直なシュタルケルとの仲をバランスよく取りもって」というのは、なるほどと思いました。

グリーグのピアノ協奏曲はそれほど聴かないのですが、カッチェンは雄大でダイナミックな演奏で、この曲の演奏のなかでは一番好きです。
リヒテルの録音が有名ですが、個人的にはカッチェンは「隠れ名盤」ではなかろうかと思ってます。

カッチェンの録音を最初に聴いたのがベートーヴェンでした。
ピアノ協奏曲第4番とピアノ・ソナタ第32番では、テンポが前ののめりになるのはご愛嬌として、協奏曲全集とソナタは私の愛聴盤です。
それに、合唱幻想曲もいいですね。この時期に聴くと高揚感があって、私は第9よりも好きなのです。
今年のクリスマスは、カッチェンの弾く「主よ人の望みの喜びよ」から始まって、久しぶりにベートーヴェンをいろいろ聴きたいと思っています。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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