ツィンマーマンとストラディヴァリウス“Lady Inchiquin“

ヴァイオリニストのフランク・ペーター・ツィンマーマンの新譜が出ていないか情報を探していたら、最近愛器のストラディヴァリウスを巡るトラブルに悩まされているという。
ツィンマーマンが2001年から弾いているストラディヴァリウス“Lady Inchiquin(レディ・インチクイン)“ は、ドイツの州立銀行「ウェストLB」から貸与されている。
その銀行が、リーマンショック後に経営破綻したため、その事業を受け継いだファンド(Portigon Financial Services AG)と、“Lady Inchiquin”を巡って、買取やら賃貸やらいろいろ交渉していたけれど、金額的に折り合いが付かず。
結局、愛器“Lady Inchiquin“をファンドに返したという。
当分の間は、支援者の好意で貸与された”Guarneri del Gesú(グァルネリ・デル・ジェス)”で演奏を続けるらしい。

<Violinear.comの記事>
【ツィンマーマン】ストラディヴァリ貸与終了 買取提案は拒否
【ツィンマーマン】 愛用のストラディヴァリ、競売は回避か?
【ツィンマーマン】 1711年製ストラディヴァリとお別れ?
楽器が変わったことを感じさせず ツィンマーマンNY公演(2015年3月3日)
この演奏会では、グァルネリ・デル・ジェスを使っている。

Heartbroken Frank Peter Zimmermann Surrenders ‘Lady Inchiquin’ Strad to Financial Controllers
ツィンマーマンは、親しい友人にNY公演の前に、‘heartbroken’だと語ったという。


ヴァイオリンの買取交渉について、金額など経緯が載っている記事がいくつか。
記事によって金額が多少違うけれど、元々の貸与契約に記載されている買取価格は、”preferred-buyer option”として、680万ユーロ。
1711年製ストラディヴァリウス“レディ・インチクイン” の現在の相場価格は、450万~500万ユーロ(1ユーロ=135円換算で、約6億750万円~6億7500万円)。
今回ツィンマーマン側が提示した金額は、相場相当の490万ユーロ。
ファンド側が提示した買取価格は、それよりも200万ユーロ近く高く、ツィンマーマンは相場価格よりもかなり高額な買取価格を拒否。
ファンド側も金額を引き下げる気は全くなく、代わりに賃貸契約を提案。
しかし、ツィンマーマンにとっては、受け入れられない高額の賃貸料(クラシックのヴァイオリニストにしては法外な賃貸料と言っている)だったため、“レディ・インチクイン”を返却することになった。

【ツィンマーマン】 6億円で愛器ストラドの買取を打診か?
Performer at New York Philharmonic to Play Without Prized Stradivarius
Prized Stradivarius Prompts Tug of War/German Violinist Frank Peter Zimmermann plays instrument made in 1711

クラシックのヴァイオリニストでは、ストラディヴァリなどの名器をコレクターや公共団体・財団などから貸与されていることがよくあるし、随分昔に辻久子が自宅を売却してストラディヴァリを購入したというので、ちょっと話題になっていた。
調べてみると、高嶋ちさ子がルーシーを2億円で購入、千住真理子がデュランティを2~3億(価格は非公開なので推定)で購入したとされている。
さすがに、ツィンマーマンのように6億円以上でヴァイオリンを購入しようとするヴァイオリニストは、そう多くはないような気がする。(以前の円高時の為替レートで円換算したら、数割は安くなるけど)
その後のヴァイオリンを巡る動向については、2月~3月以降の記事(英文・独文でも)がほとんどないので、わからない。


Youtubeにある最新の演奏会ライブ映像は、”Wiener Philharmoniker Riccardo Muti Salzburger Festspielen 2015”でのブラームス/ヴァイオリン協奏曲の演奏。たぶん今年8月頃の演奏会。
この演奏会で弾いているのは、グァルネリなのだろうか?

Johannes Brahms Violinkonzert D-Dur op. 77
Frank Peter Zimmermann - violine、Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks、Mariss Jansons - dirigiert



“Lady Inchiquin”は2001年から貸与されていたので、それ以降の演奏は全て“Lady Inchiquin”を使っている。

2008年の演奏会でのアンコール。
Solo an der Geige: Zimmermann spielt Bach


2009年に録音したバッハのヴァイオリンソナタ全集。
Frank Peter Zimmermann: Bach Sonatas




【追記 2016.2.2】
ツィンマーマンが2016年3月にリリースする新譜『モーツァルト協奏曲集』では、Lady Inchiquinを弾いているらしい。
録音が2015年6月28日なので、↑の一連の記事が出た後に、所有者側のファンドと和解して、Lady Inchiquinを買い取ったか、リースしたのだろうか?


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コメント

yoshimiさん、こんにちは

今、ストラディヴァリって、そんなにするのですか! ううん、クラシックの演奏家って、年間1億円も稼げる人ってほんの僅かだと思いますが。加えて、お金が入れば入るほど、生活もハデになるでしょうし。

いずれにしろ、ハゲタカファンド、ふっかけ過ぎな感じがしますね。

 

matsumo様、こんばんは。

ストラディバリウス(ヴァイオリン)の最高落札額は、日本音楽財団が売却した「レディー・ブラント」で、従来の最高額の4倍にあたる約1600万ドル(約12億7000万円)だったそうです。

これは例外的に高いようなので、400万ドルくらいが上限なのかもしれません。
ということは、ツィンマーマンの提示額はそんなに低いということはないですね。
ファンドが提示した金額は、契約書上の”preferred-buyer option”(優先購入特約)としての価格なので、それが相場よりも高いというのは不合理ですね。
ツィンマーマンが、ファンド側の提示価格での買取を拒否したのも理解できます。

「レディ・インチクイン」は、競売されるという話もあるようです。
裕福な篤志家か財団なりがそれを落札して、ツィンマーマンに貸与してくれたら良いのですが。

こんばんは。
彼のヴァイオリンを聴いたのは20年以上前ですが、それはストラディバリウスだったのかな? チャイコフスキーの協奏曲でした。とても、よかった。
ただ、彼くらいの名人になれば、楽器の種類は超越しているのかな、とも思います。ガルネリも銘器ですから~。
本人がどう思っているのかはわかりませんが。。

 

芳野様、こんばんは。

20年前なら、1700年製のストラディヴァリウス「エクス・ドラゴネッティ」(今は日本音楽財団が所有)を弾いているはずです。

以前のインタビューで、今まで使ったヴァイオリンは使いこなすのにそれほど時間はかからなかったが、“レディ・インチクイン”には数年かかったとか、自分の体の一部みたいだとか、ツィンマーマン自身言っていました。
銘器を使っている限り、演奏の質が落ちることはないでしょうが、やはりこのストラドに対する愛着は強いでしょうね。
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yoshimi

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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